WEB DESIGN WORKSHOP「正しいウェブデザイン」

第16回Buzz Marketing through CRM「CRMを通じたバズ・マーケティング」

CRM(Customer Relationship Management)とは個々の顧客ニーズに応えるために顧客情報を収集・管理し、長期的に良好な顧客との関係を築くことである。通常は顧客の消費動向に最適化されたダイレクトマーケティングを行い、リピート購入を促すことが一般的だが、詳細な顧客情報の取得を通じ、バズ(クチコミ⁠⁠・マーケティングに活用することで高い効果を生み出すことが可能だ。

バズ・マーケティングとは消費者ターゲットに対して特定の影響力をもつ集団へ直接働きかける事により消費者の購買意欲を刺激する手法である。Web上には消費者が情報を発信するメディアが様々な形で存在し、情報を「クチコミ」という形で掲載することが一般的である。しかし、ブログプロモーションの急速な普及によりクチコミの信憑性が問われている。製品やサービスに対する感想として掲載されている消費者の声も、購入された「広告文」である可能性は否めないからだ。

本来「クチコミ」を行う人は対象の商品・サービスを気に入り、自身が持つ情報発信の場で他の人に知らせたいと思っている。正しくバズ・マーケティングを行うには、該当しない人から無理にクチコミを「購入」するのではなく、自分の意思でクチコミをしてくれる消費者を抽出することが重要である。Webを通じて消費者が自主的にマーケティングを行う今、CRMとバズ・マーケティングの組み合わせは企業にとって無視できないものであるはずだ。

インフルエンサーの抽出

消費者向けに一般的な製品やサービスを販売している企業が数万~数十万件の顧客情報を持っていることは珍しいことではない。もちろんその中にはバズ・マーケティングに有効な消費者の情報も多く含まれている。消費者が持つ製品・サービスに対する好みと情報発信力の有無を把握することで、自社の顧客を活用したバズ・マーケティングを行うことができる。

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CRMを通じたバズ・マーケティングのメリット

既に所有している顧客情報を整理し、バズ・マーケティングに活用するメリットは3つある。一つはもちろんコストである。一般的なブロガーに記事の執筆を依頼すると500円~1000円ほどコストがかかる。数千人単位のブログプロモーションを行うと一回に数百万程度のコストが発生する。しかし、少しのインセンティブ(製品プレゼントなど)で消費者の登録情報を獲得し、ブログの運用についてアンケートを行えば、何度でもアプローチできるブロガーの集団を獲得することができる。

FICCで行ったランコムメイベリンNYのWebプロモーションではこのブロガーの獲得が大きな軸となっている。ブランド側が独自に数千人規模のブロガーのデータベースを保有することでWebプロモーションにかかる媒体費を大幅にカットすることが可能となった。プレゼント企画と新製品の告知をメールマガジンで行うだけで、多くのブログ記事の生成が可能となるのだ。そして時間とともに登録人数が増えれば、その費用対効果は更に向上する。

2つ目のメリットはプロモーションとユーザーの質である。ブロガーとして登録した消費者はブランドの情報を自身から発信することに許諾している。そして何よりそのブランドに対して好意を持っている。特定の製品を好んだり、期待をしたりすることで自主的に記事を書くのである。もちろんモニタープレゼントやクーポンなど何らかのインセンティブを用意することが効果的ではあるが、ブログ記事を購入するペイパーポストとの大きな違いが、クチコミに対するモティベーションがユーザー発であるということだ。

3つ目のメリットは媒体としてアクセスできないメディアへの影響である。製品を評価するクチコミ投稿、ランキング形式のサイトなどは純粋な消費者の声を反映しているとする。プロモーションを意図としてこれらのサイトに情報を投稿することや投稿を依頼することは規約違反となる。しかし、頻繁に投稿する消費者を抽出し、製品やサービスを試してもらうことは可能だ。ブロガー同様、アンケートにより頻繁に投稿する「エディター」を製品の好みと一緒に抽出する。対象の製品に製品力があれば、大きな評価につながる。このやり方はランキングサイトだけでなく、SNSやリアルなクチコミにも応用が可能だ。消費者の抽出さえ行うことができれば、好意的な情報の流れを確立し、競合に対する大きなアドバンテージを獲得することが可能である。

具体的な抽出方法と項目

抽出方法は消費者からの自主的な申告に頼る他ない。顧客に響くインセンティブを提供し、アンケートを実施する。日本人はなぜか「アンケート」という言葉に弱い印象がある。⁠アンケートで当たる」などの件名のメールは高いCTRと登録者の情報を獲得できる。

抽出する項目として、以下のものが挙げられる。

(1)製品・サービスに対する好み

できるだけ詳細にユーザーの好みを把握すると共に、対象となる製品の特徴に対する意識を把握する必要がある。例として、以前行ったファンデーションのキャンペーンでは対象となったリキッドファンデーションは透明感や軽さにが売りであったが、カバー力に欠けていた。⁠ファンデーションを購入する際に重視する特徴」という質問項目から「透明感⁠⁠、⁠軽さ⁠⁠、⁠カバー力⁠⁠、⁠キープ力」などの特徴に5段階の点数を付けてもらった。結果、商品特性に最もマッチする好みを持った消費者を抽出することができた。

(2)情報発信力の有無

次にその消費者が情報発信力を持っているかを問う[1]⁠。ブログを公開しているか、そしてその更新頻度、主なテーマ。SNSへの参加、参加頻度、接続人数、コミュニティーへの参加。クチコミ投稿サイトへの参加、投稿頻度、主な投稿ジャンル。Q&Aサイトへの参加、参加頻度、等々…可能な限り具体的に、またプロモーション活用可能な項目を全て聞いておこう。

(3)モティベーション

インセンティブを設けることでクチコミに対してモティベーションがそこまで高くない消費者の参加も増える。インセンティブが大きければ消費者のモティベーションを計測する項目が必要となる。ひとつの効果的な方法はアンケート内にフリーワードの項目を設けることである。アンケート投稿に対し、考え、文章を構成する機会があればモティベーションの高い消費者ほど熱心に応えてくれる。企業に対するメッセージなど、フリーワードかつフリーテーマの項目があっても良いだろう。

(4)行動パターン

上記3つの項目で、バズ・マーケティングを行うための消費者は抽出できる。この顧客情報を更にダイレクトマーケティングに活用するには購買に対する消費者の行動パターンを獲得するべきである。化粧品を例にすれば購入場所が薬局、コンビニ、百貨店、専門店などに分かれる。また、購入のタイミングも出勤前後、平日、週末などに分かれる。購買がいつ、どこで行われるかを把握し、製品の好みとクロスすることで、最も購買の可能性が高い顧客を抽出することが可能となる。目的のコンバージョンがECなどPC上で完結できるものでない限り、外出先でのコンタクトを可能とするためにモバイルのメールアドレスも取得する必要がある。

アンケート取得時にメール、携帯、郵送などのパーミッションを取得することで、上記取得項目を今後のプロモーションに二次活用することが可能となり、さらなるコストカットを実現することができる。

CRMはWebマーケティングの最重要課題

今回はCRMの少し変わった活用方法を紹介した。しかし今後、企業のCGM活用が本格化する中でこのような活用方法は当たり前のものになるだろう。広告費用が見直され、販売促進に役立つ消費者のデータベースを企業が自ら保有するようになる。広告のコストをカットするということは効果を上げることにも繋がる。

次回は見直されつつあるメールマーケティングについて説明する。

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