インターネット広告とテクノロジーの行方

第3回インターネット広告のビジネスモデル(後編)

前編ではインターネット広告費の推移とインターネット広告の種類について説明しました。

後編では新しい広告の種類と課金モデルを考察します。

新しいインターネット広告の種類

つぎは最近注目されている新しいインターネット広告の種類や媒体について見ていきましょう。

動画配信・インターネットCMADSL,FTTHの普及により、動画(映像や音声を使用)広告配信が増えています。 GyaoやYahoo!動画に代表される動画配信サービスに挿入される広告モデルです。

広告配信の手法としては

  • 1.動画配信前にCMを表示(Gyao)
  • 2.動画配信後にCMを表示(REVER)

があります。

Yahoo!Japanではメガバナーと呼ばれるFlashで作成された動画を配信しています。

テレビCMと同様の動画やストーリー構成で数回に分けて配信する新しいタイプの動画配信も出てきているようです。

ユーチューブ社の広告戦略

米ユーチューブ社は「ブランドチャンネル」⁠参加型動画広告(Participatory Video Ads:PVA⁠⁠」を広告戦略として展開しています。

ブランドチャンネルとは、広告主が「ブランド」専門の広告チャンネルをYouTubeに開設・動画を公開できるというものです。

PVAは、ユーチューブのすべてのコミュニティに対応した動画広告を公開できます。 視聴者は動画広告に対して、通常の動画と同じように共有、サイトへの動画の埋め込み、お気に入りへの登録を行うことができます。

これにより、ユーチューブ社は広告主にとっても視聴者にとっても受け入れられる広告プラットフォームを目指すとしています。

TV番組のインターネット配信

これまでTV番組のネットでの配信については複雑な著作権等の要因で普及には至っていません。

番組がネットで配信する手続きが簡素化され、普及してくると、ネット広告市場はさらに成長していくと思われます。そうなるまでにはまだいくつかハードルがあるようですが、NHKオンデマンドで始まったようにこれから番組配信が広がっていく可能性があります。どうなるか注目です。

ブログ・SNS

広告媒体としてブログ・SNSが注目されています。

ブログ・SNSは広告出稿場所として捉えると、数やスペースが新しい記事・話題・コミュニティの数分だけあると見ることができます。 広告の表示枠(出稿先)に限りがないといった点も魅力的です。

また、ブログ・SNSは興味のある人が閲覧しているわけですから、この時点である程度ターゲティングされている可能性が高いといえます。

したがって、一般的な広告枠へ出稿するよりも、広告効果が高いと思われます。企業が独自にブログ・SNSサイトを構築する例も増えてきました。 よく取り上げられる例としては日産自動車のTIDA BLOGがあります。

不動産系ではブログ・SNSサイトを構築して、生活に関連する情報サイトとして顧客とのコミュニケーションをとるためのツールとして活用している事例が増えてきています。このような企業ブログ・SNSサイトは広告というよりも、顧客とのコミュニケーションツールとしての意味合いが強いのですが、マーケティングという観点では自社の広告媒体のひとつとして捉えることができるでしょう。

Facebook、ウイキペディアも今後は広告を収益源としてサービスを拡大すると言われています。

このようなWeb2.0的な集合知を生かしたウエブサイトやコミュニティは無限に広告枠を生み出す新たな出稿場所として考えることができます。

行動ターゲティング広告

利用者が閲覧したウエブサイトのページの履歴から趣味・嗜好を判断して、次回以降の訪問時に関心のある広告を表示する手法です。 どの広告を配信するのかを決定する要因は事業者やサービスの種類によって異なります。

よく挙げられる例は、車に関連するサイトを閲覧した利用者に対しては再訪問時に車の広告を配信するという手法です。

すでに運用を開始しているYahoo!JapanやNECビッググローブ社によると、行動ターゲティング広告は一般のバナー広告と比べると1.2倍~4倍のクリック率が見込めるとのことです。

