企業ユーザのためのクラウド導入の手引き(IaaS編)

Chapter8:ケーススタディ①単体構成

IaaSの大きな特徴の1つに、サーバを迅速に配置できる点(ラピッドプロビジョニング)があります(図1⁠⁠。IaaSを利用する場合、IaaS 事業者がOSやサーバソフトウェアなどを初期導入済みのシステムを提供しますので、短時間でサーバを利用開始することができます。また、IaaSによっては、独自にカスタマイズした初期設定テンプレートを作成できる機能を持ったものもあります。この場合は、独自テンプレートを追加で起動するだけで、独自システムの拡張が可能になります。

図1 ラピッドプロビジョニング
図1 ラピッドプロビジョニング

さらに、IaaSでは、サーバを迅速に配置できるだけではなく、廃止も迅速に行うことができるため、たとえば、短期間のキャンペーンサイトなどを用意する場合、サイトの配置も廃止も迅速に行えて好都合です。IaaSによっては、1時間とか1日単位での契約も可能なので、一般のホスティングサービスのような1ヵ月単位の契約に縛られることなく、コストを抑えることができます。

IaaSのもう1つの大きな特徴に、サーバリソースの拡張だけではなく、縮小も自由自在という点があります(図2⁠⁠。サーバリソースの拡張が必要になった場合、これまでのホスティングサービスでは、上位の、利用可能リソースが大きいプランに切りかえることになりますが、多くの場合、契約は1ヵ月単位であり、もし大量アクセスが1週間で沈静化した場合など、残りの3週間以上は、余計なコストを払うことになります。下位プランへ変更すれば、その分月々に支払う利用料金は減額されますが、サイト再構築の時間とコストがかかります。また、システム能力縮小後に、再びアクセスが増加して、サーバ能力不足が生じるようなことが繰り返し起こるようであれば、その度にプラン変更とシステム再構築を行う羽目になり、これが時間とコストの大いなる無駄であることは明らかです。

図2 システムの縮小
図2 システムの縮小

IaaSであれば、サーバ自体の能力を自由に変更可能なので、まずは必要最小限のサーバを構築しておき、アクセスの状況に応じて、各種リソースを増減させることが可能です。したがって、一般的に困難な作業とされている、事前のキャパシティプランニング(どれだけの能力が必要かを予測して設計すること)が事実上不要になるため、必要な機能だけに注目してシステムを構築すれば良いのです。サーバのアクセス数(負荷)に応じて、能力増減を事前スケジュールやオンデマンドで実行してくれる機能を持ったIaaSを利用すると、アクセス数の急増を心配せずに済みます。

これはとくに、キャンペーン期間中のみ大量のアクセスが発生するサイトや、特定の曜日のみ大量のアクセスが発生するサイトには非常に大きなメリットです。

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