前回は、オウンドメディアとアーンドメディア(ソーシャルメディア)をどのように捉えプロモーションや制作に活用するのかを提示しましたので、オウンドメディア・アーンドメディアの詳細についてはそちらをご覧ください。
オウンドメディアやソーシャルメディアで戦術を考案する際には、各ソーシャルメディアの特徴を把握しておく必要があります。今回は各ソーシャルメディアの具体的なプロモーションの考え方を提示していきます。
各ソーシャルメディア特徴と適切な制作物とプロモーション
Facebook
Facebookは実名登録が前提ということもあり、オンライン上のご近所づきあいといえるソーシャルメディアです。ですから、友人間の話の中に企業がいきなり、企業色の強いものを割り込んでも上手くいきづらいもの。
そこで、Facebookの場合、プロモーションに使用するツールは、Facebookクーポン、Facebook広告、Facebookページ、Facebookアプリといったものが用意されています。Facebookクーポンでは、直接的に自社サイトの商品やサービスページにリンクするという形になりますが、Facebook広告、Facebookページ、Facebookアプリでは、消費者とコミュニケーションをとるために、消費者が興味を持つようなものを紹介し、間接的に自社サイトの商品やサービスをページにリンクするという形になります。
Facebook広告では、アプリ広告、イベント広告、ページへのいいね!を増加させる広告、ページ投稿広告、クーポン広告、動画広告など多くの種類があります。そこで、まず、広告の目的として、アプリインストールの増加を促進したいのか、イベント参加者の増加を促進したいのか、ページへのいいね!を増加促進したいのか、クーポンの利用者増加促進したいのか、ブランド認知度の上昇・商品詳細の紹介をしたいのかによって取捨選択します。
効果測定は、オリジナルの解析ツールなども存在しますが、FacebookインサイトとGoogleアナリティクスで十分でしょう。Facebook広告は性別、年齢、住所、興味関心のあるものなど詳細をセグメントすることができますので、効果測定を行いながら、広告を最適化していきます。たとえば通販事業でFacebookプロモーションをする場合、目標(KGI)が売り上げの場合、目標値(KPI)は「購入数増加」「問い合わせ数増加」となります。
オウンドメディアの問い合わせページや商品購入ページを用いますが、問い合わせや商品購入のアクションをとってもらうには、Facebookで消費者が興味を持つような商品のエピソードを投稿します。そしてFacebookからリンクさせてブログや情報サイトでその詳細を記述し、ブログや情報サイトから関連性のある商品ページへリンクさせます。
ですので、FacebookでのKPIはブログや情報サイトの流入数増加、ブログや情報サイトのKPIは「通販サイトの流入数増加」、通販サイトのKPIは「購入数増加」とも言えます。
ブログや情報サイトを介してから、通販サイトの商品購入ページや、自社サイトの問い合わせフォームへ誘導する事になりますが、結果的にはそのほうが消費者に積極的に商品購入ページや問い合わせフォームへアクセスしてもらえるようになるのです。
制作面に関してもそれを理解した上でする必要があります。
Twitter
Twitterは、140文字という字数制限がありますので、短文で訴求力の強い情報を発信します。「今近くのスーパーでタイムセールを行っています。」など即自的な情報発信や、「一組だけに豪華メニューが無料です。」などインパクトのある情報発信において活用されるのはそのためです。
Twitterはその特性上、基本的には1方向の情報発信となります。つまり、緩い関係性を築くのに向いています。ですので、Twitterでは、消費者と企業がそれぞれ持つ目的に応じてアカウントを使い分けると良いでしょう。たとえば、消費者とコミュニケーションをとるアカウント、商品やサービスの紹介やキャンペーン情報を案内するアカウント、消費者からの問い合わせを受け付けるアカウントなどです。
Twitter広告には、「プロモツイート」「プロモアカウント」「プロモトレンド」「テレビ会話ターゲティング」などがあります。「プロモツイート」はユーザーのタイムライン上や検索結果に自分のツイートを表示させることができ、商品についてやキャンペーンの最新情報をタイムラインに埋もれさせたくない場合に使用します。
「プロモアカウント」はTwitterアカウントのタイムラインの横にある「おすすめユーザー」と記載されている箇所に自社のアカウントが表示され、自社のフォロワーを増やしたい場合に使用します。
「プロモトレンド」は任意の言葉やハッシュタグが「promoted」というアイコンとともにTwitterの「トレンド」部分のトップに表示されます。Twitter上で最低レベルの人気条件を満たしていないとプロモトレンドにはなれませんし、1日1社のみ提供でき、1日あたりの掲載料は420万円ということもあり掲載するにはハードルが高いです。
「テレビ会話ターゲティング」は特定の番組についてツイートしたあらゆる人に「プロモツイート広告」が配信されます。
