会社や社員が犯罪に巻き込まれたときどうする? ――小さな事件からITセキュリティまで警察への依頼の仕方

著者の一言

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  • 「私がいなかったら,この案件どうなっていたの??」

私は小さい頃から正義の味方に憧れて,その延長で大学卒業後すぐに警察官になりました。制服に袖を通した瞬間まさにこれが天職だと感じ,以来悪きをくじき弱きを助ける仕事に没頭し,20年間でこの役割をやりきったなと思えるところまで来ました。

これまでの経験を活かしてもっと世の中を良くしたいという思いで民間企業に転職したのですが,その職場で何度も頭をよぎったのが冒頭の言葉です。警察から転職して来たという変わった経歴を持つ私のところには,犯罪に関するありとあらゆる相談が来ました。

  • 「社員が犯罪被害に遭ったのですが,どうすればいいですか?」
  • 「社員が不正を行っているようなのですが,どうすればいいですか?」
  • 「会社に変な人が来ているのですが,どうすればいいですか?」

警察にいた時はこれら全てが日常業務だったので,別に私でなくとも同僚であれば誰でもそれなりの対応をすることができました。企業もある程度の規模になれば法務担当の方やお抱えの弁護士先生がいますが,訴訟に関する対応はできても犯罪の初動対応や警察とどう連携すればスムーズに事が運ぶかについてのノウハウを持っている人はほとんどいないのです。会社内で起こる犯罪や巻き込まれる犯罪に対して正しく迅速に対応することは,被害やレピュテーションリスクを最小限にとどめるために極めて極めて重要なことなのですが,それらが適切にできている企業はほとんどないようです。

警察と民間企業の経験を併せ持つ私たち二人がそのノウハウを文字にしてまとめることによって,もっと世の中を良くすることができるはずだと思いこの本を書くことにしました。警察は怖い,秘密組織っぽくてよくわからない,というようなイメージがあるかもしれませんが,この本によって企業と警察との連携がもっとうまくいくようになり,より良い世の中になっていくことを願ってやみません。

著者プロフィール

海老谷成臣(えびたになるおみ)

大手総合オンラインサービス リスク管理部長

静岡県富士市出身の元警視庁警察官。交番,刑事,機動隊,白バイ,爆弾処理班を経てサイバー犯罪捜査の道へ。

アメリカNCFTA(National Cyber Forensics & Training Alliance)のインターナショナルタスクフォースに派遣,世界各国のサイバー捜査官との共同捜査に従事。その後カーネギーメロン大学CyLabにおいて客員研究員としてサイバーセキュリティ及び犯罪捜査手法の研究及び講義を行う。警視庁を20年で退職し,外資系金融企業の捜査チーム責任者に就任。サイバーセキュリティ法制学会会員。2021年から現職。CISSP。趣味は靴磨きと包丁研ぎ。


林秀人(はやしひでと)

大手総合オンラインサービス 管理部

大阪府茨木市出身の元警視庁警察官。交番勤務ののち機動隊で水難救助,その後刑事を経てサイバー犯罪対策,捜査を行う。

警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課(現:サイバー警察局サイバー捜査課)に出向し,国際捜査共助業務(G7コンタクトポイント)を担当,FBIをはじめ外国捜査機関との合同オペレーションに参加。その後警視庁を退職し,2021年から現職。サイバーセキュリティ法制学会会員。趣味はジョギングとバンド活動。