新春特別企画

2010年のデバイス&コンピューティング

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プロジェクション・コンピューターのプロトタイプ製作

机上の空論では説得力がありませんので,実際にプロジェクションコンピューターのプロトタイプとして「電気スタンド型コンピュータ」を試作してみました。

電気スタンド型コンピュータのイメージ

電気スタンド型コンピュータのイメージ

試作した電気スタンド型コンピュータ

試作した電気スタンド型コンピュータ

理想的には先程述べたような,タバコの箱大に収めて文鎮のようにテーブルの上に置いて使ったり,電球型にして照明と置き換えて使うのが理想なのですが,小型なものを自作するのは難しいため発想を転換しテーブルを照らすお馴染みの電気スタンドの形状にしました。本当ならシェードがあって,ポチンとツマミを回すと電源がONになりテーブルにプロジェクションされるような,電気スタンド本来のアフォーダンスになっていれば最高なのですが,プロトタイプなのでアームの先端にWebCamとPicoProjectorを付けただけの簡素な物になっています。コンピュータが電気スタンド型になっていれば,お爺さんお婆さん,どんな人にも使えて素敵だとおもいませんか?

動作原理は単純です。指先を照らすための補助光として,赤外線ラインレーザーをテーブルの上に置いて使用するのですが,指で机にタッチをすると指先に赤外線レーザーが当たり,光った部分を赤外線改造されたWebCamで撮影しマルチタッチの座標を取得します。

電気スタンド型コンピュータの動作原理

電気スタンド型コンピュータの動作原理

制作費はアーム,プロジェクター,レーザー,WebCamでだいたい3万円ぐらい。最も安価なマルチタッチ環境の出来上がりです。実際に使用してみると,なかなか快適で,焦点距離や操作面積を考えると電気スタンドのカタチが今のところ一番の最適解なのではと思います。不要なときは机の脇に寄せておけるというのも便利です。木の机やザラザラした壁などの本来タッチパネルで無い素材に触れて操作するのも不思議な感覚で可能性を感じます。

プロジェクション・コンピュータのデモ動画

Projection Computing Demo with touche from nucode on Vimeo.

WebCamとプロジェクタを身につけるMITの“SixthSense”

出てくるだろうなと思ってはいたのですが,昨年MITから発表された帽子にマイクロプロジェクター(3M MPro110)とWebCamを仕込んで指にカラーマーカー(ビニールテープ?)を巻いてウェアラブルコンピューティングを実現した第六感コンピューティングです。スゴイです。余談ですが,セカイカメラの井口さんと話をしたときに,プロジェクション・コンピューティングじゃ名前がイケてない,⁠SixthSense⁠のほうが良いネーミングだと言われたのは秘密です。

プロジェクションはARを進化させるのか?

プロジェクションと相性の良い技術にAR(Augmented Reality)があります。ARは拡張現実とも呼ばれ,WebCamやケータイのカメラで撮影されているリアルな世界の中に,マーカーを置くことで,あたかもそこに存在するかのように3DのCGオブジェクトをリアルタイムに合成する技術です。最近ではFlashを使ったWebや,iPhoneのアプリでもよく目にするようになってきました。

実際に試してみるとマジックをみているような面白さがあるのですが「画面の中だけでしか体験できない」のでかなり残念です。ARを一度体験すると「これが裸眼で見ることができればスゴイのに」という欲求は当然出てくると思います。ARはいつまで画面をノゾキコムのでしょうか?技術的にも不可視マーカーとプロジェクターの組み合わせで裸眼でARを見せることは可能です。

一番の問題点は裸眼の場合,顔を動かすと表示オブジェクトの画角がズレてしまう事です。その答えとして「WebCamで顔(目)の位置を検出すれば今の技術で裸眼ARは十分に作ることは可能…」と昨年10月のAR関連のセミナーでお話をさせて頂いたのですが,つい昨年の12月にAppleが同様な顔の位置を認識して画面内のオブジェクトをリアルな3Dに見せる特許を取得したというニュースを読んで驚きました。

個人的には今年こそプロジェクターを使って画面を覗き込まずにフィジカルコンピューティングとARを組み合わせた体験がしてみたい…と期待しています。

著者プロフィール

中井ナオト(なかいなおと)

元ゲームディレクター。代表作Beat Planet Music。1995年ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。サウンドクリエイターとしてポポロクロイス物語,PS版攻殻機動隊のサウンドディレクションほか。ディレクター兼プランナーとしてBeatPlanetMusic,TVDJなどを企画。2003年ゲーム業界を離れモバイルサービスのプロデュース,KDDI関連会社勤務を経て現在フリー。