冬の星座2

2おうし座

牡牛座

学 名
Taurus(略号 Tau)
英語名
The Bull
設 置
古代ギリシア
面 積
797平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

M1散光星雲(=NGC1952)愛称:かに星雲(Crab Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経05h34.5m,赤緯+22°01’長径6’×短径4’
  • タイプ超新星残骸
ロス卿(William Parsons,3rd Earl of Rosse 1800-1867 英)が、口径1.8mの巨大反射望遠鏡でスケッチした かに星雲

メシエ天体の中では唯一の超新星残骸です。おうし座の東側の角の先ζ星の西北53’にあります。写真では濃く写っていますが、星雲の輝度は意外と低く、月明かりがあると見えないこともあります。M27亜鈴状星雲(こぎつね座)に相当する大きさがあるので、なるべく低倍率で星雲の輝度を下げないようにして探すのがコツです。

かに星雲の愛称があるのは、イギリスのロス卿の命名で、星雲の中のフィラメント状の突起がカニの足のように見えたためです。小望遠鏡ではそのような構造は分かりません。ぼんやりとした大きなひし形で、さらによく見ると佐渡ヶ島のような形が分かります。天体写真の対象としても人気が高く、赤外線に感度のあるカメラで撮影すると、星雲本体の中に赤いフィラメント状の構造が写し出されます。
1731年ジョン・ベヴィウス(英)が発見しました。メシエはその3年後の1734年に観測していますが、しばらく放置された後に、1758年彗星の観測中に偶然再発見して「ぼんやりとした炎のようだ。」と記しています。
M1星雲は書籍によっては惑星状星雲に分類されることがありますが、本書では他の超新星残骸を統一して散光星雲に分類しました。

M45散開星団(=プレヤデス星団,すばる)

  • 位置(分点2000.0)赤経03h47.0m,赤緯+24°07’ 視直径110’,等級1.2,星数100
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

前述の通り、古代から世界各地で人々の目を引いてきた美しい星団です。天体観察の対象としても定番中の定番で、肉眼、双眼鏡、望遠鏡の低倍率で楽しめます。約2°の広がりがありますから、中望遠鏡以上ではかえって星団の一部しか見えなくなりますので、双眼鏡か、小望遠鏡が最も観察に適します。もちろん、天体写真の対象としても大人気です。肉眼では、何気なく星空を眺めていても、まずぼんやりとした星の集まりがすぐに目に留まるでしょう。そして注視すると、普通の視力で6~7個の星が見えます。双眼鏡、望遠鏡では星数が一気に増え約100個の星が集まっている様子が分かります。初めて観察する人は例外なくため息をつく美しさです。

古代ギリシア詩人ホメロスは6個、古代ギリシアの天文学者プトレマイオスは7個を肉眼で認めたそうです。近代の天文学者ガリレオは発明されたばかりの望遠鏡を使って36個の星を数えました。日本では「六連星(むつらぼし)」の名もあり、すなわち6個程度の星の集まりと見ていました。

M45は若い星団で、まだ星団の周辺にはベール状の星雲が存在します。特にメローペ付近は濃くなっていますので、空の暗いところではメローペが潤んだように輝いていることが分かります。もっと空の暗いところならば、メローペを取り囲む薄い星雲そのものも見えてきます。写真では、長時間露光でこの星雲を写すことができます。このメローペ周辺の星雲にはNGC1453の番号が付けられており、1859年テンペルの写真から発見されました。

NGC1514惑星状星雲 愛称:クリスタルボール星雲(Crystal Ball Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経04h09.2m,赤緯+30°47’ 視直径114”
  • 写真等級10,視等級10.9,中心星等級9.4

その色合いからクリスタルボール星雲の愛称のある惑星状星雲です。眼視では中心星が明るく、その周囲に淡い星雲が円盤状に取り囲んでいる様子が分かります。星雲の広がりは大きく、M57環状星雲(こと座)よりもひと回り大きいです。

NGC1647散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経04h46.0m,赤緯+19°04’ 視直径45’,等級6.4,星数200

