夏の星座13

13こぎつね座

小狐座

学 名
Vulpecula(略号 Vul)
英語名
The Fox
設 置
ヨハネス・ヘヴェリウス
面 積
268平方度

天体観測の見どころ

こぎつね座は星座の間に新設された星座ではありますが、天の川の中にあって、多数の微光星やいくつかの星雲星団があります。中でもM27惑星状星雲(亜鈴状星雲)は全天でも屈指の素晴らしい観察対象です。重星には小口径向きのものが意外と見当たりません。本書では、双眼鏡向きの6-8Vulを取り上げました。

1星雲星団の観察

M27惑星状星雲(=NGC6853)愛称:亜鈴状星雲(Dumbbell nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経19h59.6m,赤緯+22°43’ 視直径350”
  • 写真等級7.6,視等級7.3,中心星等級13.8

有名な全天でも屈指の惑星状星雲です。惑星状星雲は、太陽くらいの重さの恒星が終末を迎えた後に形作る星雲です。M27は約1万年前に形成され始めたと考えられる天体で、これは現生人類の誕生時期よりもずっと新しく、星の一生としてはごく最近のことになります。この星雲は蝶が羽を広げたような特徴的な形状をしている美しい天体です。西洋では「ダンベル星雲」と愛称されることから、日本では「亜鈴状星雲」と呼ばれています。夏の天の川の中にあり、視野の中は微光星がいっぱいです。天体写真でも人気があり、赤,黄色,緑などの豊富な色合いであることが写し出されます。残念ながら肉眼ではこの色合いを感じることは困難で、透明感のある星雲に見えます。

探すときには、南側の や座からがよいでしょう。

NGC6802散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経19h30.6m,赤緯+20°16’ 視直径3.2’,等級8.8,星数50

コートハンガー(後述)のすぐ近くにある矮小な散開星団です。微光星がこじんまりと集まっておりとても淡い星団で、小望遠鏡では難しい対象です。20cm以上の口径が必要でしょう。おびただしい微光星が狭い範囲に紡錘状に集まっている特徴があります。

NGC6940散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経20h34.6m,赤緯+28°18’ 視直径31’,等級6.3,星数60

こぎつね座の星団ですがはくちょう座の東の羽に近い位置にあります。W.ハーシェルは「よく輝き輝星が多くて密集する」と記載しています。大きく広がった星団で粒ぞろいの星数はとても多いのですが、銀河の中で周囲の微光星で埋もれそうです。双眼鏡では銀河の中の濃いところに見えています。

コートハンガー(Cr399)

  • 位置(分点2000.0)赤経19h25.4m,赤緯+20°11’ 視直径2°,等級3.6,星数40

こぎつね座には比較的よく知られている「コートハンガー」と呼ばれるアステリズムがあります。写真は北を上にしていますが、これを逆さまにするとコートハンガーの形がすぐに浮かび上がることでしょう。比較的明るい10星程の5~6等星が2°程の星域に散りばめられています。肉眼でも存在が分かり、双眼鏡ではコートハンガーの形が明瞭に分かります。

星団としては、メシエ番号もNGC番号もなく、スウェーデンの天文学者コリンダーの編集した散開星団カタログから「Cr399」の番号が与えられています。

2重星の観察

6-8番星(α星)

  • 位置(分点2000.0)赤経19h28.7m,赤緯+24°40’
  • 主星4.6等,伴星5.9等,位置角28°,離角427.7”(2016年),スペクトルM0III

こぎつね座で最も明るいα星です。極めて離角が広く、主星と伴星にそれぞれフラムスティード番号6と8が与えられています。6番星がα星に同一で、北東の伴星が8番星です。望遠鏡ではもはや重星のようには見えず双眼鏡に適しています。主星は濃いオレンジで伴星は空色です。