冬の星座4

4ぎょしゃ座

馭者座

学 名
Auriga(略号 Aur)
英語名
The Charioteer
設 置
古代ギリシア
面 積
657平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

M36散開星団(=NGC1960)

  • 位置(分点2000.0)赤経05h36.1m,赤緯+34°08’ 視直径12’,等級6.0,星数60

M37散開星団(=NGC2099)

  • 位置(分点2000.0)赤経05h52.4m,赤緯+32°33’ 視直径20’,等級5.6,星数150

M38散開星団(=NGC1912)

  • 位置(分点2000.0)赤経05h28.7m,赤緯+35°50’ 視直径21’,等級6.4,星数100
中央の大きな広がりがM38。画面下のこじんまりとした散開星団はNGC1907。
左からM37、M36、M38。いずれも大型で美しい散開星団です。

ぎょしゃ座には、メシエ番号の付いた散開星団が3つあります。3星団は冬の天の川で微光星あふれるぎょしゃ座の中心部にあり、双眼鏡で散策するだけでも楽しくなってきます。いずれも大型の美しい星団で、双眼鏡でも星雲状に見えて楽しめます。冬の天の川の中で、付近は微光星であふれています。M36、M37、M38はいずれも兄弟のように性状の似た散開星団です。

M36は、中央に星の集まる美しい散開星団で、肉眼でもぼんやりと存在が分かります。星の集まる形が、いびつな五角形に集まっている特徴があります。M37は、3つの散開星団の中でも特徴が際立っていて、微光星の大集団が小望遠鏡では星雲を伴っているように見えます。その中にパラパラと明るい星がばらまかれているようです。15cm以上口径でははっきりと恒星に分離されます。中央に目立ったオレンジ色の星があり星団を特徴づけています。
M38は、3星団の中では最も広がりがあり、星雲状の光芒の中にM37よりは明るい星が散りばめられています。星団の中の星の並びは小望遠鏡ではひずんだ三角形に、20cm以上の口径では十字型に見えます。M38のすぐ南には、小型の散開星団NGC1907がありますので、併せて観察しましょう。

NGC1664散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経04h51.1m,赤緯+43°42’ 視直径18’,等級7.6,星数40

ε星の西2°にある小型の散開星団です。これを楽しむには、口径10cm以上が欲しいでしょう。小型で星粒のそろった散開星団で、微光星が扇状の形を作り、扇の要の位置にひときわ明るい星があり楽しめます。

NGC2281散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経06h49.3m,赤緯+41°04’ 視直径14’,等級5.4,星数30

ぎょしゃ座の本体からは東に離れた位置ある小型の散開星団です。星の数は少ないものの、形がユニークな星の粒が明るい星団です。Y字型に星が並んでおり面白く観察できます。

IC405散光星雲

  • 愛称:勾玉(まがたま)星雲,Flaming Star Nebula
  • 位置(分点2000.0)赤経05h16.2m,赤緯+34°16’長径30’×短径20’
  • タイプHⅡ発光+反射

IC410散光星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経05h22.6m,赤緯+33°31’長径40’×短径30’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

ぎょしゃ座の中心部、五角形の南側はひときわ冬の天の川が濃くなっています。ここにはM36、M38散開星団の他、眼視では見えない散光星雲があり、天体写真でも人気のフィールドとなっています。IC405とIC410は、典型的な散光星雲で、電離した水素の発する特有の赤い色をしています。西側(画面右)のIC405は、形の特徴から日本の古代貴族の装飾具の形から勾玉(まがたま)星雲という愛称があります。英語圏ではFlaming Star Nebula(燃え立つ星雲)と呼ばれています。

2重星の観察

ω星

  • 位置(分点2000.0)赤経04h59.3m,赤緯+37°53’
  • 主星5.0等,伴星8.2等,位置角5°,離角4.7” (2019年),スペクトルA1V

3等級の光度差がありかなり近接していますので、意外と観察の難しい対象です。口径10cm以上で、シーイングの良い夜に観察して下さい。黄色の主星に青い小さな点がくっつくように見られます。

14番星

  • 位置(分点2000.0)赤経05h15.4m,赤緯+32°41’
  • 主星A 5.0等,伴星B 10.9等,位置角11°,離角8.9” (2017年),スペクトルA9IV
  • 主星A 5.0等,伴星C 7.3等,位置角225°,離角14.3” (2019年) ,スペクトルA9IV+F2V

三重星ですが、主星と伴星Cの組み合わせが明るく離角もあるのでまず目につきます。こちらは、色のコントラストが素晴らしい重星です。主星は麦のような黄色で、これに美しい青色の伴星があります。伴星Bは非常に暗く、口径15cm以上の望遠鏡でないと観察は困難でしょう。

26番星

  • 位置(分点2000.0)赤経05h38.6m,赤緯+30°30’
  • 主星5.5等,伴星8.4等,位置角269°,離角12.4” (2019年),スペクトルG8III+A6V

3等級の光度差がありますが、十分な離角があるので観察は難しくありません。麦のような色をした主星と薄い青色の伴星のペアです。主星は6.2等星と6.3等星が離角0.2”で近接する不可視の連星系です。

θ星

  • 位置(分点2000.0)赤経05h59.7m,赤緯+37°13’
  • 主星2.6等,伴星7.2等,位置角304°,離角4.2” (2019年),スペクトルA0

4.6等の光度差があり、わずか4.0”の離角ですから、小望遠鏡では困難な観察対象です。しかし、シーイングの良い夜に回折リングの中に垣間見える消えそうな伴星を見つけると感動すら覚えます。目がいたくなるような明るい白色の主星で、伴星の色は小さすぎて分かりません。

41番星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h11.6m,赤緯+48°43’
  • 主星6.2等,伴星6.9等,位置角358°,離角7.5” (2019年),スペクトルA1V+A6V

重星の見本のような見事なペアです。わずかな光度差がありますが、双子のようにも可愛らしい対象です。主星は黄白色で伴星は白色です。小望遠鏡で見てとても楽しい重星です。

Ψ5星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h46.7m,赤緯+43°35’
  • 主星5.3等,伴星8.7等,位置角42°,離角29.4”(2013年),スペクトルG0V

3.4等の光度差がありますが、十分な離角があり小望遠鏡でも楽に観察できます。愛らしいレモン色の主星にシルバーの伴星の組み合わせです。

ぎょしゃ座 Σ644 = HIP 24072

  • 位置(分点2000.0) 赤経05h10.3m, 赤緯+37°18’
  • 主星7.0等,伴星6.9等,位置角222°,離角1.6” (2016年),スペクトル B2II+K3

近接した等光度の重星です。分離して見るためには倍率を高くして観察する必要があります。非常に珍しいことには、この双子は色が異なっています。等光度の重星はたいていの場合、色もほとんど変わらないものですが、この星は南の主星は青白,北の伴星はピンク色で、近接しているがゆえに色のコントラストが際立ちます。一見、アイピースの色収差が出ているようにも見えてしまう興味深い観察対象です。