今回はECにおける検索のさらなる活用効果としてSEOや広告への活用について扱ってみます。
ECの売上
ECの売上を上げることを考えるとき、大きく分けてそれは
- サイトへの流入前
- サイトへの流入後
があります。
「サイト内」検索のキーワードは「サイト外」でも有効
SEOや広告は1、そしてサイト内検索は「サイト内」という名前のとおり、普通は2について活用されます。ところが検索は1、つまり「サイト外」にも貢献できる部分が結構あります。
たとえばわかりやすい例が人気キーワードです。
ECサイトで良く検索されるワードを集計して、その上位のワードをキーワードとしてGoogleにインデックスされるようにすると、サイト外のオーガニックな検索からの流入においてホットなキーワードをキャッチすることができるようになります。
「サイト内で検索されるキーワードはサイト外でも検索される」ことが多いです。
ましてや最近はGoogleのSSL化によってリファラがとれなくなってきているので、これまで以上にサイトへの流入(つまりサイト外)においても、サイト内検索の情報の活用が重要になってきています。
また、ネット広告についてもサイト内検索というのはとても有用な可能性を秘めています。最近はリターゲティング広告がかなり活発で、あちこちのサイトでたとえば楽天で見た商品が何度も何度も表示される、ということがあります。これはこれで有効なケースは多く、筆者としても単純接触効果によって悩んでいた商品を結局買ってしまったことが何度もあります。
ただ、商品によっては「その商品自体のリターゲティングが有効ではない」こともままあります。たとえばその一例が旅行です。
あるユーザが今週末に箱根で1人1万5,000円以下で泊まれる温泉宿という条件で検索したとします。たまたまそのときあまり空室がなくて、しいて言えば◯×旅館という場所がそのユーザの条件に最も適合したとします。ところが、そこまで条件がぴったりではないので、ユーザは閲覧だけして予約まではしなかった、ということはよくあるでしょう。
リターゲティング広告ならば、この旅館を広告としてそのユーザ向けに出し続けるということになります。しかし、このケースでは、リターゲティング広告ではコンバージョンする可能性はあまり高くありません。
ここで「同じ検索条件でより人気度の高い宿でキャンセルが出た」り、「直前割プランを出して条件にマッチしなかったのがマッチした宿」があったとしたらどうでしょうか。それらの宿でリターゲティング(厳密にはリターゲティングではないですが)したほうがコンバージョンが見込めるでしょう。
中古車や賃貸アパートでも同じことが言えそうです。
どちらも「その商品そのものに興味を持ってコンバージョンする」というよりは「条件に一番合うものでコンバージョンする」タイプのものだからです。
アパレルなどはあまりそういう要素はないので、商品そのものでリターゲティングするほうが良さそうです。
メタリターゲティング:「サイト内」検索の条件は「サイト外」広告にも有効
このように、「サイト内での検索条件」というのはサイト外の広告においても大変有効になる可能性があるのです。筆者はこれを「メタリターゲティング」と数年前から勝手に名前をつけて、セミナーや商談で説明をしていました。
検索条件リターゲティングはまだ実装されているケースはほとんど見たことがありませんが、今後かならず強力な広告ツールになっていくと考えています。
そもそも、今のネット広告におけるアドテクノロジーの進化はすさまじく、いまやRTB(Real-Time Bidding)はあたりまえになってきてます。どんどんダイナミック(動的という意味の)になる広告において、ECサイトでの検索条件というのは大変有効な情報になるのは、容易に想像できます。
現状は、RTBあるいはDMP(Data Management Platform)の情報としてサイト内検索条件というのはほとんど活用されていないと思いますが、まさにこれから大変有用な情報として扱われることでしょう。
ネットのアドテクノロジーはどんどんパーソナライズ化している
アドテクノロジーの歴史を見てみると、バナー→リスティング→リターゲティング→RTBと、どんどんパーソナライズの方向に向かっています。商売として考えればあたりまえのことではあります。
この連載では、ずっと「検索というのはコンシェルジュであり、ユーザにとっても一番の対話のインターフェース」ということについて述べてきました。コンシェルジュであれば、広告においてももっとも有用な情報をもっていてもおかしくありません。
ゼロスタートでもまさに今、サイト内検索とDMPの連携ソリューションの提供をしようとしているところです。
SEOにおける人気キーワードはユーザーをアノニマス的にとらえてサイト全体の動向をサイト外で活用する事例、リターゲティング広告についてはまさに前回述べたようなパーソナライズ効果をサイト外でも活用する事例という違いはありますが、いずれにしても「サイト内検索=ユーザプロファイリング」は、今後サイト内にかぎらずサイト外でもキーテクノロジーの1つとなっていくことでしょう。
究極的には、サイト外かサイト内かということはあまり重要ではなくなっていくことすら考えられます。そのうちサイト外の、たとえばニュースサイト上のパーツから購入すらできるようになってもおかしくありません。ECサイトを飛び出すコンシェルジュ、という感じですね。