Hosting Department:ホスティングを活用するための基礎知識

第27回「仮想化」メリットをホスティングサービス利用で最大化

レガシーシステムや休眠ハードウェアの有効活用から始まった仮想化は、そのメリットの高さから新規のシステムに適用するケースも増えてきました。また、仮想化技術はクラウドサービスを実現している技術でもあることから、ホスティングサービスにおいても仮想化を組み合わせたクラウドサービスの提供が一般的になっています。ここでは、仮想化とクラウドサービスにおけるメリットとデメリットを見ていきましょう。

メリットの高さから適用範囲の広がる「仮想化」

仮想化を実現するインフラが整ってきたことから、企業向けの仮想化ソリューションも数多く登場してきました。もちろん、シトリックスの「Xen App」やマイクロソフトの「Hyper-V⁠⁠、VMwareなどに代表される仮想化ベンダが開発した「仮想化プラットフォーム」とも呼べる技術が一般化し、製品に適用されてきたことも理由の1つと言えます。現在は、仮想サーバ、仮想デスクトップ、仮想ストレージがその中心になっています。

仮想サーバのメリット、デメリット

サーバを仮想化するソリューションでは、たとえばWebサーバを仮想化することで増設を容易に行えるようになります。これによってアクセスが急激に増えたときの対応もすばやく行うことができるなど、柔軟な運用が可能になります。仮想マシンはディスクイメージファイルのため容易にコピーが可能で、バックアップも簡単に行えることもメリットです。

その一方で、おもにネットワークインターフェースの部分に障害が起きやすくなります。大量の仮想マシンでのネットワークアクセスに対し、インターフェース部分がボトルネックになってしまうわけです。また、容易に仮想マシンを構築できることから仮想マシンが乱立してしまい、そのバックアップや構成管理がたいへんという声も聞かれます。

さらに、セキュリティの問題も存在します。たとえ仮想化されたサーバでも、見かけ上は物理的なサーバと変わりません。Webサーバやメールサーバ、データベースサーバのOSやその上で動作するアプリケーションの脆弱性は、仮想化環境でも同様に存在します。脆弱性対策のパッチ適用やバージョンアップの際にサーバを停める必要があることも、物理環境と同様の問題点となります。

仮想デスクトップのメリット、デメリット

デスクトップの仮想化では、仮想マシンを手軽に作成でき、また仮想マシンの実行環境は仮想化環境側にあるため、クライアントとなるパソコンのスペックを問いません。実際の動作は利用者のパソコン操作と、それによって変化したデスクトップ画面を転送するだけなので、低スペックのパソコンでも快適な操作が行え、新たにパソコンを購入する必要がなく、コストを大幅に抑えることができるのです。

ただし、仮想デスクトップ環境にもデメリットがあります。仮想サーバと同様にネットワークインターフェースのトラフィックの問題や、仮想マシンの脆弱性に対する攻撃が想定されるといった問題があります。出社と同時に社員が一斉に仮想デスクトップのセキュリティ対策ソフトを更新することでネットワーク帯域を圧迫してしまう「午前9時問題」など、セキュリティ対策のために可用性が失われる問題や、仮想化環境で使用するソフトウェアのライセンスといった問題もあります。

仮想ストレージのメリット、デメリット

ストレージの仮想化では、社内に散在しているハードディスクやNASなどを仮想化によって巨大な1つのストレージに見せかけ、自由な容量でフォルダを作成できるようにします。これにより、利用者ごとに複雑なアクセスパスがあったストレージを1つのアクセスパスで利用できるようになり、管理の手間を大幅に減らすことができます。また、ストレージを多く使用する部署とあまり使用しない部署でばらつきがあったストレージの使用量を平準化し、最適化できるといったメリットもあります。

仮想ストレージでのデメリットには、バックアップやファイル管理の問題があります。ストレージの構造は単純化できてもバックアップが作業に悪影響を及ぼしてしまいがちです。ただでさえマルチメディア化によってファイルそのものの容量が増大している上に、ストレージが使いやすくなったことでデータ量は増加する一方です。このため、バックアップに数日かかるというケースも珍しくなく、問題が発生しても復旧できる最新のデータが数日前のものになってしまいます。リアルタイムにデータが更新されるWebサービスにおいては非常に大きな問題と言えるでしょう。

