読書の秋、芸術の秋、そして何より食欲の秋。何を食べてもおいしく感じつつも、少しは自分の体重管理もしなくちゃいけないなあと考えている今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた素晴らしいサイトの特徴を、いくつかお話したいと思います。
ユーザーにより近づく第一歩
デザイナーの荻野いづみさんがクリエイティブディレクターを務めるファッションブランド、 アンテプリマ(ANTEPRIMA)のウェブサイトがリニューアルされました。
図1 大幅に再構築されたアンテプリマのウェブサイト
credit: FICC inc.
最近増えてきた、メガドロップダウン式のナビゲーションメニューなども特徴のひとつなのですが、リニューアル前のFlashを前面に押し出したイメージ中心のウェブサイトから、アンテプリマに関する情報の発信が中心のウェブサイトへと、大幅に再構築されています。
図2 ユーザーへの情報発信が重視されている
FICC inc.の荻野英希さんのBlog では、近年のラグジュアリーブランドを取り巻く環境とそのウェブサイトのありかたに関する考察とともに、今回のアンテプリマのリニューアルに関する詳しい解説が行われていますので、ぜひ一読することをお勧めします。
情報をどう伝えていくか
数年前まで、Flashで作られたウェブサイトでは、個別ページへのリンクが問題になっていました。Flash内の特定のページに専用のURLを持たせることができなかったため、リンクを貼ろうとしても、そのページへのパーマリンクが存在せず、結局、Flashのトップページをリンクするしかないというものでした。
現在では、SWFAddress (Flash 8からサポートされたExternal Interface classを使って、個別のリンクが設定できる)などが広く使われているため、各ページに対してパーマリンクが表示できないというFlashのウェブサイトは、ほとんど見かけなくなってきています。
とはいえ、Flash内のテキスト情報を検索エンジンが認識しづらいなど、ユーザーに情報をスムーズに提供できない問題がまだまだ存在しています。それらの問題点を解消するための第一段階となった、今回のアンテプリマのリニューアルがどのような結果を生んでいくのか。“ ラグジュアリーブランド” というジャンルを越えて、これからのウェブサイトのあり方として、非常に興味深い一例になるのではないかと期待しています。
直感的なツールが生み出す“楽しさ”
立体的なドット絵を作ることができるウェブサービス、『 Q-BLOCK』です。
図3 ユーザーの作った3Dのドット絵が並ぶ
credit: Kazuya Okuyama
マウスを使って16×16×16マスの空間にブロックを追加・削除したり、色を変更したりすることで、立体的なドット絵を制作できます。さらに、他のユーザーが作った作品を参考に編集して、新たにドット絵を制作することも可能です。
図4 ドット絵を制作するエディット画面
ドット絵はマウスを使っての回転や、マウスホイールによる拡大・縮小が可能です。さらに、制作したドット絵は、 PCの壁紙や携帯電話の待ち受け画像としてダウンロードもできます。
図5 tmixを利用してTシャツもデザインできる
また、Tシャツ作成サービス「tmix 」と連携して、作成したドット絵をTシャツのデザインとして利用することができるなど、新たな広がりも見せています。
マニュアルがいらない理由
以前、私も3Dのモデリングに挑戦したことがありますが、代表的な3D制作ソフトウエアなどで用いられている第三角法による三面図(正面図、平面図、側面図の3つで立体の形状を表す図面のこと)にどうしてもなじめず、制作を断念しました。
『 Q-BLOCK』では、そんな私でも楽しくドット絵を制作することができました。過不足のない機能のバランスの良さもその理由ですが、何よりもどういう機能で何ができるのかが、数回のマウス操作ですぐに理解できることが最大の理由でした。
『 Q-BLOCK』内には各機能を丁寧に説明したヘルプや、ドット絵の制作手順を示した詳細なマニュアルなどは用意されていません。ですが、直感的に使えるツールを用意することで、ユーザーに自分の思う通りに制作できるという“ 楽しさ” を提供することに成功しています。
さまざまな機能が直感的に気持ち良く使えるこのウェブサービス。これ以上説明するのは野暮というものですので、ぜひ一度、体験してもらいたいと思います。
みんなでつくる、クルマ社会の未来
Hondaのハイブリッド自動車「インサイト」に搭載されている、ドライバーの低燃費運転をサポートするエコアシスト(エコロジカル・ドライブ・アシスト・システム)をフィーチャーしたレースゲーム、『 Formula E』です。
図6 マウスを使った3Dのレースゲーム
credit: 1-10design, Inc.
車のレースゲームとしては珍しく、ハンドルの操作はありません。ユーザーはマウスをドラッグしながら、アクセルとブレーキを操作してゲームを進めていきます。公道が舞台となっていることもあり、実際の交通規則に基づいた行動が要求される(赤信号で停止する、制限速度を守るなど)という、とても面白いルールになっています。
図7 運転中は燃費に関係する情報が表示される
また、運転中に「最も燃費が良くなるには、どれくらいのスピードが良いか」という表示が出たり、レース終了後にアクセルやブレーキの使い方が効果的だったのか評価されたり、ゲームの所々で、車の燃費を良くするための説明が出てくるのも特徴的です。
もちろん3D表現が用いられているにもかかわらず動作が軽快なことや、ゲーム後に表示される燃費のランキングシステム、選択できるコースが5種類も用意されているなど、ゲームとしてのクオリティも高いレベルに仕上がっています。
環境に対する企業の取り組み
Hondaは2009年6月より、「 インサイト」に搭載されているエコアシストとインターナビの通信機能を活用して、『 エコグランプリ 』というウェブサイトを始めています。
図8 燃費ランキング情報が表示される『エコグランプリ』
『 エコグランプリ』では、全国を走る「インサイト」の燃費情報を収集して、燃費の良さをランキング形式で発表することで、オーナーの低燃費運転技術の向上を競います。さらに無料会員制のインターナビ・プレミアムクラブのウェブサイトでは、低燃費運転の上達を確認できるようになっています。
すでにHondaは「Honda Green Machine(ホンダ・グリーン・マシーン) 」という環境に配慮した商品の広告メッセージを打ち出していますが、「 インサイト」の製造・販売だけでなく、ドライバーの低燃費運転技術の向上を支援することで、車のオーナーたちとともに、地球環境にやさしいクルマ社会を作り上げようとしています。
“ 商品を売るだけでなく、環境へも配慮する” という企業の姿勢が当たり前となってきたこの時代に、ユーザーと協力して未来を創ろうとする、Hondaの取り組みがどうなっていくのか。そして、他のメーカーはどのような形で環境への貢献を行うのか。自動車業界の今後の動きと合わせて、注意深く見守ってきたいと思います。
というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。