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第3回ホスティングサービスからWebビジネスへの展開

企業だけでなく個人でも、独自ドメインを取得してホスティングサービスを利用するケースが増えています。企業は会社の業務案内、個人は趣味でWebサーバを借りることもありますが、ホスティングサービスを利用してビジネスを展開したいという企業や個人も少なくありません。今回は、ホスティングサービスを利用して展開するWebビジネスについて考えてみましょう。

Webビジネスとは?

「Webビジネス」とは、インターネットのWebサイトを利用したビジネス活動のことです。⁠ネットビジネス」と呼ぶこともありますが、人脈を利用してグループを拡大しマージンを得る「ネットワークビジネス」⁠別名マルチ・レベル・マーケティング=MLM)とは違います。

ホスティングサービスを利用する企業や個人の中には、取得した独自ドメインとWebサーバを利用して、収入を得るためにビジネスを展開する場合が少なくありません。では、そうした企業や個人は、どんなWebビジネスを行っているのでしょうか。

一般的なWebビジネスは、大きく二つに分けられます。

一つは、何かしらの商品を⁠売る⁠ビジネスです。⁠売る」と言うと、大手のショッピングモールサイトやオンライン書籍ショップのように、企業が商品を通信販売するイメージが強いのですが、実際には個人商店が店舗で扱っている商品を売ったり、農家が自家栽培した作物を直販したり、日曜プログラマがシェアウェアを販売したりなど、さまざまな種類と規模の物販サイトがあります。

また、モノを売るのではなくサービスを売るWebビジネスもあります。たとえば、有料会員制のコミュニケーションサイトやゲームサイト、ストリーミングサイトなども⁠売る⁠ビジネスと言えるでしょう。

もう一つ、代表的なWebビジネスが「アフィリエイト」です。これは、自分のWebサイトにオンラインショッピングを手がける企業サイトへのリンクを設置し、そのリンクを経由して訪れた利用者が商品を購入したり会員登録をしたりすると、Webサイトの運営者に報酬が支払われるという仕組みです。アフィリエイトの場合、Webサイトのコンテンツが必ずしもオンラインショッピングサイトの形態である必要はありません。趣味の情報サイトなどを運営しつつ、その趣味に関連する商品を販売する企業のバナー広告を設置することで収入が得られます。

 さまざまなWebビジネス 大規模なショッピングモール、オンラインによる通信販売から、ソフトウェアや映像などのダウンロード販売、コミュニケーションなどのオンラインサービス、そしてオンラインショッピングや有料会員サイトへの紹介により報酬が得られるアフリエイトまで、インターネットにはさまざまなWebビジネスがあります。
図 さまざまなWebビジネス 大規模なショッピングモール、オンラインによる通信販売から、ソフトウェアや映像などのダウンロード販売、コミュニケーションなどのオンラインサービス、そしてオンラインショッピングや有料会員サイトへの紹介により報酬が得られるアフリエイトまで、インターネットにはさまざまなWebビジネスがあります。

Webビジネスに適したホスティングサービス

ではWebビジネスを実践するとき、ホスティングサービスにはどんな機能が求められるでしょうか。まずはオンラインショッピングサイトを開設する場合を考えてみましょう。

最も初歩的なショッピングサイトでは、商品を紹介するWebページがあって、その商品を注文するための仕組みがあれば、それで出来上がります。注文をメールで受注し、決済は郵便局や宅配便業者の代引サービス、郵便小為替などを利用することで、サイト側の負担はほとんどありません。

しかし、ショッピングサイトでは、商品の購入者の氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報が必ずやりとりされます。基本的にセキュリティが無防備なWebページ上、あるいはメールで個人情報をやりとりするのは極めて危険です。ネットワークをそのままの状態で情報が流れるので、ネットワークを流れるデータを盗聴、傍受される危険性は否定できません。もちろん、Webサイト運営者の不手際で個人情報が流出すれば、社会的信用を落とすだけでなく法令によって罰則を受けます。

そこで、ホスティングサービスに用意されている機能を活用するのです。Webページ上で個人情報を扱う場合には、Webページを暗号化できるSSL(Secure Socket Layer)が必須になります。ホスティングサービスがSSLによる暗号化をサポートしていることは、オンラインショッピングサイトを開設する上での必須条件と言えるでしょう。

