いま、見ておきたいウェブサイト

第106回Google Street View Hyperlapse、Scratch、Domino's Live and Uncut

通勤中に電車を途中下車し、どこかにふらっと出かけたくなるような、さわやかな天候が続いている今日このごろ、皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も個人的に感じた、素晴らしいサイトの特徴をいくつかお話したいと思います。

画像から生み出される、美しい動画

Google Street View Hyperlapse

カナダ・オンタリオ州トロントのデザイン会社、Teehan+Laxによるプロジェクト、⁠Google Street View Hyperlapse』です。

図1 Google Street Viewを利用して動画を作る『Google Street View Hyperlapse』
図1 Google Street Viewを利用して動画を作る『Google Street View Hyperlapse』
credit:Teehan+Lax

ウェブサイトの画面右側に表示される「Google Maps」上で、AとBの2つのマーカーを使って「始点」「終点」を選択すると、その2点間を移動する動画が自動的に作られます。作成した動画上では、マウスをドラッグすることで、リアルタイムに視点の変更が可能です。

図2 作成した動画は、自由に視点の変更が可能
図2 作成した動画は、自由に視点の変更が可能

「画像の連続再生=動画」という気付き

行き先までの経路をわかりやすく教えてくれる「Google Street View」は、驚くほど便利なツールです。事前に確認しておけば、初めての場所でも、落ち着いて迷うことなく行動できるなど、その便利さは誰もが認めるところでしょう。

「Google Street View」では、画像を切り替えることで場面の移動を行いますが、⁠Google Street View Hyperlapse」では、その「切り替わる画像を連続再生すれば、動画になる」という、動画の仕組みそのものを生かしたアイデアが実に素晴らしいと思います。本来なら「Google Street View」で実現されていてもおかしくない機能でしょう。

「Google Street View Hyperlapse」で制作された動画を使ったプロモーション映像

Google Street View Hyperlapse from Teehan+Lax Labs on Vimeo.

現在、制作した動画を共有するなどの機能はありませんが、ソースコードがGithubで公開されており、今後、新しい機能が次々と追加される可能性も秘めているこのウェブサイト。こうした素晴らしい発想の転換から生まれてくるウェブサイトを、これからも期待したいと思います。

より身近になった、プログラミング環境

Scratch - Imagine, Program, Share

2013年5月9日にリリースされた、プログラミング言語環境「Scratch」の最新版「Scratch 2.0」です。

図3 子供をターゲットとしたプログラミング言語「Scratch」の最新版
図3 子供をターゲットとしたプログラミング言語「Scratch」の最新版

MIT Media Labによって開発された「Scratch」は、8歳~16歳の子供をターゲットとした、オブジェクト指向のプログラミング言語です。さまざまな機能を持ったブロックを組み合わせることで、アニメーションやゲームなどを作成しながら、プログラミングが学べます。

図4 ブロックを組み合わせることで、プログラミングが学べる
図4 ブロックを組み合わせることで、プログラミングが学べる

今回のリニューアルでは、ブラウザ上でプロジェクトの作成・編集・閲覧などが可能となり、ウェブカメラの利用が可能になるなど、新しい機能も追加されています。

ブラウザ上のアプリケーションが変えるもの

PCの低価格化も大きな理由のひとつですが、現在、子供たちがコンピューターを利用する時間は格段に増えています。学校の授業では、基本的な操作や「ブラウザ」⁠メール」などの使い方だけでなく、⁠プログラミング」を教える機会も増えており、筆者の子供時代と比較すると、うらやましいほどの環境が整っています。

今回の「Scratch 2.0」は、ブラウザ上で動作するアプリケーションとなっています。プロジェクトの制作が可能になっただけでなく、ソフトウェアをインストールする手間もなくなり、インターネット環境が整っていれば、どこでも学習を始められるようになりました。

こうしたブラウザという最も身近なソフトウェア上で、デスクトップのアプリケーションが動くようになる例は、今後も増えるでしょう。誰もが使い慣れた環境で多彩なツールが動くようになった時、特に、子供たちのような好奇心が旺盛な世代にどのような影響が出てくるのか、注視していきたいと思います。

「ピザができるまで」全部見せます

Domino's Live and Uncut

実際の店舗でピザが焼きあがるまでの工程をそのまま生中継するという、Domino's Pizzaのプロモーションサイト『Domino's Live and Uncut』です。

図5 ピザの完成までを生中継する「Domino's LIVE」
図5 ピザの完成までを生中継する「Domino's LIVE」

「Domino's Live」と名付けられたこのプロジェクトは、"When you make great food, you have nothing to hide.(素晴らしい食べ物を作るとき、隠すものは何もありません。)"という自信満々のメッセージの通り、アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティーにあるDomino's Pizzaの店舗に5台のカメラを設置して、ピザができあがるまでの各工程を、動画を使って生中継するというものです。

図6 ピザができあがるまでの各工程が生中継される
図6 ピザができあがるまでの各工程が生中継される

ウェブサイトでは、ピザが完成するまで工程(⁠⁠Dough(生地をこねる⁠⁠Topping(トッピング⁠⁠In Oven(オーブンに入れる⁠⁠Out of Oven(オーブンから出す⁠⁠)を、ノーカット(編集なし)で放送しています。ユーザーはカメラを自由に選択して、それぞれの工程をじっくりと視聴できます。この生放送は、現地時間の午前11時(日本時間:午前2時)から、毎日12時間行われています。

「生中継」だから伝わること

Domino's Pizzaは、2012年の後半から、ピザが焼き上がるまでの各工程をお客にそのまま見せるというコンセプトの新店舗「Pizza Theater」を展開しており、今回の「Domino's LIVE」は、そのインターネット版とも言えるものです。

顧客が目にすることのない調理現場を生中継することで、隠し事のない企業であることをアピールするこのプロジェクトは、よほどの自信がなければできません。生放送の前ではごまかしが効かないため、単純なミスも含め、全てをそのまま放送しなければならず、カメラの前の従業員もプレッシャーを感じるでしょう。

「Domino's LIVE」を説明している動画

もちろん、こうした取り組みを記録し、映像として顧客に提供することも可能です。ただし、編集作業が行われることを考えれば、完成した美しい映像に感動することはあっても、それ以上の感情や心の動き、そして、行動を顧客に呼び起こさせるのは難しいでしょう。

企業の顧客に対する情報公開が当たり前の時代だからこそ、⁠他とは違う⁠企業と顧客とのより深い信頼関係を築くための方法が必要になってきます。今回のような、企業の透明性とエンターテインメント性を両立しつつ、企業の⁠誠実さ⁠を実際の行動で伝えようとするプロジェクトは、今後、さらに拡大していくのかもしれません。

というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

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