行動ターゲティング広告の手法はこれから色々なバリエーションが増えていくと思われます。 特長として、媒体側からすると在庫を売り切ることができる、広告主からみると利用者をターゲティングできる、利用者からみると嗜好にあった広告が表示されるので探しているものが合致する可能性がある、といった点でこれから普及していく可能性が高いと思われます。

この特長は検索連動型やコンテンツ連動型と類似しており、今後は検索連動型、コンテンツ連動型、行動ターゲティング広告はお互いに機能を取り込みながらしながら大きく成長すると思われます。

その他の広告

ゲーム内広告

ゲーム利用者の仮想空間内は企業にとっては新しい広告媒体の出現とみなすことが出来るようです。

ゲーム機のインターネット通信機能も進化してきています。Wii(ウィー)にはブラウザ機能(Opera)が搭載されています。 ゲーム内の看板に広告をターゲティングして、出稿・表示させるなど新しい取り組みが始まってきています。

アプリケーション内広告

これまでインターネットへのアクセス手段は主にブラウザ(携帯端末でもブラウザが動作している)でしたが、デスクトップ上で動作するアプリケーションがインターネット通信を介して動作する「ガジェット」と呼ぶ小さいアプリケーション開発が盛んになってきています。 Adobe社は新しいアプリケーション実行・開発環境「Apollo」を発表しました。

Apolloはクライアントベースのソフトウェアで、デスクトップ上でインターネット接続可能なFlashアプリケーションを動作させることができます。

これまでもサイドバー(ツールバー)に常駐するタイプのアプリケーションもありましたが、Windows VistaやApolloの登場もあって、ガジェット型のアプリケーションが普及するきざしがあります。利用者にとってはわざわざブラウザを起動することなく(またはアプリケーション起動アイコンをクリックすることなく⁠⁠、情報の取得ができます。このアプリケーションの画面内(オーバーレイタイプも考えられます)に広告を配信する手法もこれから展開されそうです。

RSS広告今ではほとんどのポータル・ニュースサイトではRSSを配信しています。RSS広告はRSS内に広告を埋め込んで表示させる広告です。 RSSの記事内容と連動した広告を配信する点が特徴でRSSリーダーに表示するコンテンツ連動型広告ということもできるでしょう。

IE7の登場で期待されたRSSですが、まだこれからといった感があります。RSS自体はセマンティックウエブとあいまって、検索エンジンの用途を変える可能性を秘めているだけにこれからが期待されます。

iPod/iPhoneアップル社のiPodでは「ポッドキャスティング広告」を配信することができます。 ポッドキャストの配信の仕組みはRSSをベースにしており、音声や画像を配信することができます。

この機能を応用したのが「ポッドキャスティング広告」です。アップル社は携帯端末にMac OS + iPodを搭載した「iPhone」を発表しており、そこから新しい広告の仕組みも生まれてくるかもしれません。

インターネット広告のモデル

これまで説明してきたインターネット広告の課金モデルについて見ていきましょう。

課金モデル現在のインターネット広告の課金モデルを以下にまとめました

インターネット広告の課金モデル(表)
課金モデル 内容 一般的な広告の種類
インプレッション保障型 広告の表示(露出)回数を基に課金
通常は一定期間内のインプレッション数を保証する形態をとる
バナーに代表される固定型広告
期間型 広告の掲載期間で課金 バナーに代表される固定型広告
クリック課金型 広告がクリックされた回数を基に課金 検索運動型広告
コンテンツ運動型広告
成果報酬型 成果があった場合に課金 アフェリエイト広告
インターネット広告の課金モデル(図)
インターネット広告の課金モデル(図)

インプレッション保証型

インプレッション保証型は、広告の表示(インプレッション)の回数を基に課金するモデルです。

通常は期間とインプレッション数を保証する広告枠に対して料金を支払うモデルが多いようです。

広告媒体サイトの掲載場所(ページ)や広告の形態,大きさ(サイズ)で料金が決まります(バナーの場合レギュラー、バッジ、レクタングル、スカイクレーパーなど⁠⁠。ただし、インプレッションの回数からはユーザが実際にその広告を見たか(視界には入っていると思われますが。。。)どうかはわかりません。

