人工知能で明日のビジネスは変わるのか?

第8回 人工知能ブームの見分け方

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ビジネスに利用できる人工知能の本音と建前

この連載は,ビジネスに利用できる人工知能というテーマで進めています。つまりお金になる人工知能ということですが,純粋な学術的取り組みとビジネスではやはりいろいろと違う点があります。

一番の違いは,本音と建前があるということです。

純粋に学術的なものであれば,ありのままをそのまま見てもらえば良いわけですが,ビジネスとなるとそうではないケースはままあります。もちろん,⁠純粋な」学術的ではない,権謀術数が関わるような学術的取り組みではまた話は違いますが,権謀術数が関わる時点でそれはビジネスのようなものです笑。

問題はこうした本質と建前の違いは,当事者かもしくは詳しい人間でないとなかなか見分けがつかないということです。

一般にこうした情報はメディアを通じて目にしますが,メディア自体がこういう最先端の複雑な状況は正しく把握できることが少ないので,そのフィルターを通した情報から正確なところを把握するのは相当困難です。

もっと言えば,情報発信側もメディアによる変換,すなわちフィルタを利用するので,こうした状況に拍車がかかります。利用するというのは「こんな建前を発表しても通用しない」のではなく「こんな建前でもそのまま取り上げてもらえるだろう(ラッキー)⁠と思うということです。

人工知能関連ニュースの分別方法

こうした違いを見分けるのにはどうすれば良いのでしょうか。

いくつか方法はありますが,まずその1つは「取り組み自体のニュースは無視する」というものです。通常であれば人工知能に限らず,記事などになる際は「○○によって●●という成果が」というように成果が評価されて報道されるものです。

ところがブームというかバズワードに関しては「○○を開始」という取り組み自体が記事になります。そして大概,その成果が後追いで報道されることはありません。

これがたとえば,法案の成立とかオリンピックの設備とか,取り組み自体に報道する価値があり,また確実に結果についての後追い報道もされるのであれば問題ないのですが,ブームになっているテーマで取り組みだけを取り上げるのは,社会面で街のおいしいパンやさんを取り上げるのと同じようなものです。ちょっと例えが変ですが。

もう1つは,⁠母数が大きい記事は無視する」というものです。もちろん人工知能自体バズワードなので,あまり内容のない記事が乱発されていますが,その中でも偏りがあったりします。

たとえばここ最近でいえばそれは「チャットボット」でしょう。とりあえずしばらくは,チャットボットに関する報道はスルーしておくのが無難です。評価すべき成果が出てくれば,それはそれで内容を伴う記事として出てきます。

そもそも人工知能に関して取り組むべきジャンルと,取り組むべきではないということではないですが巨人にまかせておいたほうがいいジャンルというのは存在します。なお,上記の例外として「巨人の取り組み」はスルーしなくても良いと思います。たとえばGoogleとかFacebookとかですね。

今まさに,筆者が執筆中に配信されてきた記事で,ザッカーバーグがアイアンマンのジャービスを目指すというものがありました。こういうのは,トレンドとして見ておくのは良いと思います。ただ,その記事も,タイトルに「成果」とあったのですが,内容をよく読むとどこにも成果が書いてない,途中経過報告だったのがちょっとアレですが(笑)⁠ 途中経過は成果とは言わないでしょう。

チャットボットや音声認識など,データの母数そのものが成果に結びつくようなジャンルは巨人にまかせておくほうが良いと筆者は思います。スタートアップやベンチャーは,データの母数よりもテクノロジーによる成果を追求するほうが良いのではないでしょうか。

ちょっとその違いがわかりづらいかもしれないですが,チャットボットや音声認識を各社(それも巨人ではない)が競って開発しても,あまり意味がありません。

「そんなことはない!」という意見もきっとあるでしょうが,それはわかっていないかポジショントークかのどちらかである可能性が高いと言えます。たとえば10年前,SNSブームが起こってSNSが乱立しましたが,SNSというのはその性質上,規模が大きいところに集約されていくものです。

もちろんFacebookにしても(mixiにしても)⁠当初は小さかったわけですから,誰もチャレンジしないと巨人が生まれようがないのはそれはそれで事実です。でもそういう取り組みは全体の99.9999%が失敗するということでもあります(数値は適当です)⁠

成果は成功したものしか報道されない

人工知能に限らずですが,成果というものは基本的に成功しか報道されません。

失敗もネタとしておもしろければ報道されますが,失敗の99.9999%は報道されないでしょう(数値は適当です)⁠ということは,母数が意味を持つブームにあとから乗る場合「成功の可能性は恐ろしく低いが」という前提を持つことは重要です。

でも取り組みの報道では,⁠このジャンルは母数が重要なのでこの取り組みの成功の可能性は恐ろしく低いが」というコンテキストは無視されます(笑)⁠ いや笑いごとではないのですが。

いまブームになっている人工知能に関して言うと,深層学習とか強化学習といったデータの母数や処理の数が勝負を分けるものが多いといえます。ということは,こうしたブームにあとから乗っても,あまり成算はないだろうということです。

音声認識やチャットボットについては,かなりの確率でいくつかの巨大なプラットフォームに集約されていくことでしょう。にも関わらず成果ではなくて取り組みのニュースをいちいち気にしていてもしょうがありません。

発表の後に続報が出ているかどうかで判断する

おもしろいことに,ブームにあとからのる企業は過去にも同じことをしていることが多いので,過去の違う取り組みの発表を見てみるのも,その報道が本質か建前かを見分ける判断材料になったりもします。

2012年にはビッグデータへの取り組み,2014年にはオムニチャネルへの取り組み,2016年には人工知能への取り組みを発表している企業はたくさんあると思います。

そうした企業がもし,ビッグデータやオムニチャネルの成果に関する後追いの発表をしていなければ,人工知能についても成果が出てこない可能性は高いということです。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。ライブドア(現LINE)のデータホテルを構築・運営の後,海外にてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 株式会社ゼロスタート)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO-ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

株式会社ゼロスタート:https://zero-start.jp/

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