5さそり座
蠍座
- 学 名
- Scorpius(略号 Sco)
- 英語名
- The Scorpion
- 設 置
- 古代ギリシア
- 面 積
- 497平方度
天体観測の見どころ
1星雲星団の観察
M4球状星団(=NGC6121)
- 位置(分点2000.0)赤経16h23.6m,赤緯-26°32’ 視直径26.3’,等級5.8,集中度(高1-低12)9
アンタレスの近くにある大型の球状星団です。探しやすい位置にあります。双眼鏡でも観察できます。球状星団としては星の密度はまばらで、小口径の望遠鏡でも中心付近まで恒星に分離します。写真にも写しやすい星団です。この球状星団の距離は7200光年で、球状星団としては地球に最も近い天体であると考えられています。
M6散開星団(=NGC6405)
- 位置(分点2000.0)赤経17h40.1m,赤緯-32°13’ 視直径33’,等級4.2,星数80
M7散開星団(=NGC6475)
- 位置(分点2000.0)赤経17h53.9m,赤緯-34°49’ 視直径80’,等級3.3,星数80
M7(左下)とM6(右上)。さそり座の尾の先にある、大型の散開星団です。肉眼でもボーとした存在を見つけることができます。観察には望遠鏡よりも双眼鏡が適しています。星団の周囲も夏の天の川の中にあって、微光星にあふれています。夏の天の川の中は、M6、M7の他にも多数の美しい星雲星団がいっぱいです。M7は、メシエ天体の中で最も南に位置しています。
M80球状星団(=NGC6093)
- 位置(分点2000.0)赤経16h17.0m,赤緯-22°59’ 視直径8.9’,等級7.3,集中度(高1-低12)2
さそり座の頭部にある、小型ですが密集度も輝度も高い球状星団です。密集度は球状星団の中でも最も高い部類で、倍率を上げても中心部の恒星は分離できません。こじんまりとしており、双眼鏡では恒星状に見えています。
NGC6124散開星団
- 位置(分点2000.0)赤経16h25.6m,赤緯-40°40’ 視直径29’,等級5.8,星数100
大型で粒ぞろいの恒星の大集団です。南に低いためでしょうかメシエ天体には含まれていないものの、たいへんみごとで見栄えがあります。小口径望遠鏡の低倍率向きの観察対象です。双眼鏡ではボーッとした星雲状に見えます。
2重星の観察
アンタレス(α星)
- 位置(分点2000.0)赤経16h29.4m,赤緯-26°26’
- 主星1.0等,伴星5.4等,位置角277°,離角2.7” (2019年),スペクトルM1
アンタレスに伴星が発見されたのは、1819年のアンタレスの星食の観測においてでした。月の暗縁からアンタレス本体が出現する直前に、伴星が飛び出したのです。伴星は5.4等でまずまずの明るさがあるのですが、なんといっても主星が1等星で100倍近くも明るいために、極端な光度差のためこれを実視することは簡単ではありません。口径20cmクラスの望遠鏡と、安定した気流が必要です。朱色のまばゆい主星の回折リングの中に、ポチッと消え入りそうな緑色の伴星があります。アンタレスの主星と伴星は公転周期1,218年の連星系で、現在は最も離角の広い時期で、今後は少しずつ間隔を狭めていきます。
ξ星
- 位置(分点2000.0)赤経16h04.4m,赤緯-11°22’
- 主星4.9等,伴星7.3等,位置角45°,離角7.2” (2019年),スペクトルG1V
Σ1999星(=HIP 78738)
- 位置(分点2000.0)赤経16h04.4m,赤緯-11°27’
- 主星7.5等,伴星8.1等,位置角98°,離角11.9” (2019年),スペクトルG8+K3
ξ星とΣ1999星は、さそり座にあるダブルダブルスター。ダブルダブルスターといえばこと座εがよく知られていますが、こちらの方が離角が広く、小口径で観察しやすくお勧めです。さそり座ξ星はさそり座の北端で、てんびん座へびつかい座との境界の近くにあります。ξ星は主星が黄色、伴星が青色で光度差があるペア。ξ星を導入するとすぐ南にΣ1999星がすぐに分かります。
