データ駆動型社会でも役立つ SQLの知識を身に付けよう

SQLとは

SQL(Structured Query Language)は、リレーショナルデータベースシステムを操作するための標準言語です。SQLを使ってクエリ(問い合わせ、処理の要求)を作成することで、データを格納するためのデータベースやテーブルを作成したり、テーブルから必要なデータだけを抽出したり、複数のテーブルにあるデータを一つにまとめて取得したり、といった処理を行えます。

私たちの社会では、さまざまなデータが生活やビジネスのあらゆる場面に深く根ざしています。データに基づいて意思決定や価値創造を行うことから、データ駆動型社会とも呼ばれるようになりました。このような大量のデータを一定の規則のもとで効率的に整理・集約し、必要な情報を素早く取得して利用するためには、データベースシステムの存在が不可欠であり、それを活用するためのスキルも重要になっています。

SQLを学ぶメリットとは

実は、SQLを使ってクエリを直接記述する機会は以前よりも減ってきました。現代的なプログラミング言語やフレームワークを使ったシステム開発では、O/Rマッパーやクエリビルダーと呼ばれる機能を活用することも多く、システム開発に携わっている人の中には、⁠SQLクエリを書く」というよりも「SQLクエリを生成する」といった感覚の方も多いのではないでしょうか。

さらに、近年では大規模言語モデル(LLM)を使った生成AIが急速に進化しています。生成AIに対して自然言語で指示を出すだけで、必要なSQLクエリを生成できるようになってきたのです。生成AIを利用したSQL生成ツール/サービスも登場しました。こうしたツールを活用しながら、SQLの知識を持たない人がデータベースシステムにアクセスし、データを分析するというケースは今後ますます増えていくでしょう。

こうした便利な技術が急速に発展していく一方で、SQLの知識を身に付けることのメリットもたくさんあります。

たとえば、生成されたSQLクエリが意図した通りのものか、あるいは効率的なものかを検証する上では、SQLの知識はまだまだ役に立つはずです。複雑なテーブルの結合やサブクエリを含むケースでは、生成されたSQLクエリを正確に読み解き、ロジックの妥当性や問題点を検証することが求められるでしょう。

また、生成AIに指示を出す上でも、データベースやテーブルの構造、SQLクエリに関する知識の有無が回答の質に影響を与える可能性があります。プロンプトエンジニアリングという言葉も一般的なものになりました。生成AIの持つ力を発揮するには、正しい知識をもとに適切な指示を出す能力が求められるのです。

データベースシステムごとの「方言」

SQLを学ぶ上でしばしば壁となるのが、データベースシステムごとの違いです。

SQLには国際標準の規格がありますが、実際に現場で使われるデータベースシステム(たとえばOracle Database、MySQL、PostgreSQLなど)は、標準規格をベースにしつつも、それぞれ独自の機能追加や構文拡張を行っています。こうした違いは、SQLの「方言」などと呼ばれることもあります。関数名や演算子がデータベースシステムによって異なることもありますし、同じSQL命令であっても指定可能なオプションが異なることもあります。

もちろん、SQLの基本的な命令など、一つ習得すれば他のデータベースシステムでも応用できる普遍的な知識は多数あります。一方で、パフォーマンスに関わるチューニングや高度な機能を使う際には、利用しているデータベースシステムならではの機能、つまり方言を使いこなす必要が生じます。

すべての方言を学ぶ必要はありません。業務などで使っている(もしくはこれから使う予定の)データベースシステムの標準的なSQLをしっかりと学ぶことが大切です。


技術評論社が刊行する[改訂第5版]SQLポケットリファレンスは、主要なリレーショナルデータベースシステム(Oracle Database、IBM Db2、Microsoft SQL Server、PostgreSQL、MySQL、MariaDB、SQLite、Microsoft Access)に対応し、基本のSQL命令、演算子、関数について、データベースシステムごとの文法やオプションの違いなどを整理し、1冊にまとめたリファレンスです。

SQLを学ぶ中では、また業務でSQLを活用する中では、⁠コマンドの構文を思い出せない」⁠今使っているデータベースシステムでこの関数は使えるのだろうか」といったことも起こるでしょう。そんな時に本書が手元にあれば、必要な情報を素早く調べられます。豊富な実行例とともに解説しているので、実務で役立つ実践的な使用方法をスムーズに習得できるはずです。