Microsoft Web PIが変えるWebアプリケーションサイト構築

第1回Web PIとは何か?

Windowsとオープンソースソフトウェア

ご存知のとおり、Microsoft Windowsファミリは現在PC上で最も利用者の多いOSです。Windows上ではさまざまなアプリケーションが開発されており、その種類も多岐にわたっていますが、中でも比較的「手薄」な印象を持たされるのが、いわゆるオープンソースソフトウェア(OSS)と呼ばれている、ソースコードフリーでコミュニティによって開発されているソフトウェア群です。

近年のWebアプリケーションの浸透の大きな原動力となっているのが、これらOSSと言えるでしょう。現在メジャーなWebアプリケーションやWebサービスサイトの多くでOSSが使われており、新たなサービスや技術も次々と生み出されています。今日のWebアプリケーションはOSS無しには成り立ちません。

こうしたOSS由来のソフトウェアの多くは、基本的にはプラットフォームや動作環境に依存しない「オープン」な性質をもっています。Linux上で開発されることが多いOSSですが、Windowsプラットフォームでそのまま動作したり、メジャーなものはたいていWindowsへの移植が行われており、インストールすれば使用できるものも数多くあります。使おうと思えば、Windowsプラットフォーム上でOSS中心のWebシステムを構築することは十分可能です。

では、なぜOSSはWindowsプラットフォームであまり使われている印象がないのでしょうか? ⁠使おうと思えば使える」というのが実はくせ者で、実際にWindowsプラットフォーム上でOSSのWebアプリケーションを利用しようとすると、蓄積された情報の少なさから,インストールに苦労したり、情報収集が必要なことが多いのです。

OSSに限らず、Webアプリケーションはたいてい単一のソフトウェアとして動作することはなく、多数のツールの集合体であったり、別のソフトウェアのインストールが前提とされている場合がほとんどです。たとえば、OSSのCMSとして有名なWordPressをインストールするには、Webサーバソフト(Apacheなど)はもちろん、DBMS(MySQL)やPHPが実行できる環境が必要です。またインストールするソフトウェアのバージョンによって、前提となるソフトのバージョンも合わせる必要があったり、日本語バージョンが存在する場合に特別なパッチが必要だったりと、ただインストールすれば動くというわけではありません。

Linuxの場合は、こうしたソフトウェアの依存関係やバージョンの組み合わせが最適化されたインストールパッケージが用意されており、コマンド一発でインストールできたり、OSと一緒にインストールされている場合もあり、ユーザレベルでインストールに苦労することはほとんどありません。しかしWindowsではこの部分は遅れており、コマンド1つでインストール完了とはいかないのが実情です。このあたりはメーカ製のプロプライエタリなプラットフォームと、多くの人々の手を経て開発が進んできたOSSとの「文化の違い」もあり、なかなか埋めるのは難しいかも知れません。

Web PIとは?

マイクロソフトとしても、こうした状況を黙って見過ごしていたわけではありません。多くのWebアプリケーションの開発言語/動作プラットフォームとして採用されているPHPを、Windowsの標準的なWebサーバソフトウェアIIS(Internet Information Service)上で動作させるための情報や拡張プログラムなどの提供を2007年から始めました。さらに、これを一歩進める形でWebアプリケーションソフトそのもののインストールを簡単にする仕組みの提供を開始しました。これがWeb PI(Web プラットフォーム インストーラー)です。

Web PIはOSSのインストールだけに特化したものではなく、もともとはVisual Web DeveloperやSQL Server、.NET Frameworkなど、マイクロソフトのWeb環境を構築するためのソフトウェアを簡単にインストール/バージョンアップするための仕組みです。2009年にリリースされたWeb PI 2.0から、PHPをはじめOSSのWebアプリケーションのインストールに対応するようになりました。

Webプラットフォームインストーラー(Web PI)
URLhttp://www.microsoft.com/web/downloads/platform.aspx
図1 Web PIの画面
図1 Web PIの画面

Web PIは見ておわかりの通り、GUIを使ったインストーラです。Web PIを使ってアプリケーションをインストールすると、そのソフトウェアが依存している別のソフトウェアのパッケージやインストールオプションなどもすべて適切に選ばれ、自動的にインストールされます。普通のWindowsアプリケーションのインストールとほぼ同じ感覚ですね。Web PIでインストールされたソフトウェアは、すぐに使用を始めることができるのです。

表1 Web PIの動作環境
Windows XP Professional SP2以降
Windows Server 2003 SP1以降
Windows Vista Business Edition、Ultimate Edition
Windows Server 2008、Windows Server 2008 R2
Windows 7

Web PIでできること

Web PIのインストールやアプリケーション導入の実際については次回以降に詳しく説明するとして、Web PIの機能について説明しましょう。

Web PIは、Webアプリケーション ギャラリーに登録されたソフトウェアの情報をRSSフィードによって受け取り、この情報を元に動作するインストーラです。インストールするソフトウェアはマイクロソフトのWebサイト上にあり、最新バージョンを最適な形でインストールすることができます。

2010年10月現在、Web PI 日本語版でインストールできるOSS Webアプリケーションは次の4本です。

WordPress日本語版パッケージブログ/CMSプラットフォーム
SugarCRM日本語版パッケージ顧客管理ソフトウェア
XOOPS Cube Legacy(ホダ塾ディストリビューション)コミュニティポータル構築ソフト
EC-CUBEECサイト構築パッケージ

これらのソフトウェアは、後述する「Web アプリケーション ギャラリー」というソフトウェア配布、登録の仕組みを使い、マイクロソフトと各アプリケーションのコミュニティとの協力によって提供されています。同様の仕組みを使った日本語版以外のOSSパッケージも多数登録されており、もちろんこれらもインストールすることができます。こうしたソフトウェアはWeb PIのメニューの他、Web PIのインストールページからソフトウェアを探すことができます。

Windows Web アプリケーション ギャラリーとは?

先ほどから何度か触れている「Windows Web アプリケーション ギャラリー」は、Web PIでインストールできるソフトウェアのリポジトリ(提供サイト)と言えます。OSSをダウンロード/インストールできるだけではなく、開発したOSSをギャラリーにアップロードしてWeb PIからインストールできる形で提供することもできます。

Windows Web アプリケーション ギャラリー
URLhttp://www.microsoft.com/web/gallery/developer.aspx
図2 Windows Web アプリケーション ギャラリー。⁠他言語版アプリケーションを参照する」というリンクを辿ると、各国のソフトウェアを一覧、インストールできる。各ソフトの解説は日本語で表示される。
図2 Windows Web アプリケーション ギャラリー。「他言語版アプリケーションを参照する」というリンクを辿ると、各国のソフトウェアを一覧、インストールできる。各ソフトの解説は日本語で表示される。

ただ、何でも登録できるかといえばそうではなく、マイクロソフトのサイトで提供される以上、もちろん動作検証やWeb PIに合わせた設定が必要になります。Web PI/Web アプリケーション ギャラリーではこれらを検証するためのソフトウェアも提供されており、検証、登録の手順もわかりやすく説明されています。

Windows Web アプリケーション ギャラリー向けアプリケーション パッケージング ガイド
URLhttp://technet.microsoft.com/ja-jp/library/ee890802.aspx

これらの仕組みを使い、今後はWindowsプラットフォーム上でもOSSのWebアプリケーションが積極的に使われるシーンがますます広がっていくと思います。手軽に利用できるWindows上で、あなたもOSSのWebアプリケーションを使ってみませんか?

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