前回は、ECにおける検索の重要性をお伝えしました。それをふまえて、今回は検索の進化の具体例について挙げてみます。
絶対に避けたい「0件ヒット」
ゼロスタートで検索エンジンをクライアントのECサイトに導入するときにまず着手するのが、0件ヒット対策です。これは、検索結果が0件になるというものです。
クライアントの方に「一番避けたいことはなんでしょうか」と聞くとだいたい一番に挙がるのが「商品があるのにないと思われること」です。たしかにそれはそうだと思います。実際には商品があるのにないと思われる、これほどの機会損失はありません。0件だけがとくにダメで1件だといいかというとそういうことでもありません。
もちろん探しているものだけが1つだけ出る、というのは0件ヒットより全然良いことではありますが、的外れなものが1つだけだとこれはやはりダメです。
0件はどんな状態でもダメ(出ているものが正解という可能性がゼロ)なので、とくに「0件ヒット」と呼びますが、ようは探しているものが(あるのに)出ないというのがダメということですね。
連載の第1回でも書いたように、0件ヒットというのは、リアルの店舗で言えば店員に尋ねたときに「ありません」とだけ言われるようなものです。しかも、実際には商品があるのに「ありません」と言われていることすらあるということです。
実際の店舗で「ありません」と言われて「そうか自分の聞き方が悪かったんだな。聞き方を変えてみよう」なんて思うことはなかなかありません。たまにはありますが。
それくらいECサイトの検索というのは、まだまだユーザフレンドリではないということです。
0件ヒットとは何か?
ここで0件ヒットとはなにか、についてもう少し考えてみましょう。
パターン1 | 実際に探している商品が存在しないので0件ヒットになる |
パターン2 | 実際には商品があるけど出てこないで0件ヒットになる |
まずこの2つに大別できます。そして1と2では対策の仕方が違います。それぞれについて見てみましょう。
1の場合には、そこから
パターン1a | 実際に探している商品はないけど代替になりうる商品がある |
パターン1b | 実際に探している商品はないけどたぶんすぐ入荷する |
パターン1c | 実際に探している商品の代替はなくすでに終売で入手の可能性がない |
という分類ができます。
もちろんこれら以外にもたくさんのケースがあります。
2の場合も、さらに細分化すると
パターン2a | ユーザーの検索がうまくない。商品名を間違えている、条件が厳しすぎるなど |
パターン2b | 検索エンジンの実装が悪い。ひらがなカタカナを開いていないなど |
などに分けられます。そして、こういった細分化ケースごとに対策は違うと言えます。
0件ヒット対策を考える
たとえばパターン1aだと、代替になりうる商品を検索結果として出してあげる、パターン1bだと入荷予定として検索結果に出してあげる、パターン2aだと条件をゆるめて出してあげる・キーワードの修正が推測できればそのキーワードの検索結果を出してあげる(もしかして検索)、パターン2bだと辞書登録を充実させる、などです。パターン1cですら、0件で出すよりは、売れ筋商品を出すことが良い場合があります。
また、パターン1aの場合、パターン1a用のロジックがあるかというとそれはなくて、キーワード毎や条件毎になにを代替候補にするかの最適解は違います。キーワードが同じでも在庫状況や売れ筋の状況、季節や過去の行動履歴によっても最適解は違います。
つまり、AさんとBさんで最適解が違うだけでなく、Aさんでも昨日と今日で最適解は違う可能性があるということです。
とくにチューニングをする余地が大きいのは、パターン1aやパターン2a、2bなどです。
繰り返しになりますが、こういった挙動というのはリアルの店舗の(気が利いた)店員であれば普通にやっていることです。
ECサイトにおける検索というのは、エンジニアリング的な挙動をするものではなく、マーケティング的な挙動をすべきもの、ということです。
0件ヒットを予防する
0件ヒットを防止するのは最初の一歩ですが、さらに進んで「0件ヒットを予防する」というのも重要です。
たとえばキーワード検索をして検索結果が出たあとに、絞り込み検索をするというのはECだとよくあることです。このとき、絞り込み項目の横に数字が出ているケースがあります。
これは「その項目で絞り込んだらその件数が結果として残る」というものです。この数字が出ていると、「その項目で絞り込んだら0件になる」ということが「絞り込む前に」ユーザーにわかるということになります。
「その項目で絞り込んだら0件」という項目を選択するユーザはまずいませんので、結果として0件ヒットを予防することが可能になります。
またサジェストも同じような効果を発揮することがあります。キーワードの覚え方が曖昧な場合、たとえば前方一致でキーワード候補を出してもらえると、「ああそうそう」という感じでそれを選択すれば良いので、間違ったキーワードを入力して0件になるということを予防することができます。もちろんこれは最初の一文字から間違えてる場合はダメですが。
ここで挙げた絞り込み項目の(絞り込み後の)数字やサジェストは、ユーザに検索結果の先取りをして、0件ヒットになるような操作をそもそもしなくて済むような挙動です。
ECにおける検索では、0件ヒットに限らず「ユーザが結果にがっかりするような検索をさせない」ということは大変重要です。学術的な検索では「結果にがっかりすること」が意味を持つこともありますが、ECの場合はそういうことはまずありません。
0件ヒットについて考えてみるだけでも、ECサイトにおける検索というのは、いわゆる検索とは異なる性格を持つべきであるものだということが、わかるかと思います。
次回以降でも、具体的なECにおける検索のポイントについて、例を挙げながら考察していきたいと思います。