新春特別企画

2010年のデバイス&コンピューティング

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好きな石ころがコントローラに!

プロジェクターのメリットとして,リアルなモノや環境との相性がディスプレイに比べて遥かに良いことが挙げられます。何の変哲も無い,川原で拾ってきた丸い石が,プロジェクターの光源に照らされた瞬間にUIが周りに表示され,コントローラになるという未来はもうすぐそこです。カメラでの認識はレスポンスの点でまだまだ課題もありますが,デバイスが内包するハードの形状などの制約から開放されることでデザインもまた,シンプルミニマルな現在のトレンドからよりユーザーが使っていて心地良い形状,新しいカタチ,アートや工芸に近づいていくのではないかと私は考えています。

タンジブルやフィジカルコンピューティングが注目されていますが,前述のARも含め今後プロジェクションと組み合わせたバリエーションが今年は数多く出てくると思います。

レーザー版マイクロプロジェクターの登場で加速するプロジェクション・コンピューティング

これまで述べてきました,プロジェクション・コンピューティング,プロジェクションを使ったAR,石ころをコントローラに,という話も今年からは決して大げさな夢物語ではないかもしれません。

フィジカルコンピューティングとプロジェクションの連携が2010年以降に加速すると考えられる理由のひとつにレーザーを光源にしたマイクロプロジェクターの登場が挙げられます。発売を目前に控えているのMicrovisionのレーザープロジェクターShowwxや,日本信号?のMEMSデバイスであるエコスキャンなど,今年は小型のレーザープロジェクターを応用した製品が続々と登場するでしょう。従来のプロジェクターで懸念された・光源の熱・ファンの騒音・設置場所の確保といった問題や,LEDマイクロプロジェクターの・輝度が足りない・ピント合わせが面倒といった課題はレーザープロジェクターではほぼ解決されておりピント合わせが不要というレーザーならではの特徴が,積極的な立体物への情報投影や環境設備への埋め込みにつながるのではないかと期待しています。

また,センシングの観点からもレーザーとカメラを使ったセンサーは,安価な非接触の入力デバイスとして優れているので,表示用のレーザーと共に組み込まれる可能性は大いにあります。また,デジタルサイネージにおいても従来のディスプレイとは違った場所でのユーザー体験を演出できるので,レーザープロジェクターとカメラを使ったインタラクションは新しい表現の可能性を秘めています。

お正月,街に繰り出す時にはぜひ,ここに情報が投影されたら良いなあ…とか,この置物はコントローラになるかなあ・とか考えながら過ごしてみてください。新しい発見があるかもしれません。

未来楽器プロジェクトとは

最後に私のライフワークである未来楽器プロジェクトについてお話をさせて頂ます。

未来楽器パネルタイプテスト中

未来楽器パネルタイプテスト中

未来楽器テーブルトップ演奏中

Projection Demo (Castalian) MiraiGakki from nucode on Vimeo.

未来楽器プロジェクトは2008年から始めた私の個人プロジェクトです。ゲーム業界にいたころから⁠音・映像・テキストなどの情報を演奏(プレイ)する⁠というのが私の核となるコンセプトでした。今考えると⁠ゲーム⁠というより⁠楽器⁠が作りたかったのだと思います。

未来楽器の基本アイデア自体は2000年ぐらいに考えていたことなので,おそらく当時の同僚が見れば「まだやっていたのか!」と驚くと思いますが,ようやく実現できる時代になったのかもしれません。実際にモノを見て頂くのが一番わかりやすいので,ぜひ動画で御覧下さい。キーワード「未来楽器」で検索です。

■未来楽器とは何か(定義)

AR,タッチスクリーンなどの「新しい技術」「ネット上の映像・音・テキスト・・」「モノのように操作=演奏」することができるデバイスやアプリを「未来楽器」と呼ぶ。

未来楽器自体は,その時代時代のテクノロジーに合わせカタチを変え進化していきます。2009年度の未来楽器は,自作のマルチタッチ環境(タッチパネルやプロジェクション)とActionScript3で書かれたアプリを使って,ネット上の音や動画を演奏するものです。

「もうね,重い機材もレコードも持たずに体一つでクラブに行ってプレイできるよね……。YouTubeやVimeoに素材あげておけばさ」

(あるDJとVJ,Twitterの会話より)

未来楽器=情報を演奏する

従来の楽器が演奏する「音」を未来楽器ではすべての情報にまで拡大しリアルタイムに編集する行為を「演奏」と呼んでいます。構造を直感的に把握し,リアルタイムに再構成できる,⁠演奏できる楽譜」未来楽器ではそんな可能性を探っています。

テクノロジーの進歩が粘土をこねるような操作やリアルタイムな情報構造の再構成を可能にしてくれるでしょう。それが,動画・音・テキストを使ったライブ演奏の新しい形態なのかもしれません。

著者プロフィール

中井ナオト(なかいなおと)

元ゲームディレクター。代表作Beat Planet Music。1995年ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。サウンドクリエイターとしてポポロクロイス物語,PS版攻殻機動隊のサウンドディレクションほか。ディレクター兼プランナーとしてBeatPlanetMusic,TVDJなどを企画。2003年ゲーム業界を離れモバイルサービスのプロデュース,KDDI関連会社勤務を経て現在フリー。