事業継続へ向け、ディザスタリカバリ(DR)対策が本格化していますが、7月からは電力制限がスタートし、新たに省電力対策、熱対策が火急の課題となっています。そこで、課題を解決する有効な対策として、注目を浴びているホスティングサービスの最新動向に迫ります。
進む、事業継続への対応
企業では、震災以降、ディザスタリカバリ(DR)への関心が急速に高まっています。DRは、事業継続(BCP:Business Continuity Plan)対策として、自然災害などによるシステムの被害を未然に防ぐ体制を作るとともに、被害に遭った場合は速やかに復旧・修復し、ダウンタイムを最小限に食い止め、事業を継続させる取り組みです。
たとえば、自社でサーバを運用している場合、システムも物理的な損害を受けてしまう可能性があるため、事業継続やシステムを復旧が困難になります。しかし、ホスティングサービスを利用することで、堅牢なファシリティや電源対策などにより、データはしっかりガードされ、事業継続を図ることが可能です。特に耐震構造や免震構造で守られた強固なデータセンタは、非常用発電機の完備、耐火対策などが完備されているケースが多く、大切な情報資産を守ってくれるはずです。
さらに、複数のデータセンタを用意していたり、クラウドを活用しているホスティングサービスであれば、遠隔バックアップや緊急時のバックアップ、データの待避を効率よく行うことができます。
冗長化構成、複数台構成で強力なバックアップ体制を構築するサービスや、DRサイトをあらかじめ用意しておき、万一の際に本番環境からDRサイトに切り替えるサービスを提供するなど、ホスティングサービスのDR対策はますます充実してきています。ただし、ホスティングサービスがいくらDRに強いといっても、データの管理、セキュリティは十分に注意しておく必要があるでしょう。
オンラインストレージの活用
もうひとつ、DR対策としてサービスが充実してきたのがオンラインストレージです。これまで、オンラインストレージは、サーバのディスクスペースを提供し、データの共有や大容量のデータ転送に利用することができるサービスとして提供されてきました。しかし、DRの重要性から、現在ではホスティングサービスのひとつとして提供が進んでいます。特に、クラウドコンピューティングの普及で大容量化に拍車がかかり、数百GBからTBまでデータ保存領域を提供するサービスが登場しています。
サービス自体も、大容量データの転送、共有に加え、アップロードしたデータをスマートフォンやタブレット端末、PCなどからダウンロードしたり、社外で作成した資料をアップロードしたりできるなど、利便性が高まっています。データの交換や保存、共有により、事業継続性や災害対策が図れるオンラインストレージは、今後も導入・活用が期待されます。
高まるサーバ保守、運用管理
事業継続は、物理的な対策だけでなく、保守、運用管理も重要なポイントです。実際に、災害によって担当者が移動できず、サーバの障害対応が遅れたというケースがありました。
こうした課題を解決するサービスもホスティングサービスには用意されています。それが、サーバの運用管理と障害対応を含めた対応を事業者が丸ごと提供する「マネージドサーバ」です。障害発生時の一次対応、サーバの再起動などを代行してもらうことが可能なうえ、24時間365日の監視体制で、サーバ管理のプロがスピーディに対応にあたってくれるのも大きなメリットです。
ホスティングとクラウドを組み合わせたハイブリットホスティングが増えてきましたが、仮想化技術を使って複数台のサーバを束ね、ユーザの要求に合わせて必要なリソースを、必要なボリュームだけ提供する同サービスも、担当者が社にいなければ結局、対応できず、事業継続になりません。そうした担当者不足をカバーする上でも、安心してサーバの保守、運用管理が行える体制を用意しておくことは大切です。
データのバックアップや保護、サーバの保守・運用管理など、企業を守るサービスが提供されているホスティングサービスが、事業継続を目指す企業にとって今後も重要な対策になることは間違いありません。
猛暑に負けないエコ対策
データをいかに守るか、その命題を果たすために企業では様々な取り組みが行われています。そうした中、直近の課題となっているので原子力発電事故に伴う電力不足です。
東京電力エリアは7月1日から9月22日までの平日9時から20時において、マイナス15%の節電目標を打ち出しました。
企業にとって電力不足は重要な課題ですが、サーバの省電力対策、熱対策は大きな問題のひとつとなっています。一般的にサーバルームの適正温度は20度前後とされており、30度を超えると冷却にパワーが割かれ、処理速度の低下や熱暴走する可能性が高くなります。また、サーバだけでなく、サーバルームの冷却も必要になるため、自社で運用している企業にとって、省電力対策、熱対策は難しい状況です。電力不足による計画停電も視野に入れた対策が、自社サーバの運用では求められています。
一方、ホスティングサービスは、省電力や熱対策に以前から取り組んでいたこともあり、猛暑に負けないエコ対策が整っています。たとえば、ラックの集密度を高め、省電力を図るといった対策から、クラウド、仮想化によって物理サーバの台数を減らし、省電力化を図る対策まで、さまざまな方法があります。その中には、太陽電池や風力発電を併用してデータセンタの電源を賄う「ハイブリッド」や「トライブリッド」もあり、実用化に向けて動き出しています。
また、熱対策についても、データセンタ内の熱の滞留を防ぎ、空調効率を高めることで室温を一定に保つ取り組みをはじめ、冷却構造を施したラック、空気の流れで冷却を図るサーバなど、使用する機器自体にも熱対策が施されています。このように、ホスティングサービスは、消費電力抑制や停電対策の面においても有効なソリューションとして注目されています。
ホスティングサービスは多様化
DR対策やエコ対策など大きなトレンドへの対応が加速する中、ホスティングサービスの多様化も進んでいます。その中でもスマートフォン対応は、急増するユーザのニーズもあって事業者が積極的にサービス化が始まっています。
スマートフォンに特化したサービスを提供する「モバイルサーバサービス」は、サイト作成やブログ、メルマガ機能など機能が充実しており、CMSをベースにしたデザインテンプレートで見栄え良く成形される方法などが用いられています。スマートフォンは、機種ごとに仕様が異なるため、利用する場合はサービスが利用できるかを確認しておく必要がありますが、今後も新製品発売を控えているだけに、急増するスマートフォン対応はホスティングサービスのキーワードとなりそうです。
また、Twitterをはじめfacebookなど、ソーシャルネットワークの対応も今後重要なポイントになってきます。ソーシャルネットワークは、ホビーユースからビジネスへと広がりを見せています。それに伴って、連携サービスを望む声も高まっています。そうしたサービスの多様化に伴って、複雑化するサーバの保守、運用管理もますます重要になってくるでしょう。
従来の機能に加え、時代のニーズを取り込みながら進化を遂げるホスティングサービス。課題を解決するソリューションとして今後の活躍に注目です。