Web担当者が知っておきたい、成功するWebサイト制作と運用

第1回不況を勝ち抜くWebサイト運用に「アジリティ」もたらすCMS

第1回目の今回は、不況下におけるWebの活用方法を再考し、解決策としてのCMSの位置付けについて解説します。

不況期だからこそWebに投資するべき

新政権が発足し政治に動きが出てきた日本ですが、肝心の景気はまだまだトンネルの出口が見えない状況が続いています。経済が持ち直す兆しが見えてきたという意見もあれば、来年再び二番底が来るという予想もあり、まだまだ予断を許しません。

そんな経済状況の中、企業ではあらゆる予算がカットされてきました。中でもWebに関係の深い広告費のカットはそれこそWeb業界始まって以来の規模で、50%カットは当たり前、中には予算がゼロになった企業も珍しくはない状況でした。

本来、テレビ・新聞などの4マスに比べてコスト効率の高いネット広告を含むWeb関連予算は、こういう時期だからこそ、今まで以上に増やすべきです。しかし、残念なことに全体の激しい予算削減プレッシャーの中、連動する形で予算縮小を避けられなかった企業が多いようです。

そもそもWebは4マスと異なり、単に広告宣伝だけが目的ではなく、総合的な「マーケティングツール」のはずです。マーケティングは本来、中長期的な施策であり、短期的な結果を求めるものではありません。その予算を削減することによる影響は短期的には現れませんし、定量的に評価することが難しい面があります。だからといって安易にマーケティング活動を止めてしまうのは危険な行為です。

よく言われるようにマーケティングの効果・影響はじわじわとボディブローのように効いてくるので、気づいたときには時すでに遅しとならないように注意してください。

Webマーケティング戦略とWebサイトの基本機能を見直す

こういう状況下でWeb担当者は来年に向けてどういう取り組みをしていけば良いでしょうか?

まず自社の「Webマーケティング戦略」を見直してみましょう。

意外なことに大企業でも全社的なWebマーケティング戦略を持っていないことがあります。しっかりとした戦略なくして効果的な戦術は生まれません。激しく変化するインターネット上では、戦略の陳腐化が急速に進んでいるかもしれません。

今年になってTwitter⁠ツイッター)が大きな話題となっています。Twitterの登場により、インターネット上での情報共有のスピードがより「リアルタイム」化してきています。ブログやSNSを前提としたSMO戦略では対応できないでしょう。

次に、自社のWebサイトの機能を見直してみましょう。

企業のWebサイトは、情報発信のための「メディア」としての側面と「ツール」としての側面を併せ持っています。しっかりとWebマーケティングを遂行するためにはどちらの側面も大事です。これらが十分に機能していないと、景気回復後にいざ攻めに出ようとしても躓くことになりかねません。

とはいえ、このような経済状況では短期的な結果(リターン)を求められるのも当然とも言えます。つまり高い「ROI」⁠投資対効果)が期待できない場合、投資を得られないわけです。

そこで、Webをこれまでのようにブランディングなど「マーケティングツール」ととらえることを止め、⁠営業ツール」と考えてはどうでしょうか?

つまりWebサイトの「営業力」をアップさせることに注力するわけです。

「営業」と聞くと、違和感があるかも知れませんが、本来「営業」とは「新規顧客の獲得」が最も大切な仕事です。つまり「見込み客」をできるだけ多く獲得できることが、最終的な売上・利益を向上させる決定要素となります。

では、新規顧客を獲得するにはどうしたら良いのでしょうか?

Webサイトの運用に求められる「アジリティ」を実現するCMS

4マス広告やリアルを抜きにネットだけで新規顧客獲得を考えた場合、まず必要になるのは言うまでもなく集客方法としての「SEM」とコンバージョンを高める「LPO」です。

SEMですが、自Webサイトに内部的「SEO」を施すと同時に、潜在顧客に対してリーチするにはキーワード連動型広告やリスティング広告などの手法を活用することになります。

それに加えて、広告から誘導されてきた潜在顧客を資料請求や登録フォームでコンバージョンを高めるためには「LPO」が不可欠となります。

すでにSEOやLPOに取り組んでいる、という企業は多いと思いますが、実際のSEO作業やランディングページ制作はどのように行っているでしょう?準備段階ではSEO・LPOともに専門のツールを利用するものの、最終的な導線の修正やタグのチューニング、ランディングページの作成は手作業というケースもまだまだ多いのではないでしょうか。