ξ星は公転周期1,514年の連星系で、現在は離角の広い時期です。ξ星の主星は、さらに5.2等と4.9等星が1.1秒の離角でくっついた連星系ですが、これは小望遠鏡で観察することは困難です。
β星
- 位置(分点2000.0)赤経16h05.4m,赤緯-19°48’
- 主星2.6等,伴星4.5等,位置角20°,離角13.4” (2019年),スペクトルB2V
さそり座の頭部にある明るい二重星。白色と薄青のペアです。小口径の望遠鏡でも低倍率から気軽に観察しやすい対象です。分光観測によると、主星はさらに2.9等星、4.1等星、10.6等星の3重連星系となっています。
ν星
- 位置(分点2000.0)赤経16h12.0m,赤緯-19°28’
- 主星A 4.4等,伴星B 5.3等,位置角1°,離角1.4” (2021年),スペクトル B2IV
- 主星A 4.4等,伴星C 6.6等,位置角336°,離角41.3” (2019年)
- 伴星C 6.6等,伴星D 7.2等,位置角55°,離角2.4” (2019年)
中望遠鏡以上の対象となりますが、このさそり座ν星もWWスターです。ただし、有名なWWスターのこと座ε星よりも分離の難しい対象です。伴星CとDのペアは比較的分離しやすいのですが、主星Aと伴星Bは離角が小さく、気流の良い時にチャレンジしてみたいものです。
BrsO 12星(=HIP 79980)
- 位置(分点2000.0)赤経16h19.5m,赤緯-30°54’
- 主星5.6等,伴星6.9等,位置角318°,離角23.6” (2018年),スペクトルF6III F9V
アンタレスの約5°南にある観察しやすいみごとな重星です。広く間隔があき1等級の光度差があります。主星伴星とも明るい黄色です。周囲には8等から12等の微光星にあふれています。
σ星
- 位置(分点2000.0)赤経16h21.2m,赤緯-25°36’
- 主星2.9等,伴星8.4等,位置角269°,離角20.5” (2019年),スペクトルB0III+B8V
5.5等の光度差のある重星です。離角は十分ですが、光度差があるために意外と観察しにくい対象です。まるで、主星についた惑星のようです。注意深く観察しましょう。主星は琥珀のように黄色みがかっています。さらに主星は、分光による3.3等、4.1等、5.2等の3重連星系です。
HN39(=HIP 80399)
- 位置(分点2000.0)赤経16h24.7m,赤緯-29°42’
- 主星5.9等,伴星6.6等,位置角359°,離角4.0” (2018年),スペクトルG0IV G0V
アンタレスの約4°南にあります。かわいらしく近接したペアです。分離は難しくありません。主星伴星とも明るい黄色です。
Δ217星(=HIP 85549)
- 位置(分点2000.0)赤経17h29.0m,赤緯-43°58’
- 主星6.3等,伴星8.5等,位置角168°,離角13.4” (2018年),スペクトルB6III
やや暗めですが、観察しやすくみごとな重星です。主星伴星とも白色のペアです。
μ星=相撲取り星
- 位置(分点2000.0)赤経16h52.2m,赤緯-38°03’
- μ1星3.0等,μ2星3.6等,位置角252°,離角5.8’
さそり座の尾の付け根にある肉眼的な重星です。μ1星(3.0等)とμ2星(3.6等)が0.1°の離角でかわいらしく並んでいます。競い合って瞬く様子から「相撲取り星」の愛称があります。双眼鏡での観察がお勧めです。図は、双眼鏡(視野6°)で観察したときのイメージです。同じ視野の南には散開星団NGC6242、NGC6231もあり、写真では赤い散光星雲もとても美しい領域です。このμ1星とμ2星は、すぐ近くにあるように見えますが、μ1星の方が1.6倍も遠方にある見かけの二重星です。μ星の南にあるζ星も双眼鏡的な2重星となっています。