Webディレクター,かくあるべき「第二部 対クライアントへのマインド,Webディレクターの存在」

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ワイヤーフレームに含める要素とは?

森田雄さん

森田雄さん

森田:

いや,それは明白に分けているんですよ。まず,画面内要素設計とコンテンツ仕様書というのを作ります。画面内要素設計では,位置配置はまったく行わず,この画面にはこの要素がありますというのを設計するためのものです。

阿部:

つまり,ワイヤーのように,中途半端にレイアウト的な要素は含めないと?

森田:

そう,レイアウトは無視しています。それで,コンテンツ仕様書というのは,たとえば見出しという要素があったら,そこにほげほげという言葉が入るっていうところまで詰めたものです。でも,ここでもレイアウトはやっていません。

あえてワイヤーに似ているものと言えば,デザイナーたちの基本デザインがそうなのかもしれないけど,なんとなく世間一般では,今言った画面内要素設計とかコンテンツ仕様書みたいなものがワイヤーと思われているみたいですね。

だから,デザイナーが最初に作るものはワイヤーとは呼んでいないんです。あくまでデザインスタディとか,そういう風に呼んでいるんです。関係者間で意味がぶれる言葉はとにかく使わないようにしています。

長谷川:

それは正しいと思いますね。

先日のWeb標準の日々のときも,ワイヤーはむしろデザイナーに,ということを話がありましたよね。

レイアウト作業でIAという職種が入るとすれば,作ろうとしているサイトがターゲットが3種類あって,1個のサイトの中でその3種類の人を同時に問題解決させるのか,それとも3つのサブサイトに分けたほうが良いのか,とか,その中でのものの読ませ方がどういう形になっているのが良いのか,といったナビゲーションの設計といったような,要素を切り出して考える必要があれば,それはIA,つまり情報アーキテクチャだろうと思っています。

極論すれば,1個のメディアの中の枝葉末節まですみずみわかりやすくやるということができればベストですが,それこそスーパーIAになりますよね。仮にグラフィックデザインの専門知識をきちんと持っていて,大学で視覚伝達デザインをやっていて,タイポグラフィも平面構成も色彩計画もやってきたという人であれば,やってもいいとは思うし,できると思いますが,そういう人あまりいないでしょう。

だから,通常はそこまではやらずに,森田さんが言うように,要素というか要件,このページはこういうところをやるところなんです,という形でまとめているんだと思います。

阿部:

たしかにワイヤーは微妙ですよね。うちもワイヤーを書くときにはデザイナーを入れてやっています。実際に成果物に落とし込むのはディレクターなりIAなりですが,その後にレイアウトという要素が入っくるので,最終的にデザインするときに実際には変わってしまうこともあるので,あらかじめデザイナーにも参加してもらっています。

森田:

うちの画面内要素設計図は,クライアントに話をするときにそのまま見せても理解してもらえないことがあります。だから結果的には画面っぽくはしますね。とはいえ,あくまでレイアウトを規定するものではないと,しつこく言います。

長谷川:

説得用,コミュニケーション用ですね。

森田:

レイアウトがないと理解しづらいということはありますからね。ただ,Flashのサイトのときなんかだと,なんでこういうもの(レイアウト図)を書かなきゃいけないのかな,って思うときもありますよね。

阿部:

そういうこともあるので,うちはペーパプロトとか作って対応します。そこにもデザイナーを入れて作るようにしていますね。

森田:

1つ気を付けなければいけないのは,デザイナーが入った場合でもレイアウト面がすべてOKになるかは別問題という点ですよね。関係者がいても,意見が出やすい雰囲気になっていないと。

阿部:

もちろんそうですね。うちはそういう点では,非常に和気あいあいとやっていますよ(笑⁠

クライアントへの対応

制作サイドとクライアントサイドのギャップ

阿部:

今のワイヤーを使ったレイアウトの話にも出てきましたが,Web制作においては,対クライアントも大きなポイントですよね。この辺について話してみましょうか。

まず,僕自身,強く感じるのが制作/クライアント間のギャップ,とくにスケジュール感とコスト感のギャップです。呼ばれて行ってはみたものの,それは無理だね,っていうときもあります。

長谷川:

ええ,たとえば,オーダーをしてきた段階ではクライアント側で気付いていなかった問題が,プロジェクトが進行するにつれ,タスクごとにプライオリティ付けを明確にすることをこちら側が要求していくと,今まで見えなかった課題が社内でもきちんと解決されていなかったみたいことってよくありますよね。bAでは,そういうのはあまりないですか?

森田:

いやいや,あたりますよ。そういう提案をしていくと,そこで具体的なプロジェクトが明確になったりするんですよね。そうなると,コンペに戻ってしまったりもします。ときにはWeb制作会社向けのコンペではなくなることもあるわけですが。

長谷川:

そうそう,そのように話が戻ってしまうと,Webプロジェクトの範疇を越えてしまうことが起きますね。ただ,Webの位置付けがビジネスのコミュニケーションツールまで上がってきているので,そこまで真摯に解体しないといけなくて,そもそもクライアントが考えていることは本当は,もっと上流のコミュニケーション層にあるという大前提の合意がとれないとなってしまったら,そもそも判断が付かないという状況が……。

著者プロフィール

阿部淳也(あべじゅんや)

(株)コスモ・インタラクティブ執行役員,クリエイティブチーム1 マネージャー/プロデューサー。

株式会社コスモ・インタラクティブ
「パンチの効いたアイディア」と「必然性のあるデザイン」,「妥協しない技術」によるインタラクティブコンテンツを主軸としたプロダクション。顧客企業のさまざまなシーンでのコミュニケーションを支援するために日々,熱い思いで奮闘中。Flashを主体とした映像連動のリッチコンテンツ制作やサーバサイドと連携したRIA(Rich Internet Application)開発では国内TOPレベルの実力を持つ。

長谷川敦士(はせがわあつし)

(株)コンセント代表取締役,インフォメーションアーキテクト。

株式会社コンセント
ビジュアルデザイン,システム,情報アーキテクチャを融合して企業のコミュニケーションデザインを行う,Web時代の設計事務所。コーポレートサイトから,コンテンツサイトまで幅広く手がけている。ユーザ調査から,設計/制作,そして運用までWebプロジェクトをトータルに支援する。

森田雄(もりたゆう)

(株)ビジネス・アーキテクツ取締役,Quality Improvement Director。

株式会社ビジネス・アーキテクツ
顧客企業の事業を支援するコミュニケーション戦略を提案・実施する国内最大規模のWebデザイン企業.顧客企業の経営課題を的確に捉え最新の情報技術を活用し,デザインという切り口から多面的なサービスを提供することにより,大企業の新事業立ち上げや事業の再編・再構築を支援.制作したWebサイトを通じて国内外のアワードを多数受賞している。