EC-CUBE2.11.0をレビューする企画も今回が最後になります。
これまで、EC-CUBE2.11.0のソースコードや動作速度など、主に内部の状況をレビューしてきましたが、最後はちょっと視点を変えて、EC-CUBE2.11.0の開発プロジェクトをレビューしてみたいと思います。
というのも、本連載を通じて、EC-CUBEの事をいろいろと調べるうちに、開発もユニークな形で行われていると感じたからです。
EC-CUBEは誰が作っているのか
EC-CUBEの開発は、株式会社ロックオンが中心となって行っています。2.4までのバージョンでは、例外的に外部のコミッターがコミットする場合があったものの、ほとんどは株式会社ロックオンの関係者がコードを書きデバッグしていました。
ところが今回の2.11系の開発では、23名から630回のコード提供が行われ、非常に多くの外部コミッターが参加するようになりました。いったい何があったのでしょうか。
「EC-CUBE インテグレートパートナー」の存在
この原因を理解するには、まず「EC-CUBEインテグレートパートナー制度」について理解する必要があります。インテグレートパートナー(以下IP)は、EC-CUBEを使ったカスタマイズを行うことができるWeb制作会社のことで、これらを組織したパートナー制度がIP制度です。
IPになるには、いくつかの簡単な資格を満たし、半年で18,900円を支払う必要があります。手続きが完了すると、IP一覧のページに掲載が開始されます。半期に一度、EC-CUBEを使ったECサイトの構築実績や、EC-CUBEコミュニティへの貢献度に応じ、パートナーランクが決定されます。
上位のパートナーに認定されると「毎月相当数の引き合いがある(ゴールドパートナー)」とのことです。
これまで、このパートナーランクは、評価の基準が曖昧だったのですが、今回の4月分からポイント制となり、開発コミュニティでの利用者サポートや、開発へのソースコードの寄贈やバグ報告が、ポイントとして加算されるようになったのです(各活動のポイント数はこちら)。
またポイントには、種別ごとに上限が定められているため、上位のパートナーになるためには、特定の分野に偏らないことが大切です。
コミッターとしての活動が仕事に直結する仕掛け
もうお気づきだと思いますが、今回、EC-CUBE2.11.0の開発に参加したコミッターの多くはこのIPの中の人です。EC-CUBEのコミュニティが特徴的なのは、このようにOSSコミュニティへのコミットが、実際の仕事に直結する仕組みが、うまく構築されていることです。
多くのオープンソースが金銭面を表に出すことを嫌うのとは対照的に、EC-CUBEはオープンソースをビジネスの手段と割り切り、コミュニティの発展へコミットしてくれる人々にビジネスが環流する仕組みを作り上げています。この仕掛けをより発展させたことが、今回のEC-CUBE2.11が大きな改善を実現できた原因でしょう。
vなお、そうはいっても、まだまだ積極的に参加しているIPは少ない状況のようです(IP保有ポイント一覧)。これから、さらにEC案件を手がけていきたいWeb制作会社やSIerは、一度検討してみる価値があると思います。
さいごに
本連載では、4回にわたってEC-CUBEをとりあげ、そのパフォーマンスからビジネスモデルを検証してみました。国産のオープンソースとしては、数少ない「盛り上がっているオープンソース」であり、まだまだ発展の余地があると思います。今後の展開も非常に楽しみです。