2012年3月24日(土)、SwapSkillsのマンスリーイベントの第27回「流入を増やす実戦Webライティング術」が大田区産業プラザにて開催されました。ソーシャルメディアの台頭により、サイト制作や運用に関わる人は、今まで以上にユーザーとの関係を強めていくようなコンテンツを制作するスキルが求められます。テキストにおいても、通りいっぺんのライティングではユーザーの気持ちをつかむことは難しくなってきています。
今回の勉強会では、「人の目に留まる文章」や「人に伝わるための文章作成方法」についてプロのライター2名が登壇。普段からテキストを扱うことの多いWeb担当者自身が、基本的なスキルから実践的なTIPSまで学べる構成となっています。
阿部欽一氏による「IA、UI、マークアップの中核をなすテキストライティング」
まず、フリーランスのライター/ディレクターとして活動するキットフックの阿部欽一氏が登壇し、テキスト制作の基本的なポイントについて以下の通り解説しました。
- (1)はじめに
- (2)高まる「ライティング」の重要性
- (3)「わかりやすい」テキストを書くための5つのポイント
- (4)わかりやすい「テキスト表記」7つのポイント
- (5)文章力を高めるためには
はじめに同氏は、「わかりやすい」テキストのための洗練化のプロセスについて「内容の洗練化」「見た目の洗練化」の2点を挙げました。従来の紙メディアに比べ、Webは「ユーザーとの関係強化」のために行動を促進するメディアという特徴があります。こうした特徴を踏まえ、Webテキストは「コンテキスト(サイト運営側がユーザーの状況を理解していること)」「誰に?何を?どのように伝えるか」が重要視されてくるということです。
次に、以下の5つの要素について、Webにおけるライティングの重要性を示しました。
- (1)デザイン(UXDやUI設計)とライティング
- (2)情報設計とライティング
- (3)マークアップとライティング
- (4)検索エンジン最適化
- (5)ソーシャルメディア最適化
まず、「デザイン(UXDやUI設計)とライティング」では、制作者は、どういうユーザーが、どんなニーズで、どんな前提や知識をもって、どういうシチュエーションでテキストを読むかという点を配慮する必要性があるということを、実例を交えながら示されました。
次に「情報設計とライティング」では、ターゲットユーザーにあわせた言葉選び、ナビゲーションの設計などの重要性が示されました。同様に、「マークアップとライティング」では、HTML5によりセマンティクス性が重要視される流れにある中で、制作者はより「文書(情報)の構造」を意識しながら制作を進めていく必要がある点について言及しました。
「検索エンジン最適化」「ソーシャルメディア最適化」では、選定したキーワードにつき、コンテンツ公開後の運用フェーズで、随時見直していく重要性や、ソーシャルメディアで拡散されていく際に、ユーザーが思わずクリックしたくなるようなページタイトルや見出しの作り方についてポイントが解説されました。
テキスト洗練化のための12のポイント
引き続き、テキスト洗練化のためのポイントにつき同氏は解説しました。
「わかりやすい」テキストを書くための5つのポイントでは、思わず陥りがちな日本語の文法についてのポイントをが紹介されました。主語「が」「は」の受け方のポイントや、助詞「で」「に」の使い分け、接続助詞「が」の使い方など、普段、漫然と書いてしまいそうなテキストにつき、ほんの少しのポイントを意識して書くことで洗練化につながるということでした。
また、わかりやすい「テキスト表記」7つのポイントでは、句読点やカギカッコの使い方など、見落としがちなチェックポイントを紹介されました。日本語は表記の自由度が高い言語です。「いう(言う)」「こと(事)」「ところ(所)」など、本来の意味から離れた使い方をしている場合は平仮名で書く、「みる」「つとめる」「こたえる」といった言葉の「訓読み」の漢字表記に統一感を持たせる、といったポイントが解説されました。
