著作権は消えても権利は残る?
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長年にわたり国民的人気を誇っているキャラクター
「M」 の著作権が保護期間満了によって消滅した, というニュースを見かけたY社宣伝部所属のCさんは, 「M」 を一部改変した自社オリジナルキャラクターを新たに製作することを思いつきました。 しかし,
広告代理店Z社に打診したところ, 同社の担当者は, 「○○○ (Mの創作者の著作権を管理するプロダクション) が怒るからやめておいた方がいいですよ」 と難色を示しました。 法務部に相談に来たCさんは, 「『パブリックドメイン』 になっている著作物を使うのがなぜいけないんだ, 代理店を替えてでもこの話を進めたい」 と憤っているのですが…。
一般的な解説書等では,
しかし,
まず,
著作物を公衆に提供し,
又は提示する者は, その著作物の著作者が存しなくなった後においても, 著作者が存しているとしたならばその著作者人格権の侵害となるべき行為をしてはならない。ただし, その行為の性質及び程度, 社会的事情の変動その他によりその行為が当該著作者の意を害しないと認められる場合は, この限りでない。
第60条
上の条文を見る限り,
違反した場合に差し止め等を行うことができる請求権者が限られていること
また,
例えば,
個人が趣味として楽しむ場合であればともかく,
- ※
- 商標権は,
権利者が一定期間, 営業上の 「標識」 として特定の商標を使用することにより付加される無形のブランドや信用を保護する権利ですから, 権利者が使用し続ける間は無制限に更新し続けることが可能です。また, 著作物として誰もが利用できる状態にあるとしても, それを用いることによって, 第三者が手がけている事業との混同が生じてしまうのであれば, 実質的にも, 使用が制約されるのはやむを得ない, ということになると思われます。
なお,
デジタル化が進んだ現代では,
こうしてみてくると,
「著作権」
- ※
- なお,
著作権の保護期間が満了した 「ピーターラビット」 を商品のデザインとして使っていた会社が, 「パブリックドメインになった後も, 従来の著作権者が依然として著作権表示を付して著作物を管理しているため, 自社の商品の小売店での取扱いが拒否される等の不利益を被った」 として提訴した事件がありました。確かに, 「パブリックドメイン」 になっているかどうかを当の権利者以外の一般人 (事業者) が知ることは困難ですから, 「著作権が切れているにもかかわらず 『著作権表示』 (©マーク) を付し続けるなんてとんでもない」 という当事者の思いは良く分かります。 - しかし,
結果として, 裁判所は 「元・ 著作権者側に著作権に基づく差止請求権がないこと」 こそ確認したものの, それ以外の主張・ 請求 (「著作権表示」 が品質誤認表示にあたる等) を認めておらず (大阪高裁平成19年10月2日), このような状況に直面した会社が “人々の誤解” にどう対処すべきか, という課題は, 依然として残されたままとなっています。
保護期間をめぐる制度設計に求められるもの
さて,
これはあくまで,
「『パブリックドメイン』
という意見が出てきても不思議ではありませんし,
ただ,
仮に今後,