自社について多くの人にツイートしてほしいのか、自社のフォロワーを増やしたいのかによって使用するTwitter広告を取捨選択しましょう。
広告の効果測定を行う場合、「ツイート分析」では、お気に入り、リツイート、返信がどれだけされているかがわかり、「フォロワー分析」では、フォロワーの興味分野、位置情報、性別、フォロワーがフォローしているアカウントがわかります。「Googleアナリティクス」では、ツイートから自社のサイトへどのくらいトラフィックがあるのかが分かります。その効果測定により、ツイート内容を最適化していきます。
商品やサービスの紹介するアカウントで店舗販売のプロモーションに活かす場合、目標(KGI)が「売り上げ増加」、目標値(KPI)は「来店数増加」、「予約数増加」となります。
オウンドメディアの予約ページやキャンペーンページを用いて、来店数や予約数を増やしますが、Twitterでタイムリーなキャンペーン情報を投稿しオウンドメディアのキャンペーンページで詳細を記述します。
ですので、TwitterでのKPIはキャンペーンページの「流入数増加」、キャンペーンページのKPIは「予約数数の増加」、「お問い合わせ数の増加」、「滞在時間の増加」ともいえます。
消費者とコミュニケーションをとるアカウント、消費者からの問い合わせを受け付けるアカウントで店舗販売のプロモーションに活かす場合、KGI は「ブランドイメージのアップ」、「自社に関する情報の拡散数増加」になり、KPIは「お気に入り数増加」や「リツイート数増加」「返信数増加」となります。
制作面に関しても、コミュニケーションをとるのか、商品やサービスの紹介をするのかを理解した上で行う必要があります。
Google+
Google+は、サークルという、友達(仲間)を分類する機能が備わっています。この機能を使えば、情報を共有する相手を適切に設定できます。Facebookは「人との交流の場」でニュースフィードに流れてくるのは友達の近況が多く、自分の心理状況によって見たいものや見たくないものがあります。Google+はそのような場合に、家族だけ、友人だけ、同僚にだけというように情報を伝えたい相手を選ぶことができます。自社ブランドを強調するようなグループ、同様の興味を持つ人を集めるグループなど使い分け、発信する情報内容、コミュニケーションをとる度合いを工夫します。
ただし、Google+はコンテスト、くじ、優待、クーポンなどのプロモーションを Google+ページ上で直接実施することができませんし、広告機能も備わっていません。ですので、オウンドメディアやその他ソーシャルメディアで案内をしたり、キャンペーンを実施したりします。
またGoogle+は、一度に最大10人までとコミュニケーションできるビデオチャットツール「Googleハングアウト」も備わっています。Googleハングアウトを上手くプロモーションとして活用している事例としてエス株式会社が行った無料のオンライン英会話授業のサービスを紹介します。
同社は「ネイティブフリートーク」という、何度でも無料のオンライン英会話授業のサービスを提供しています。これは、ハングアウトを使って、ネイティブの講師やほかの会員とフリートークが出来るというものです。
場所を選ばず英会話が行えるため、リラックスしてトークを楽しむことができたり、同時に複数の会員が参加できるため、ほかの学生の話も聞くことができます。Google+ならではの、メリットを活用できていると言えます。
Pinterest
Pinterestは、雑誌やカタログを見る感覚で使用する、画像に重点を置いたソーシャルメディアです。消費者は、部屋のインテリアグッズを見つけたり、レシピアルバムとして利用したりと、お気に入りのものを集めたり、アイデアを見つけるために利用しています。友人や同僚などの人間関係でつながっているものではなく、モノ(共通趣味・興味)を求めて使っていることが多いので消費行動に直結しやすいソーシャルメディアでもあります。
投稿する画像からリンク指定をすることができますので、目的に応じてオウンドメディアを使い分けます。即購入につなげたい場合は通販サイト、ブランドイメージアップはブランディングサイト、コミュニケーションをとりたい場合はコミュニティサイトなどです。
目的に応じてうまく活用している事例として大阪ミュージアムショップを紹介します。同社は大阪という都市を知ってもらうために、「大阪の歴史」「大阪の文化」「大阪の交通網」「大阪の祭り」などが一目でわかる画像を投稿しています。また、大阪の中小企業で通販事業をしているところを知ってもらい、商品購入してもらうために、納豆、和菓子、石鹸など商品の画像も投稿しています。これらの画像のリンク先は通販サイトやブランディングサイト、コミュニティサイトとなっており、目的に応じて使い分けをしているのです。
Pinterestの日本展開については「インタレストグラフの可能性とビジュアライゼーションの魅力――Pinterest日本代表、定国直樹氏に訊く」を併せてご覧ください。
YouTube
