光回線の普及などインターネットの高速化によって、ホームページ上で閲覧できるコンテンツのマルチメディア化が進んでいます。しかし、従来のホスティングサービスでは制約が多く、映像配信は難しい状況にありました。そのニーズを受けて、多くのホスティングサービスがストリーミングサーバの提供を開始しています。今回はストリーミングサーバについて紹介しましょう。
導入効果の大きいストリーミング配信
かつては文字情報だけだったホームページも、インターネット回線の高速化に連れて音声、音楽、映像と大容量コンテンツを掲載できるようになり、豊かな表現力を持つようになってきました。さらに最近では、YouTubeやニコニコ動画に代表されるような映像コンテンツが一般的になり、個人でストリーミング映像を手軽に公開できるUstreamも人気です。
映像コンテンツは表現力が高いため、さまざまな映像コンテンツをサイトに盛り込んでアピールすることができます。たとえば、自社の製品やサービスの利用方法を映像で紹介すればユーザの理解を促すことができ、問い合わせの手間を軽減できますし、イベントなどの模様を中継したり独自の CMを作成し公開するなど、オリジナルの映像を公開することで自社の製品やサービスの認知度を上げ、結果的に企業イメージの向上にも役立ちます。
さらに、講義などの学習コンテンツを有料で配信するなど、活用の仕方しだいで売上につなげていける可能性もあります。映像コンテンツの提供によって、アクセス数や滞在時間を増やすといった効果も見込めるでしょう。社内での教育用に映像コンテンツを活用するといったケースも増えています。このような理由から、自社サイトで公開したいというニーズも高まっているのです。
映像コンテンツを提供する際、これまでは映像ファイルをユーザにダウンロードしてもらうという方法が一般的でした。しかし、この方法ではユーザが一定時間待たなければならず、またファイルが丸ごとユーザのローカルマシンに保存されることになり、著作権などの問題も意識する必要がありました。
そこで現在では、映像の提供にストリーミング方式が採用されています。ダウンロード方式ではファイルのダウンロードが完了しないと再生できませんが、ストリーミング方式ではダウンロードしながら再生することができ、再生されたデータは順次破棄されていきます。ユーザのローカルマシンにデータが残らないため、著作権などを意識せずにさまざまな映像を配信できることは大きなメリットと言えるでしょう。
前述のYouTubeやUstreamなどの映像配信サービスでは、自社のページを作成することも可能ですが、やはり自社のサイトを訪問して欲しいもの。そのためには映像配信に対応したシステムの構築が必要になります。
ストリーミング配信には専用のシステムと回線が必要
映像をダウンロード方式で提供するのであれば、そのファイルを置いておくだけで済みます。しかし、ストリーミング方式で映像などを提供する場合には、専用のシステムが必要になります。ストリーミング方式はコンテンツの方針方法が従来と異なるため、ストリーミング用の設定がなされていない一般的なサーバでストリーミング方式で提供しようとしても、画質が著しく低下したり映像が途切れるといった問題が発生します。
また、映像コンテンツのストリーミング配信では、専用のシステムと回線が用意されていないとアクセス人数も数人に限定されてしまいます。ストリーミング方式では通信回線の帯域に十分な余裕が必要となるため、アクセスが集中した場合にも画質の低下や映像の寸断が発生し、サーバが落ちてしまうこともあります。専用のシステムと回線を用意することでストリーミング映像を容易に配信することができ、数十人から数千人規模のアクセスがあっても円滑な映像を提供できるのです。
ストリーミング配信を行う場合に、もうひとつ注意しなければならないのがファイル形式の問題です。ストリーミング配信に対応したファイル形式であることはもちろん必要ですが、配信サーバ側もファイル形式に対応した専用のシステムが必要です。現在、ストリーミング配信で一般的に使用されるファイル形式で、なおかつリアルタイムでのストリーミング(ライブ中継など)に対応するものには「Flash Video(FLV、SWF)」と「Windows Media(WMV、WMA)」が代表的ですが、両方の形式でストリーミング配信を行うのであれば、それぞれ対応した配信サーバが必要になります。このほかにも「QuickTime」や「RealVideo」などの形式があります。
このためストリーミング配信を行う際には、提供するファイル形式をあらかじめ決めておき、その形式に対応した配信サーバを使用する必要があります。
こういったストリーミング方式による映像配信のニーズに応え、多くのホスティングサービスでもストリーミング方式に特化した「ストリーミングサーバ」メニューが提供されるようになっています。ストリーミングサーバでは専用のシステムと回線が用意されており、一般的ホスティングサービスと同様にさまざまなメニューが選べます。従来から利用しているサービスと併用でき、現在公開しているページに HTMLタグを挿入することでストリーミング配信が可能になります。さらには、ビデオテープなどに録画された既存の映像を配信用の映像ファイルにエンコードしてくれるサービスや、映像コンテンツを作成するために必要な機材やスタッフを提供してくれるホスティングサービスもあります。
ストリーミングサーバ選びのポイント
それでは、ストリーミング配信を行う際のホスティング選びは、何をポイントにすればいいのでしょう。
まず、現在すでにホスティングサービスを利用しているのであれば、そのホスティング会社がストリーミングサーバサービスを提供しているかどうかを確認しましょう。同一のホスティング会社でホームページとストリーミング配信の両方を提供できれば、窓口が1ヵ所で済みますし、トラブルが発生した際の問題の切り分けも容易になります。また、費用も一本化できるので効率的な管理が可能になります。
利用しているホスティングサービスがストリーミングサーバに対応していない場合や、スペックなどが不十分な場合は、ストリーミング配信の部分だけ他のサービスを利用するか、丸ごと乗り換えるといった必要が出てきます。
なお、ストリーミング配信は簡単な HTMLの記述を追加することでページに読み込ませられるので、既存のサイトに組み込むことは比較的容易に行えます。
また、スペックもストリーミングサーバ選びの重要なポイントです。まずは、どのストリーミング配信のファイル形式に対応しているかを確認しましょう。「Flash Video」と「Windows Media」の双方に対応しているサービスが多くなっていますが、どちらか一方のみの対応である場合や「QuickTime」などで配信したいときには、配信したいファイルのフォーマットの変更などが可能かどうかを確認する必要があるでしょう。
ディスク容量と回線の太さも重要です。一般的に映像ファイルは他の形式に比べて、配信形式にかかわらず容量が大きくなります。これは、多くのサービスが 500MBから提供されていることでもわかります。増設が可能かどうかもチェックしておきましょう。
また回線については、想定する利用ユーザ数を元に算出します。大量のアクセスが予想される場合には、回線の太さのほか帯域を確保できるオプションが用意されているかどうかも判断基準となるでしょう。
このほか、ライブストリーミングとオンデマンド配信の双方に対応しているか、暗号化に対応しているか、動画変換機能があるか、ウェブサーバとの併用が可能かなどの条件に、初期費用、月額利用料を考慮してサービスを選んでいきます。
さらに重要なポイントとして、アクセス解析と保守が挙げられます。アクセス解析が利用できれば、映像コンテンツごとに傾向を分析できます。
また、映像配信はトラブルが発生しやすいため、保守やサポート体制が充実していることも非常に重要です。ウェブサイト構築と組み合わせたコンサルティングや、24時間 365日の電話サポートなどはチェックすべき項目と言えます。