また、Webサイト運営者がHTMLやCGIなどの知識がある場合でも、商品を展示するカタログページのテンプレート、利用者がわかりやすく注文できるショッピングカート機能、顧客の個人情報や購入履歴、商品の受注や在庫をセキュアに管理できるデータベース機能などが用意されているかどうかは見逃せないポイントです。もし、こうした機能を自分で構築できるスキルがあったとしても、ホスティングサービスの機能を利用したほうが保守面でも運用面でも安心できます。さらに、システムの保守/運用にかかる時間を削減し、その分の時間を商品の品揃え、販売戦略の立案などに利用することができます。

そして、購入意欲のある顧客を逃がさないのに重要なのが決済の手段です。オンラインショッピングサイトの多くで、商品をショッピングカートに入れた顧客が、決済手段の自由度がないために購入を諦めると言われています。しかし、小規模の企業、自営業者、個人では、銀行振込、代引、小為替などで対応するのが精一杯です。それを補ってくれるのがホスティングサービスの決済機能です。ホスティングサービス事業者によって、クレジットカード決済、コンビニ払いなどに対応しているので、豊富な決済の手段を顧客に提供できるようになります。

 ホスティングサービスのオンラインショッピング機能を利用した商品と決済の流れ。ホスティングサービス事業者は、決済代行業者と提携し、クレジットカードやコンビニ払いなど、顧客にとって便利な支払い機能を提供しています。
図 ホスティングサービスのオンラインショッピング機能を利用した商品と決済の流れ。ホスティングサービス事業者は、決済代行業者と提携し、クレジットカードやコンビニ払いなど、顧客にとって便利な支払い機能を提供しています。

ホスティングサービスのショッピング機能

ここまで、ホスティングサービス事業者が提供する主なオンラインショッピングサイト向けの機能を紹介しましたが、ほかにもさまざまな機能やサービスがあります。その例と役割を紹介しましょう。

1.SEO対策機能
SEO(Search Engine Optimization)とは、検索エンジン最適化という意味です。SEO対策を行うと、キーワード検索サイトの上位に表示されるようになり集客力が向上します。ホスティングサービスのSEO対策機能では、HTMLを記述することなく、SEO対策に有効なWebサイトのタイトルやサイト説明、検索キーワードなどを挿入できます。
2.アフィリエイト対応機能
アフィリエイトサービスを提供するプロバイダと提携したり、アフィリエイトのバナーを設置したサイト情報を識別する仕掛けを利用したりなど、自社サイトの商品を他のWebサイトに宣伝してもらうための機能です。これも集客力アップには役立つでしょう。
3.ポイント発行機能
家電量販店やドラッグストアなどでは、購入した金額の数%をポイントとして還元し、次の買い物のときに金銭代わりに利用できるポイントシステムを採用しています。これをオンラインショップに取り入れたのがポイント発行機能です。リピーターを増やす決め手と言えるでしょう。
4.電子マネー対応機能
携帯電話にも標準で装備されつつある電子マネー。現在、WebMoney、Edi、@QUO、NET CASHなど、さまざまな電子マネーサービスが存在しています。それらの電子マネーで決済できるサービスを提供するホスティングサービスもあります。決済の手段をより拡充するのに最適な機能です。
5.アクセス解析機能
ショッピングサイトに限らず、アフィリエイトでWebビジネスを展開する場合もアクセス数を増やすことは重要な課題です。そこで威力を発揮するのがアクセス解析機能です。ページによるアクセス数、検索されたキーワード、リンク先のサイトなどの情報を分析することで、商品の動向や傾向を把握し次の販売戦略に生かすことができます。

コストよりも機能を重視

最近、1ヵ月数百円からという極めて安価なホスティングサービスが登場し、熾烈な低価格競争を繰り広げています。しかし、いくらWebサーバを安価に借りることができたとしても、何の機能もなければWebビジネスを早急に立ち上げることはできません。たとえば、苦労してショッピングサイトを構築できたとしても、十分なセキュリティを確保することができない場合もあります。Webビジネスの実践を前提にホスティングサービスを選ぶとき、価格よりも機能を重視すべきでしょう。

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