YouTubeは静止画やテキストでは分かりにくい商品やサービスの説明や、視覚、聴覚に訴求してインパクトのある動画で話題性を高める場合で利用します。YouTubeは単体での活用ではなく、通販サイト、ブランディングサイトなどのオウンドメディアとFacebookやTwitter、Google+などのソーシャルメディアと組み合わせてプロモーションに活用します。
個々のYouTubeを集約する意味でオウンドメディアを用います。バラバラな状態でYouTubeが存在するのではなく、ジャンル分けされた状態で存在すれば、乖離してしまう可能性を低くすることができます。
さらに、「YouTubeアナリティクス」という分析ツールでは、視聴回数、ユーザ層、トラフィック、視聴者維持率、動画の評価などのデータが取得でき、視聴者の動向を把握することができます。その効果測定により、視聴者の興味や関心に添った動画コンテンツ内容を最適化していきます。
ちなみに、Facebookページでは、舞台裏や、商品サービスの詳細など、消費者が興味を持つ情報を提供しますし、Twitterでは、自分のチャンネル用の独自の #ハッシュタグを使い、インパクトのあるメッセージとともに動画のリンクを紹介します。
Google+では、NG集や、メイキングビデオ、撮影風景の写真など、サークルのメンバーだけの特別なコンテンツを紹介します。
Ustream.tv
Ustream.tvは長時間のライブ中継で利用し、ライブ中継を見ながらチャットに参加することができます。リアルな情報を視聴者に提供できるところから、Twitterのような即時性のあるソーシャルメディアと同時にプロモーション活用します。新製品発表会、記者会見、イベント、ライブ、トークショー、店頭・商品紹介などの際に活用し、現場の雰囲気を伝えています。
一例として、ソフトバンクでは、新商品発表会のライブ中継に利用し、開始後2時間半限定のクイズキャンペーンをFacebookページで行うなど、他のソーシャルメディアとの連携も取り入れています。
LINE
LINEは利用ユーザが24歳以下で68%[1]となっており、他のソーシャルメディアと比較しても圧倒的に若年層が多いです。またプッシュ通知で情報を届けるため、リアルタイム性のあるプロモーションに活用できます。
FacebookやTwitterはコミュニケーションを双方向にとる事ができますが、LINEは自分から相手へのみの、1方向の情報発信で双方向にコミュニケーションをとる事ができません。そのため炎上リスクは少ないのですが、過度なメッセージ配信によりブロックされやすいというデメリットがあります。情報を発信する場合は頻度やタイミングを慎重にする必要があります。
また、LINEメッセージ内にキャンペーンページなどオウンドメディアへのリンクを設けることでその詳細を認知してもらいます。オウンドメディア内でもメッセージの内容と相関性を持たせた制作を心がける必要があり、端的に理解ができるわかりやすいページ作りにするべきです。
LINEを活用したプロモーションの善し悪しを判断するために、LINEの分析ツールやGoogleアナリティクスを使います。LINEの分析ツールでは、友だち追加数(日次、グラフ)、ブロック数(日次、グラフ、差分の正味友だち数(日次、グラフ)、メッセージ送信通数(日次、グラフ)、配信数(日次、グラフ)[2]が把握できます。
Googleアナリティクスではオウンドメディアでの直帰率、滞在時間、PVを把握できます。
分析ツールを活用し効果測定を行い、LINEメッセージの情報発信する内容やタイミング、頻度を最適化していきます。
以上Facebook、Twitter、Google+、LINE、YouTube、Ustream.tv、Pinterestとそれぞれのソーシャルメディアでのプロモーションや制作においての留意点を述べましたが、ソーシャルメディアは、商品開発やサービス改善、リスクマネージメント、風評確認、CSRや企業ブランディング、カスタマーサービスなどでも活用できます。ですので、今回紹介したソーシャルメディアのプロモーションとしての活用以外にも、活用方法があるということを頭にいれておいてください。
炎上対策
ソーシャルメディアを活用する際に留意しないといけない炎上対策について提示します。
ソーシャルメディアを活用する際に炎上を防ぐため、ソーシャルメディア活用のルール、手順、ポリシーなどが表記された「ソーシャルメディアガイドライン」を策定します。策定したガイドラインを社内で浸透させるため、運用担当者を教育します。運用担当者は、誠実な対応を心がける、企業の機密情報や他人のプライバシーを漏えいしないように注意する、会社を代表する発言として捉えられる事を自覚する必要があります。
炎上が発生してしまった際は、できるだけ正確に問題が発生した原因を説明し、その対策を明示する、非が明らかな場合には、迅速かつ誠実に謝罪する必要があります。
以上のようにソーシャルメディア単体では、事業の収益に結びきません。信頼や評判を得るソーシャルメディアと、顧客と深い関係づくりを築くオウンドメディアを相互させることで、中長期的な収益につながるのです。このことを把握して制作やプロモーションに活かしてもらいたいと思います。