期間型

一定の期間に必ず特定の広告媒体サイトの場所に広告が表示されるモデルです。広告媒体サイトのページや広告の形態や大きさ(サイズ)で料金が決まります。ただし、これもインプレッション保証型と同様にユーザが実際にその広告を見たかどうかはわかりません。

クリック課金型

ユーザが広告をクリックして、広告主が指定したURLへ画面表示が移動した回数によって課金されます。 インプレッション数は料金には影響しません。したがって広告主側から見ると、実際に広告に反応した回数分が課金の対象となりますので、

費用対効果の高いモデルと言えます。クリック課金型には保証する料金(回数)に達するまで広告を掲載できる「クリック保証型」もあります。

クリック課金型の代表的なモデルが「検索連動型広告」です。

成果報酬型

ユーザが広告をクリックした後、広告主が指定する成果があった回数に対して課金するモデルです。

成果は商品購入や会員登録・資料請求・問い合わせなど広告主が決定します。クリック課金型の代表的なモデルが「アフィリエイト広告」です。

インプレッション課金、期間課金型はテレビCMやこれまでの雑誌・看板広告と類似していますが、インターネット広告の場合は表示回数(露出回数)と見た(と思われる)ユーザ数が把握できるといった点が特長です。 そして、インターネットならではの課金方式がクリック課金や成果報酬型でしょう。

これまでは難しかった広告効果が、テレビの視聴率調査と違い、インターネットへ誘導すれば、反応および効果を測定できるため、費用対効果を算出することができます。

今後のインターネット広告のモデルの傾向としてはクリック課金や成果報酬型を取り入れた課金モデルが増える傾向にあるようです。 これは広告主にとっては喜ばしいことですが、一方で広告システムを運営する事業者にとっては、トラフィックを支えるための収入を確保する必要があります。

インターネット広告はこれからは「⁠⁠効果的な)広告枠の拡大⁠⁠、⁠クリック率の向上⁠⁠、⁠成果率の向上」⁠広告成果の測定」の方向のためのテクノロジーやサービス開発が一層進むと思われます。

今後の注目

デジタルサイネージ

電車・駅や公共施設や店舗などに設置したディスプレイに映像や情報を表示する仕組みを「デジタルサイネージ」と呼びます。

デジタルサイネージは、映像表現という強い武器で高い訴求力を持っています。 さらに顔認識判定の技術が進化して、視聴する人の属性(性別・年代)を判定して、属性・時間・場所にあわせたコンテンツが表示できる技術が開発されてきています。

視聴者に合わせて表示映像(広告)を変更して、視聴効果を分析するといったことも 可能になってきています。

この技術はそんなに遠くない将来にネット技術と融合する可能性があります。

クラウド・コンピューティング

2008年のIT業界のバズワードは「クラウド」でした。

ASP,Saas,Paasの延長としてクラウドコンピューティングが浸透してきています。

ほとんどのアプリケーション(企業、消費者ともに)がブラウザ(およびブラウザと同機能の端末)を通じて 実行され、実行場所はどこかを意識しないようになってくると、ますます、インターネットを利用した広告配信技術の重要性が高まると思われます。

企業のメディア化

企業サイトが媒体へ広告枠として企業サイトが自社を媒体化する動きが出てきています。

すでに大手銀行サイトや、企業グループ内のサイトでお互いのサービスや商品の広告を掲載しています。

インターネット広告はポータルや情報サイト、検索エンジンだけではなく、いろいろなところで活発化していくようです。

今後はクロスメディアの浸透や新しい情報端末、広告媒体、プラットフォームの登場で、新しい広告課金モデルが出現するかもしれません。

次回はインターネット広告の配信と測定の仕組みを取り上げたいと思います。

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