SEOにしてもLPOにしても一度対策すれば終わりということではなく、アクセス解析等のデータから分析を行うことで課題や問題点を把握し、解決するための施策を丁寧に繰り返し行っていく必要があります。こういった作業を手作業で行っていくのは効率が悪いだけでなく、⁠アジリティ」⁠俊敏性)に欠けます。

PDCAサイクルを「ゆっくり」回していては機会損失が生じますから、Webサイトの運用全てに「アジリティ」が求められるわけです。

そのためにはできる限り手作業の部分を廃し、システム化することが必要になります。

つまり、柔軟性と俊敏性を兼ね備えた「CMS」の導入が必須になるわけです。

CMSの柔軟性については成長するCMSで攻めのマーケティング―Webサイトの成功を約束する「柔軟」なCMSの条件とは?を参照してください。

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CMS導入しないことのデメリットを考える

もはやCMSは、Webサイト運営に必須の機能であることに議論はないと思いますが、意外にも上場企業の中でも未だにCMS未導入の企業が多くあります。CMSを入れるかどうかの議論ではなく、どのCMSを入れるか、それだけが選択肢となっているという時代ですから、Web担当者としては早期にCMS導入の実現を目指すべきでしょう。

CMS導入を躊躇されている企業においては、もしかしたら「効率化」⁠コストダウン」だけがCMSのメリットとして考えられているのかもしれません。確かにそれらはメディアとしてのWebサイトを運営する上でCMSの大きなメリットですが、これまで見てきたようにWebサイトで「結果を出す」ために必須の「プラットフォーム」なのです。

CMSのメリットは多いですが、もし、メリットだけで社内を説得できないとしたら、CMSを導入しないことのデメリットを考えてみるのも手です。

例えば、HTML5やアクセシビリティ規格 JIS X 8341-3がリリースされれば、その対応が急務となります。CMSが導入済みでなければ、大変なコストを掛けた改修が必要になるかも知れません。もちろん、コンテンツとテンプレートが分離されたCMSであることが前提ですが。

忘れてはならない営業ツールとしてのCRM

さて、めでたく資料請求フォームに新規顧客が入力してくれた後、あなたのサイトではどう処理していますか?

せっかく手に入れた貴重な顧客データを十分に活用されているでしょうか。多くの企業で苦労して集めた顧客データが異なるデータベースに散在し、結局うまく活用できていないといった話をよく耳にします。これではROIを高めることはできません。

入り口となるSEM/LPOだけでなくしっかりと出口を押さえることが最も重要になります。これには「CRM」⁠Customer Relationship Management)システムが必要になります。⁠一口にCRMといっても幅の広いソリューションを指す言葉ですので、ここではインターネットを前提とした「e-CRM」に限定します。)

CRMというと大げさに聞こえますが、企業サイトにとっては「資料請求ページ」「問い合わせフォーム」などで顧客データを取得し、そのデータを営業に活用するのが基本機能です。

シンプルなメール配信システムでもCRMと称していることがありますが、受信側の状態(ステータス)を無視したむやみなメール送信は効果が上がらないだけではなく、逆効果となることもあります。これはリアルワールドでのDMと同じで、例えば新車を購入したばかりの顧客に新型車のDMを送るのは全く意味のない行為となります。

CRMシステムも低価格で導入可能なASPタイプのソリューションが増えてきていますので、サイトの目的にあった製品を選択してみてください。その際にCMSとの連携が可能であることが求められますが、CMSとCRMがセットになったようなソリューションは柔軟性に欠ける可能性がありますので、選定時には注意が必要です。筆者の考えでは、⁠餅は餅屋」でそれぞれの分野での最適な製品を選ぶ方が長期的なメリットがあると思います。

まとめ

このように、Webサイトを短期的に結果を出せる営業ツールとして活用するためには、CMSでしっかりとしたWebサイト管理・運用の基盤(プラットフォーム)を作り、目的に合ったCRMシステムを利用することが不可欠です。その上で、SEM/LPOを俊敏性をもって実施していくことが必要になります。

前述したTwitterによってリアルタイム化が進行しています。このリアルタイム化に対応するためにもWebサイトの「アジリティ」が求められるようになるでしょう。

柔軟でアジャイルなサイト運営のプラットフォームとなるCMSの導入についてのコツや注意点については次回以降で触れていきたいと思います。

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