一見すると、どの事業者も同じに見えてしまうホスティングサービス。だから、月額料金だけを見て決めてしまいがちです。けれども、ホスティングサービスを詳しく調べてみると、他にない特長を持ったものも少なくありません。ここでは、ニーズにマッチしたホスティングサービス選びを考えてみましょう。
ホスティングサービスで実現できること
数年前まで、個人だけでなく中小企業の多くも、インターネット接続プロバイダ(ISP)が提供するホームページスペースとメールアドレスを利用して、インターネットに向けて情報提供を行ってきました。ところが、2001年2月の汎用JPドメイン開始時期と前後して、データセンターのインターネットサーバを利用した共用ホスティングサービスが徐々に普及し始めます。共用ホスティングサービスは、ユーザー独自のドメインを代行取得し、数十~数百メガバイトのホームページ用ディスクスペース、メール用ディスクスペースを貸し出して、インターネットサーバを運用監視するというものです。
ホスティングサービスの第一の利点が、自社の独自ドメイン名を利用できることです。ISPのホームページスペースの場合、www.○○○.ne.jp/~△△△/ というアドレスが一般的ですが、こういうドメイン名はホームページに訪れる人にとって覚えにくいものでした。それがオリジナルのドメイン名では、自分の会社の名前、ショップの名前、ブランドの名前など、すでに取得されたもの以外なら自由に決めることができます。
また、メールアドレスが自由に設定できるのも大きな魅力です。たとえば、インターネットショップを運営している場合、問い合わせの内容、商品カテゴリーなどによって連絡先のメールアドレスを変更することも簡単です。ISPの場合、ISPのアカウントと同一のメールアドレスを1つ、追加でメールアドレスがほしい場合は追加料金を支払うようなケースがほとんどです。
ホスティングサービスのメールの場合、アカウントが複数作成できることは当たり前です。事業者によっては、アドレスを無制限に作成できる場合もあります。従業員にメールアドレスを支給したいが、インターネットサーバを構築・運用するスキルがないという中小企業ユーザーはもちろん、社内メールシステムのアウトソーシングを考えている企業にとっても、見逃せないホスティングの利点と言えるでしょう。
ホスティングサービスの特色を探そう
ホスティングサービスは、どの事業者も基本的に前述のようなサービスを提供しています。そのため、単純にディスク単価の安いサービスを選んでしまいがちです。
もちろん、会社紹介などの情報発信をメインとした静的コンテンツのホームページと、独自ドメイン名のメールアドレスさえ利用できればよい、というニーズは少なくありません。そういう場合は、料金重視のホスティングサービス選びでかまわないでしょう。
しかし、ホームページを使って「何か」をしたいという場合には、ホスティングサービスの詳細なサービス内容をチェックしたほうがよいでしょう。たとえば、オンラインショッピングサイトを開設したいという場合には、顧客が商品を購入しやすくするショッピングカート機能、商品を管理する帳票機能、カードやコンビニ払いなどの決済代行機能など、ショッピングサイトに特化したホスティングサービス事業者を選びます。また、どんな顧客がどこから訪問しているのか、しっかりとしたマーケティング活動を行いたい場合には、アクセスログ解析機能が用意されているホスティングサービスがお勧めです。
一方、ビジネスニーズとして利用する場合は、エクスプローラからフォルダを操作するようにサーバのファイルにアクセスできるWebDAV対応のホスティングサービスが便利です。ホスティングサービスの多くは、データを消失させないために、ストレージを冗長化構成にしています。大容量のデータを保管しておくことは困難ですが、中小企業や部門の外部ストレージとして、簡易的なディザスタリカバリを実現することも可能です。
メール関連はとくにチェック
ホスティングサービスを選ぶ場合、ディスクスペースの容量よりも、メール関連サービスの充実度のほうが重要です。最近のワープロやプレゼンテーションなどのビジネス文書のファイルサイズは大きくなる一方なので、受信可能なメール容量、1通あたりの添付ファイルサイズに制限がなく、大きなメールを自由にやりとりできるホスティングサービスであるかどうかは、企業にとってとても重要なことと言えるでしょう。
また、ホスティングサービスによっては、サーバを出入りするメールを監視するウイルス対策機能やspamメール対策機能、あるいはウイルス対策ソフトなどをクライアントのデスクトップに配布するサービスを提供している事業者もあります。ウイルス対策は、現在の企業システムにとって必須事項なので、クライアントPCのウイルス対策ソフトと組み合わせることで、よりセキュアなコンピュータ環境を構築できます。労働時間の無駄を作ると指摘されているspamメール対策は、企業の生産性を向上させる意味でも役に立つものです。
使い勝手の面では、Webブラウザ経由でどこからでもメールを閲覧、送信できるWebメールが用意されていると便利です。とくに、外出する社員を多く抱えたオフィスでは、重宝がられることでしょう。
企業内外のメンバーによるプロジェクトの連絡に役立つメーリングリスト、ショッピングサイトの顧客への最新情報提供に役立つメールマガジンなどを利用できる機能も、あるかどうかをチェックしておきます。すぐに使わない機能だとしても、のちのち役立つ場合があります。
料金よりも機能で選ぶ
最近のホスティングサービス事業者は、他社との差別化をさらに進めるために、ユニークな機能を提供し始めています。その代表が、掲示板や予定表のようなグループウェア機能の提供です。会社の中で社員の行動スケジュールをしっかり管理したい、社員同士でコミュニケーションやディスカッションの場を設けたい、というニーズのある企業では、ぜひ選びたい機能と言えるでしょう。
さらに、日記サイトが多機能・高機能化してビジネスツールとしても活用されるようになったblogが提供されているかどうかも、大きなポイントになるかもしれません。最近、多くのホスティングサービス事業者が採用している「Movable Type」は、ビジネス/パーソナルのニーズに問わず定番になっています。
こうしたビジネスシーンで活躍するさまざまなツールは、CGIプログラムなどを利用して、ユーザー自身が設置することも可能です。しかし、CGIプログラムをダウンロード、カスタマイズして使いこなすには、相当なスキルが要求されます。こうしたツールを導入しようと考えているのなら、あらかじめツールを用意したホスティングサービスを選びたいものです。
この他、専任管理者を置けない会社では、管理者だけでなく、ユーザー自身が特定の管理機能を利用できると便利です。中には、サイト全体の管理者とWeb管理者、ユーザーを区別し、それぞれに管理ツールを用意しているサービスもあります。
このように、ホスティングサービスが多様化するにつれ、単純に料金で選ぶのではなく、機能で選ぶことも重要になります。ところが、ホスティングサービス事業者の中には、機能面で劣り、料金面も高額なサービスを既存の顧客に対して提供し続けている会社もあります。もし、4?5年前からホスティングサービスを利用しているのなら、一度は自社が利用しているものが機能面でも料金面でも他の事業者と比較して十分かどうか、検討してみることをお勧めします。