悪天候のため46年ぶりとなる皆既日食を見逃し、2012年こそ必ず金環食を見て感動してやるぞと意気込んでいる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。
時間を有効活用するプロモーション
2009年7月13日にリニューアルオープンした、宅配ピザチェーン「ドミノ・ピザ」の『ドミノオンライン本店』です。
『ドミノオンライン本店』では宅配ピザの注文を受け付けていますが、注文したピザの調理から配達までの工程をウェブサイト上でリアルタイムに確認できるという、「ピザトラッカー」というシステムが用意されています。
さらに、それと連動する形で「ピザトラッキングショー」という調理の様子を紹介する映像が配信されます。このハイライト映像は、ドミノ・ピザのYouTubeチャンネルでも公開されていますが、実際に配信されるものとかなり異なりますので、お得なクーポンなどもありますし、一度ピザを注文して体験してみることをお勧めします。
"空白の時間"をどう使うか
ピザを注文したユーザーは、配達までの間、常に頭の片隅で「ピザはいつ配達されるかな」と考えています。とはいえ、実際は注文した時間から配達時間を推測して、それまでは"別の行動"をしながら、ピザの到着を待つのが普通でしょう。
また、「受付から配達までを確認できるというシステム」は、宅配便などですでに採用されています。しかし、それらは文字を中心とした地味で味気のないもので、リアルタイムに確認したいとは思えないものです。
このウェブサイトでは、今ピザがどこまで調理されているか知らせ、さらにこだわりの調理工程を映像で見せることで、注文から配達までの時間、すなわち"別の行動"をする時間を、ユーザーを引き込むプロモーションとして有効に利用しています。
ユーザーをただ待たせるのではなく、アピールできる時間を見つけて積極的に利用するという、待ち時間の質を変えてくれるようなウェブサイトが、今後も次々と出てくることを期待したいと思います。
よみがえる歴史的偉業
1969年7月16日にアメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられた、アポロ11号の有人月面着陸成功40周年を記念するウェブサイト、『We Choose The Moon』です。
さまざまな資料とデータを用いて、アポロ11号の打ち上げから月面着陸までを全部で11のステージに分割して映像で表現していきます。また、NASA(アメリカ航空宇宙局)の保管する写真や記録映像なども閲覧できます。
"40年前と同じ時間に当時の模様をリアルタイム中継する"ということで、3つのTwitterアカウントを使って管制塔とアポロ11号のクルーとのやり取りを再現させるなど、非常に大掛かりな仕掛けとなっています。
また、イベントを見逃さないように、各ステージの開始時間を自動的に知らせるAdobe AIRのウィジェットを配布するなど、ユーザーへの気遣いも感じられるウェブサイトとなっています。
時間を経ることで見える情報
2009年はアポロ11号の歴史的偉業から40周年ということで、NASAがアポロ11号の実況中継配信をしたり、検索エンジンGoogleのロゴが月面のクレーターに変化したりと、インターネット上でも多くの記念イベントがありました。
そんな中で公開されたこのウェブサイトですが、多くの情報を当時は実現が不可能だった形で視覚化・再構成することで、今までにない分かりやすい形でアポロ11号の月面着陸を追体験させることに成功しています。
個人的には、今まで静止画や文章を中心とした情報によっておぼろげに頭の中に浮かんでいたイメージが、イベントが進行するごとにはっきりとした形となり、アポロ11号についての理解と興味をより深めることができました。
今後もこのような歴史的イベントを、さまざまなデータを駆使して、再現してくれるウェブサイトが次々と出てくることを期待したいと思います。
使えるメディア・アート
TOYOTA Belgiumによる、超高効率パッケージカー「TOYOTA iQ」のプロモーションサイト、『iQ Font』です。
4色のマーカーを取り付けたiQを運転して、openFrameworks(プログラミング言語C++によるライブラリ。習得の容易さと静止画や動画、音声などの処理速度が早く、メディア・アート作品向けのすぐれた開発環境と言われている)を使ったアプリケーションで、その軌跡を追尾・記録してオリジナルフォントを制作するという内容です。実際の制作作業の様子も映像として公開されています。
ユーザーに使ってもらえるもの
このプロモーションで制作されたOpenTypeフォント「IQFONT-bold」は、ダウンロードが可能となっており、さまざまなアプリケーションで使用することが可能です。
プロモーションサイトなどでダウンロードが可能なものはいろいろありますが、ユーザーにとって使い勝手の悪いものも多いです。しかし、このフォントはさまざまな場面で使用することができそうなほど、クセがなく美しいフォントに仕上がっています。
このフォントのように、常に使えるような実用的なものをユーザーに提供することが出来れば、それを使う度に、このプロモーションのことをユーザーは思い出すでしょう。
またフォントを使って何かを表現し、その詳細を他の人から聞かれれば、当然プロモーションのことを説明することになるため、自然に広がっていくという効果を生み出すでしょう。
ユーザーが身近に感じ、常に使ってもらえるものをどうやって提供していくのか。今後のウェブプロモーションで重要な考え方の一つになっていくかもしれません。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。