効果的な導線でバーチャルとリアルを繋げる
アカデミーヒルズは、森ビル株式会社の一事業として、「創造」「交流」「発信」を可能にする“場”を恒常的に提供することを目的に、六本木ヒルズに設置された空間です。現在展開しているビジネスに関して、Webからの発信を通じて文化事業としての使命を果たすべく、Webサイトのリニューアルを実施しました。今回、アカデミーヒルズ事業部 副主事マーケティングコミュニケーショングループ 深町友子氏、同グループ 佐藤亘氏、制作を担当した株式会社ボール 取締役 松橋睦生氏、松尾邦彦氏に、リニューアルの裏側、これからの展望について伺いました。
リニューアル=コンテンツの統合
深町氏:アカデミーヒルズが行っている事業は、大きく「六本木スクール」「アーテリジェントスクール」「六本木ライブラリー」「六本木フォーラム」と、今年に入って設立した「日本元気塾」というプロジェクトです。これらの内容を通じて、知的活動の場と、教育環境の提供を目指しています。私たちは、10年ほど前からWebサイトを通じた情報発信を始め、現在までにサイト内に膨大な情報を蓄積しています。これまでにも何度か小さなリニューアルをしてきましたが、2007年から本格的なリニューアルの検討を始めました。
コンペは「デザイン・構成力」を重視
佐藤氏:アカデミーヒルズは、存在そのものは文化・教育施設という特性を持ちながらも、それに紐付くプロジェクトやコンテンツが多岐に渡るため、1つのWebサイトとしてまとめながら、それぞれを連携させたシナジー効果を生み出したいと考えていました。
CMS導入を前提に複数の制作会社にリニューアルの提案を依頼したところ、頂いたご提案のほとんどが「大量のコンテンツをどう運用するか」という管理主眼のものでした。運用の効率化も大事ですが、私たちはそれに加えて多様なコンテンツをシンプルに見せることに関するご提案が欲しかったのです。
そういった私たちが求めていたものにいちばん近かったのが、今回リニューアルをお願いしたボールさんからのご提案でした。コンセプトやテーマ、ターゲットさえも異なる性格をもったコンテンツを1つのサイトとしてまとめるのは大変難しいことだと思いますが、ボールさんではストリートファッションのマーケティングサイト「ACROSS」他、幾つかのサイトで既に実績があり、それらを見てデザインや構成力の高さを評価させて頂き、発注に至りました。
松橋氏:さまざまなコンテンツをフレキシブルにインデキシングしたいというニーズから、CMSはWebReleaseをご提案しました。WebReleaseは、ページが持つ属性情報を自由に設定でき、それらをもとに多様なインデックスを自動生成させることができるからです。
それと今回のような、完成型を事前にイメージすることが難しい、複雑で高いクリエイティビティが求められるプロジェクトでは、要件定義/設計/開発といったウォーターフォール・モデルで進めるよりも、短いサイクルを積み重ねていくやり方が合っていると考え、そういった進め方に適していることからもWebReleaseを選びました。
サイト内を横断的に回遊できる導線設計
深町氏:プロジェクトのゴールについては、先ほど佐藤が申し上げたようなそれぞれのサイトを紐付けて相乗効果を出すことを最重要としました。具体的には、私たちが展開しているそれぞれのプロジェクトに関して、たとえば「スクールの講座にお申込いただいた方に会員制ライブラリーの存在を知っていただく」「フォーラムでのイベントに参加していただいた方にスクールにもお申込いただく」というように、Webサイトをハブとして異なる性質のプロジェクトを繋ぎ、お客様が横方向へ広がっていくようにしたかったのです。
松橋氏:今のお話を伺って、まず、各コンテンツのテーマ性とそのコンテンツを閲覧するお客様のニーズや行動を含めた仮説作りに時間をかけました。とくに、カテゴリを作るのにはかなりの時間を割きました。
