読むウェブ ~本とインタラクション

第10回 UGC(User-Generated Content)と書物(1)

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

仮想世界の出来事を綴るブログ

YouTubeやFlickrなどの共有サービスを見ると,Second Lifeでおこなわれたイベントや記者会見,コンサートなどのレポートがアップされている。その多くは仮想世界の住人としての目線で記録されており,リアル世界と交差する部分が少ない。仮想世界の生活を綴る日記もある。実生活と明確に分けているのが興味深いところ。国内でも同様のコミュニティが登場している。最近の事例を紹介しておこう。

Second Lifeに特化したブログの
ポータルサイトSLMaMe(ソラマメ)

Second Lifeに特化したブログのポータルサイト「SLMaMe(ソラマメ)」

SLMame(ソラマメ)は,Second Life専用のブログポータルサイトである。SLMameとは,Second Life Map and Memoryの略。今年の3月,株式会社メタバーズと株式会社シーポイント,ジェイ・ライン株式会社が共同でオープンした。利用者はSecond Life内で体験したことや気に入ったスポット,ショッピングの感想などを書き,他の利用者と情報を共有する。訪れた場所のスナップショットを掲載したり,地図をブログに表示させることができ,Second Lifeで開催されるイベントや発表会などの情報はカレンダー機能で知ることができる。

その他,Second Lifeに関連したサービスを2つ紹介する。まずは,Second Lifeの専門マガジンとして公開されているMagSL.NET(マグスル)だ。最新ニュースやイベント情報の他,海外SL事情,リンデンブログ和訳などの情報もあり,参考になる。日本人居住区の分譲やリンデンドルの売買などをおこなっている株式会社ジップサービスが運営している。土地をレンタルしたい人はチェックしておくとよいだろう。

セカンドライフ日本語マガジンMagSL.NET(マグスル)⁠左図⁠⁠。
国内最大のセカンドライフ専用SNSSLnavi⁠右図)

セカンドライフ日本語マガジン「MagSL.NET(マグスル)」 国内最大のセカンドライフ専用SNS「SLnavi」

SLnaviは,Second Life専用のSNSである。6月現在で会員数が8,200名を超えており,日本では最大のコミュニティとなっている。⁠mixi(ミクシィ⁠⁠」のフォーマットに近いものを採用しているため,SNSに慣れている人はすぐに活用できる。インワールド・イベント(SL内)やリアル・イベント(オフ会⁠⁠,お店,ファッション,観光,企業,Second Life障害情報などのコミュニティがある。

仮想空間のオンラインイベントと他メディアとの連携が重要

Second Lifeに関連したブログやSNSを見ると,アバターファッションについての情報が多いことに気付く。コミュニティなどで頻繁にやり取りされているのは,アバターを着飾る衣服やアクセサリー,靴,小道具,そしてヘアースタイルやスキン,タトゥーなどの話題である。アバター(avatar)というのは,利用者の分身,化身のこと。一見すると着せ替え遊びのようだが,仮想世界のサービスにおいて欠くことのできない重要な要素だ。⁠オンラインイベント(仮想世界でおこなわれるイベント⁠⁠」が他メディアにはない新しい機能として注目されており,アバターはイベントのインターフェイスとして必須のものとなっている。

アバターはオンラインイベントへの参加動機を高め,仮想世界の魅力を創出する重要な要素として捉える必要がある

アバターはオンラインイベントへの参加動機を高め,仮想世界の魅力を創出する重要な要素として捉える必要がある

Second Lifeで開催される数々のオンラインイベントを見て,人工現実感がビジネスになると感じた人は多い。SNSやブログとの連携だけではなく,テレビ(バラエティ番組内で仮想世界との中継など)やラジオといったマスメディアとのタイアップも注目されている。特に国内では著名人(タレント,スポーツ選手など)の使い方が重要になるだろう。また,AmazonやeBayとの強力な連携を持つことで相互テレポートによる新たな相乗効果を狙えるかもしれない。

いずれにしても,オンラインゲームのように仮想空間サービス内だけで完結するのではなく,他メディアとの強い連携が重要になってくる。最も機能しやすいのがオンラインイベントだといえる。Second Lifeに参入する企業の多くは,自社ビルを建設するなど環境整備を優先しているが,今後はいかに訴求力の高いオンラインイベントを仕掛けることができるかを競うことになる。現在は,1つのシムにおよそ50人が限界という技術的な問題があるため,リアルな場に中継したり,プロモーション映像として流用するなど,さまざまな工夫が必要だが,実証実験を兼ねていると考えれば得ることの方が大きい。

前述したとおり,今までは大規模な実証実験が困難だった。国内でもVR(Virtual Reality:バーチャルリアリティ)関連の研究施設でさまざまな実証実験が進められているが,設備にかかる費用や時間,制約などで一般ユーザーが参加できるような仮想世界の構築は難しい。

Second Lifeの登録者は597万人(4月末現在⁠⁠,仮想通貨取引額は月間29億円(2月時点)である。また,これから増えてくる可能性の高い仮想世界の犯罪(マネーロンダリング,詐欺,非合法な施設運営,著作権侵害など)にどう対処していくか等,あらゆる社会シミュレーションが可能な場になっている。まずは小規模かつ複合的なタイアップを積極的におこない,仮想世界における商用ノウハウを蓄積していくことが重要ではないだろうか。


次回は,仮想世界の図書館,および書物に絞って書いていきたい。雑誌のデジタル化が進むと,今まで不可能だった表現や使い方が実現する。既存フォーマットを模したページ画面をディスプレイで読むだけではない,まったく新しい本の登場について取り上げてみたいと思う。

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書