NGC1746散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経05h03.6m,赤緯+23°49’ 視直径42’,等級6.1,星数20
画面左上の輝星β星と右下の赤い輝星アルデバランの線上に、大きな2つの散開星団があります。左上がNGC1746、右下がNGC1647。アルデバランを含んでヒアデス星団のV字が横倒しに見えます。

NGC1647とNGC1746は、おうし座の2本の角の間にある、大型の散開星団です。両星団とも双眼鏡で認められます。アルデバランに近いNGC1647は、双眼鏡でぼんやりと見えます。望遠鏡では30倍の低倍率でも星団が大きすぎて、まばらな星の集まりに見えます。
NGC1746はβ星に近く、NGC1647よりも大型で双眼鏡では星粒を交えた星雲状に見えます。こちらも望遠鏡では低倍率でも大きすぎて、まばらな星の集まりに見えます。両星団の特徴はよく似ています。天体写真でもよく写りますので、星野写真で探してみましょう。

2重星の観察

7番星

  • 位置(分点2000.0)赤経03h34.4m,赤緯+24°28’
  • 主星5.9等,伴星9.9等,位置角53°,離角22.4”(2014年),スペクトルA3V+A3V

薄黄色の主星と伴星です。4等級の光度差がありますが、十分な離角がありますので容易に観察できます。主星はさらに6.6等と6.9等が離角0.8”で近接する公転周期522年の連星系です。これは、口径15cmで分離できる限界です。シーイングの良いときにチャレンジしてみて下さい。

Σ422星(=HIP 16846)

  • 位置(分点2000.0)赤経03h36.8m,赤緯+00°35’
  • 主星6.0等,伴星8.9等,位置角273°,離角6.7” (2016年),スペクトルG8V+K6

エリダヌス座との境界に近いおうし座の南端にあります。重星の代表のような適度な光度差と離角があります。黄色の主星とオレンジ色の伴星のペアです。主星と伴星は、公転周期2101年の連星系を作っています。

φ星

  • 位置(分点2000.0)赤経04h20.4m,赤緯+27°21’
  • 主星5.1等,伴星7.5等,位置角259°,離角48.7” (2017年),スペクトルK2III

広い離角があります。主星は明るいオレンジ色で、青い伴星のペアです。色のコントラスを楽しめます。

χ星

  • 位置(分点2000.0)赤経04h22.6m,赤緯+25°38’
  • 主星5.4等,伴星8.5等,位置角25°,離角19.4”(2016年),スペクトルB9V+F8V

色のコントラストの素晴らしい重星です。主星は明るい青白色で、伴星は白っぽい黄色です。小望遠鏡から楽しめる対象です。

Σ645星(=HIP 24019)

  • 位置(分点2000.0)赤経05h09.8m,赤緯+28°02’
  • 主星6.0等,伴星9.1等,位置角29°,離角11.3”(2017年),スペクトルA5

少し暗めですが可愛らしい観察対象です。主星は乳白色で、伴星はグレーです。さらに伴星は、9.1等と9.7等が離角0.2”で近接する不可視の連星系です。

118番星

  • 位置(分点2000.0)赤経05h29.3m,赤緯+25°09’
  • 主星5.8等,伴星6.7等,位置角209°,離角4.6” (2020年),スペクトルB8.5V+A1V

見事な重星です。1等級差の伴星が主星と引っ付くように寄り添っています。主星は白色、伴星は青白色のペアです。

おうし座 OΣ72 = HIP 19284

  • 位置(分点2000.0) 赤経04h08.0m, 赤緯 +17°20’
  • 主星 6.1等,伴星 9.7等,位置角328°,離角4.7” (2016年),スペクトル KIIIb

おうし座 Σ7(=HIP16386)& Σ401(=HIP 16411)

Σ7(=HIP16386)
位置(分点2000.0) 赤経03h31.1m, 赤緯 +27°44’
主星 7.4等,伴星 7.8等,位置角234°,離角44.1” (2017年),スペクトル B9
Σ401 (=HIP 16411)
位置(分点2000.0) 赤経03h31.3m, 赤緯 +27°34’
主星 6.6等,伴星 6.9等,位置角270°,離角11.5” (2018年),スペクトル A2V
おうし座のWWスター。低倍率で見られる。写真は縦位置。