たとえば、フォーラムという非常に注目されるコンテンツに対して、それに紐付くスクール講座の紹介や書籍の紹介、さらに別のフォーラムとのリンクなど、どれとどれが繋がるか、1つ1つ検証しました。回遊率を高めるために、ビジュアルデザインの観点からは1ページにどのようなコンテンツを載せて見せるか、また情報設計の観点からは各ページにどのような属性情報を持たせてどう紐付けるのか、といったことをご一緒にブレストを繰り返しながら決めていきました。
深町氏:また、これは運営側の希望でもあったのですが、ページを見せる際、ただキーワードだけで紐付けて自動的に表示させるのではなく、たとえば「この時期であればこの講座を最も目立たせたい」「カテゴリでは同じ講義だとしても、対象者の属性が異なるので、同じページ内では表示させたくない」など、かなり恣意的に表示させたい/させたくない部分がありました。
そこでページ生成にあたっては半分自動、半分手動というような、制作者にとっては非常に難題をお願いしてしまったと思っています。それでも、ボールさんはその要望を汲み取り、実現できるサイトを作ってくださいました。
松尾氏:作成したテンプレートは、トップページ用と講座紹介ページ用、それと汎用テンプレートと呼んでいるものの大きく3つです。汎用テンプレートは、その名のとおりいろいろな目的に対応できるように作っており、各ページに複数の属性情報を入れられるようになっています。これは後々新しいインデックスを生成したくなった際に、属性を決めるだけで自動生成できるようにするためです。
こうした仕組みは、実際にテンプレートを作成して、お二人に動作を見て頂いたりもしました。そうすることで、それまで何となくもやもやしていたものが可視化され、安心して次のステップへと進めることができました。プロトタイピングと言うと少し大袈裟かもしれませんが、このように素早くテンプレートを作成できるのはWebReleaseのアドバンテージの1つですね。
テンプレートの開発後に、大量のコンテンツを入れてみて初めてわかることもあります。また、埋もれてしまった古いコンテンツを新しく導線を追加することで前面に出すといったことも効果的です。このように、後から手を加えていけるよう事前に柔軟な設計をし、またそのような設計で実装できるCMSを選んでおくことが重要だと思います。
トップページのPV倍増、回遊率も向上
深町氏:今回のリニューアルは大きな成果を出すことができました。トップページのPVはリニューアル前と比べて2倍になりました。また、検索エンジン経由でアクセスしてくださるお客様が増えています。これはSEO効果と言えますね。
さらに、最重要課題だった回遊率の向上に関しても、直帰率が下がり、滞在時間が延び、異なるカテゴリのページを閲覧していただく方が増えました。
短いサイクルでブラッシュアップしながら運用する
佐藤氏:情報設計がしっかりしているので、運用しながらページやインデックスの見せ方を柔軟にブラッシュアップすることができています。どのようにコンテンツを配置すれば異なるプロジェクト間を横方向へとクロスして頂けるのか、まるでパズルを解くような感覚に陥ることもあります。多面的な編集の手法が必要とされますが、苦労というよりは「こんな見せ方もできるんだ」という、新しいことを発見できた喜びが日々ありますね。
繰り返しになりますが、アカデミーヒルズは文化を発信することが使命であり、そういう場があることをより多くの方に知ってもらうことが大切です。そのために、どうすればWebサイトを最大限活かせるかというのは常に考えなければなりません。また、時代の流れとともに文化や情報、技術、お客様のニーズも日々変化していきます。
私たちはその変化を汲み取りながら、試行錯誤を行い、より最適化された情報発信メディアを目指して日々運用を行っています。お客様には宝探しをするような感覚で、アカデミーヒルズの発信する“旬”の情報や話題に触れてほしいと考えています。
- 製品名:WebRelease 2
- 問合せ先:㈱フレームワークスソフトウェア
URL:http://www.frameworks.co.jp/
TEL:03-3547-3676