セッションでは、実際に案件を担当したときの「表記ルール」のひな形などが示され、同氏は、「スケジューリングの重要性」「よい文章をまねること」「結論を先に言う」「情報の強弱を意識する」といったライティング上達のための心得を示してセッションを締めくくりました。
藤木俊明氏による「ソーシャル時代に必要な顧客の心を掴む文章作成のキホン」
続いて、有限会社ガーデンシティ・プランニング代表の藤木俊明氏より、ソーシャルメディアでのテキストライティングで気をつけたいポイントなど、以下の5つのポイントについてセッションを行いました。
- (1)情報過多のメディアで埋もれない、クリックされるライティング方法5つのポイント
- (2)ライティングの正確さ・高い作成効率を支える5つのツール
- (3)ソーシャルメディアでのライティングで気をつけたい5つのポイント
- (4)「仕事を獲得するための文章作成」のポイント
- (5)メール/企画書の作成
まず、これからの時代は、Web制作者のみならず一般のビジネスマンも「ファンづくりに貢献できる書き手」としてのスキルが求められると言及しました。具体的には、「多くの人の目に留まること」「読んだ人がブランドを正しく理解できること」「その上で、伝え手のメッセージが興味深く伝わること」の3つのポイントです。次に同氏は、クリックされるテキストライティングの方法として、以下の5つのポイントを挙げました。
- (1)タイトルこそすべて
- (2)「起承転結」ではなく「OBB」
- (3)「あるある」と「へえー」
- (4)リズム感と比喩
- (5)専門用語は使わない
「タイトルこそすべて」では、「3分でわかる」「~3つのポイント」など定量データで説明する、メリットを前面に押し出し読者の関心に応えるといったタイトル作成のテクニックが具体例とともに披瀝されました。次に、「OBB」ですが、これは、「Overview(概要)」「Background(背景)」「Benefit(利益)」の頭文字で、Webにおける文章は「概要=問題提起」「背景=根拠」「利益=メリット」という順で展開するとよいという原則です。
また、「あるある」と「へえー」については、読み手の関心を引くためには、身近な失敗談や陥りやすいポイントを挙げることや、ちょっとした「気づき」を盛り込むことの重要性を、実際の制作事例などを交えながら紹介しました。次に、「リズム感と比喩」については、具体的な数値など、実際に光景が読み手に想像できるように文章を書くとよいということでした。
続いて、同氏は、ライティングの正確さを支えるツールを紹介しました。誤変換や入力ミスを減らすため、日本語入力ソフトの辞書登録機能やWebの辞書サービスといった、実際に同氏が活用するツール類が挙げられ、それに続き、「ソーシャルメディアでのライティングで気をつけたい5つのポイント」が解説されました。
仕事を獲得するための効果的な文章作成術とは
次に、「仕事を獲得するため文章作成」のポイントでは、メールや企画書を例に、上述してきた「タイトル」や「OBB」、「あるある」といったポイントをどのように応用したらよいかが例示されました。特に、企画書についてはあまり長くしない方が効果的という同氏ならではのテクニックが示され、「OBBプラス1(企画の骨子)」「5W1Hではなく6W2H」といった実践的な企画書作成術が紹介されました。
最後に、文章をブラッシュアップするための工夫として、SNSを効果的に活用することが大事だと同氏は語りました。特に、ブログほど長くなく、Twitterよりは文章量を多く書けるFacebookが「練習」には向いており、たとえば、毎日、気になるニュースの感想を更新していくことが大事だということです。この際に、「こんなニュースがあった」「背景にはこんなことがある」「自分の感想はこうである」といった「OBB」スタイルを意識していくとよいとのことでした。
同氏は、セッションの締めくくりとして、実際に担当した案件で文章の校正ミスにより生じた損害などの失敗例について触れました。特に「名前や会社名、住所、電話番号といった相手を特定する情報」「商品名や価格、商品番号などのお金に絡む情報」は、公開後に修正が可能なWebであっても絶対に間違えないよう確認を厳重にして欲しいと語り、セッションは終了しました。