デジタルブランドマネジメント

第2回ブランドがソーシャルな価値を高めるには

むやみにソーシャルメディアでの情報発信を行なっても、どれだけのバズを起こしても、そのブランドの情報がクチコミとして共有されることはありません。

Vivaldi Partnersのレポート、ソーシャル・カレンシーには、ブランドが人によって共有されるためには「ソーシャルな価値」が必要であり、今や強いブランドを創るためにはこのソーシャルな価値を養うことが不可欠である、と書かれています。

これはソーシャルな価値を持たないブランドが突然マーケティング予算を持って、ソーシャルメディアへの取り組みを開始したからと言って、会話に参加することはできないことを意味します。多くのブランドがソーシャルメディアでのROIを感じることができていないのも、このような理由があるのではないでしょうか。

ブランドのソーシャルな価値を高めるレバー(てこ)は6つ存在し、ブランドによって活用すべきものが異なります。ソーシャルな価値はすべてのブランドに同様な機会を与えるわけではないのです。

  • ① アフィリエーション:顧客はコミュニティへの強い帰属意識を持っているか?
  • ② アイデンティティ:顧客の自己表現に使われているか?
  • ③ インフォメーション:提供する情報の量や質を通じて選ばれているか?
  • ④ カンバセーション:自然な会話のトピックになっているか?
  • ⑤ ユーティリティ:顧客はお互いと有益な関係を築くことができているか?
  • ⑥ アドボカシー:顧客によって勧められているか?
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ブランドに適したレバーを見つけることができれば、ソーシャルメディアやデジタルエンゲージメントの活用目的が見えてきます。コミュニティを作るべきなのか、顧客にブランドを使った自己表現をしてもらうべきなのか、より多くの情報を提供すべきなのか、会話を刺激するべきなのか、など、活用すべきチャネルや実施すべき施策の内容も決まってきます。

レポートには大きなバズを起こしたにも関わらず、ソーシャルな価値はファストフード業界最低だったバーガーキングや、顧客満足度が非常に高いにも関わらず、話題になりにくいカテゴリーでソーシャル価値の獲得に失敗したジレットなどのスタディが紹介されています。ブランドに適したレバーを正しく理解し、活用できなければ、その価値の創造や維持は非常に難しいのです。

解りやすい例として、アップルは非常にソーシャル価値の高いブランドですが、積極的にソーシャルメディアマーケティングに投資しているわけではありません。顧客の日常に大きな変化を与える商品を提供し続けてきた結果、ブランドを通じて人はつながり、自らを表現し、多くの情報を積極的に得ました。絶えず会話のトピックになり続け、顧客同士が有益な関係を築き、満足した商品を勧め合っています。ブランドへの投資を続けてきたからこそ、自然と情報が共有されるようになったのだと思います。

このレポートはソーシャルメディアやデジタルでのエンゲージメントがこれからのブランドのあり方を変えている、と言っているようにも受け取れます。選ばれるためには、最も優れたブランドや、最も声が大きいブランドになる事よりも、一人一人の顧客との強い関連性を持ち、その生活や社会性の一部となり、顧客から「自分のブランド」と思われる存在になるべきではないでしょうか。

より、⁠自分のブランド」と感じてもらうために、デジタルには何ができるでしょうか?

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