仮想化の流れを受けてホスティングもクラウドベースに

仮想化の流れを受けて、ホスティングサービスでもクラウドを活用したメニューが一般的になっています。クラウドでのサービスとなるため、サーバなどのインフラをサービスとして提供する「IaaS(Infrastructure as a Service⁠⁠、プラットフォームをサービスとして提供する「PaaS(Platform as a Service⁠⁠、ハードウェアをサービスとして提供する「HaaS(Hardware as a Service⁠⁠、あるいはコンピューティング環境を丸ごとサービスとして提供する「CaaS(Computing as a Service⁠⁠」などの名称となっています。

進歩する仮想化技術

ただし、仮想化サービスを提供するホスティングサービスは従来も存在していました。現在のクラウドサービスとの大きな違いは仮想化技術の違いと言えます。従来から提供されていた「VPS(Virtual PrivateServer⁠⁠」は、仮想化技術にOpenVZやParallelsVirtuozzo Containersなどを使用していました。もっとも、稼働率や転送量などの面ではクラウドより優れている部分もあり、現在でもクラウドサービスという名称で提供している事業者もあります。

サービスとして提供される部分は多くの場合、設定や管理用のコンソール画面が用意されており、利用状況やトラフィック状況の確認、仮想マシンなどの設定変更、新規作成などをリアルタイムに行えるようになっています。これにより、たとえばWebサーバのアクセス状況の増加に合わせてサーバを増強したり、帯域を増やすといったことが可能になります。状況に合わせてリソースの増減が可能なため、つねに最適な構成で運用していくクラウドならではのメリットを享受できるわけです。

多様化が進む提供サービス

日本国内のサービスではデータセンタが国内にあり、管理画面やヘルプ画面なども日本語表記のため使いやすくなっています。また、きめ細かいサポートが用意されていることも大きなメリットと言えるでしょう。さらに、インフラまで提供することから従来のホスティング事業者だけでなく、ISPやキャリアの参入も目立っています。サーバやデスクトップ、ストレージにそれぞれ特化した仮想化サービスを提供する事業者も増えており、勢力図も大きく変わっていきそうな気配もあります。

このほか、仮想化に関連する独自のサービスを提供している事業者もあります。たとえば、現在利用している物理サーバから仮想環境への移行作業を支援する「仮想化移行サービス」では、仮想化診断や仮想化への移行調査、既存システムを仮想化環境で運用可能かどうかといった診断を行い、可能であれば移行支援も行います。また、クラウドホスティングの利用だけでなく、パッチ適用やバージョン管理など既存のメニューにない項目をアウトソースできる「個別運用サービス」を提供している事業者もあります。

ホスティング対象が広範になったことで、ホスティング事業者もパートナと手を組んだり協業することによってサービスを拡充しつつ、窓口を一本化するといった動きもあります。サービス選びのポイントが増えてきた反面、自社に最適なサービスが探せるようになりそうです。

ポイントは管理、監視、セキュリティ機能

とはいえ、やはり基本的な機能を重視すべきことは変わりません。とくに監視機能と事業継続に関する機能は重要です。仮想サーバや仮想デスクトップにおいては、トラフィック監視をモニタし、あらかじめ設定した数値を超えたときにアラートを受け取れるような機能はサービスの提供において重要ですし、クラウドならではのすばやい対応にもつながります。また、冗長化やディザスタリカバリも事業継続の面で非常に重要な要素となります。

外部からの不正アクセスや攻撃、内部での不正操作などを監視するセキュリティ機能も重要です。セキュリティ対策においては、認証機能やポリシ管理機能、レポート機能なども必要です。とくに仮想マシンへのセキュリティ対策は独自に行う必要があるので、ソリューションの導入などを検討する必要があります。

仮想化の流れを受けてホスティングもクラウドベースに

仮想ストレージにおいては、データの使用頻度や重要度をチェックできる仕組みがあるか、あるいは対策ソリューションが用意されていたり、導入することが可能かといったことも選定条件の1つになるでしょう。

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