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第138回 日産:#猫バンバンプロジェクト,NHK VR NEWS,Amazon Lumberyard

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VRが変える,情報の姿

NHK VR NEWS|NHKオンライン

「VR(Virtual Reality:ヴァーチャル・リアリティ⁠⁠」の技術を使って,さまざまなテーマの情報を伝えるNHKオンラインの特設サイト『NHK VR NEWS』です。

図3 ⁠VR」の技術を使っている,NHKオンラインの『NHK VR NEWS』

図3 「VR」の技術を使っている,NHKオンラインの『NHK VR NEWS』

ウェブサイト上に漂う幅広いジャンルの記事を選択すると,360度パノラマ撮影によって制作された動画を使ったコンテンツが再生されます。360度パノラマ撮影された動画は,マウスや画面内のインターフェースを利用して,さまざまな角度から閲覧できます。

図4 様々なテーマの記事を選択すると,360度のパノラマ撮影がされた動画を使ったコンテンツが再生される

図4 様々なテーマの記事を選択すると,360度のパノラマ撮影がされた動画を使ったコンテンツが再生される

2016年は「VR元年」となるか

2016年は,⁠VR元年」などと呼ばれています。⁠Oculus Rift」⁠PlayStation VR」⁠HTC Vive」といった,消費者向けのVRデバイスが次々と販売されることで,VR向けのコンテンツ拡大も見込まれています。すでに海外では,Discovery ChannelによるDiscovery VR⁠,ABC(American Broadcasting Company)によるABC News VRが始まるなど,VRコンテンツの制作も活発になっています。

図5 積極的にVRコンテンツを利用している『ABC News VR』

図5 積極的にVRコンテンツを利用している『ABC News VR』

2月21日にスペイン・バルセロナで開催されたSamsung Electronicsのイベント「Galaxy Unpacked 2016」に登壇したFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOがFacebookに投稿した写真は,VRコンテンツが普及した未来が来ることを予感させるものでした。

図6 Samsungの「Gear VR」を装着した観客のそばを歩いてステージへと向かうFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO

図6 Samsungの「Gear VR」を装着した観客のそばを歩いてステージへと向かうFacebookのマーク・ザッカーバーグCEO

ヘッドマウントディスプレイを着用した観衆が,誰ひとりとしてザッカーバーグ氏に気がついていないこの写真は,一見,ゾッとしてしまうような違和感を感じます。ですが,VRが一般的に普及すれば,こうした光景も私たちにとって⁠見慣れた日常⁠に変わるかもしれません。そのスタートとなる,今年のVRに関連する動きに注目です。

ゲーム制作の環境,無料で提供します

Amazon Lumberyard - Free AAA Game Engine

Amazonが発表した,クロスプラットフォーム3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイトです。

図7 Amazonによる無料の3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイト

図7 Amazonによる無料の3Dゲームエンジン「Amazon Lumberyard」のウェブサイト

ドイツのCrytek社が開発した「CryEngine」をベースとしたこのゲームエンジンは,高品質の3Dゲーム開発を対象としたマルチプラットフォーム対応エンジンであるにもかかわらず,無料で提供されます。Amazonは,数年前からゲーム制作会社「Double Helix Games」やゲーム映像配信サービス「Twitch」を買収するなど,ゲーム業界に積極的な投資を行い,その影響力を強めてきました。今回,さらにゲームエンジンである「Amazon Lumberyard」が,そのラインナップに加わったことになります。

変貌しつつある,Amazonの姿

無料で提供されているゲームエンジンには,UnityUnreal Engineなど,ゲーム業界で多くの支持を得ているものがすでに存在しています。こうした後発組にとっては非常に厳しい環境の中,Amazonは,なぜゲームエンジンを無償で提供してきたのでしょうか。

Amazonが提供する「Amazon Lumberyard」は,自社で提供しているクラウドコンピューティングサービス「Amazon Web Services」との連携が非常に強力です。今回,⁠Twitch」関連の機能だけでなく,⁠Amazon Lumberyard」専用の「Amazon GameLift」⁠マルチプレイヤーゲームの管理サービス)と呼ばれる「Amazon Web Services」の新サービスも発表してきました。

「Amazon Lumberyard」が対応しているサーバやデータベースは,基本的に「Amazon Web Services」です。現在のゲーム開発においては,こうしたバックエンド側のインフラは必要不可欠であるため,無料のゲームエンジンを使ってもらいながら,⁠Amazon Web Services」の販売を増やそうというAmazonの狙いが見えてきます。

Amazonといえば,⁠Amazon.com」における ⁠EC事業」が有名です。Amazon.comがアメリカ証券取引委員会に提出した2015年の年次報告書では,2015年の「Amazon.com」の全世界での売上額は,1,070億600万ドルですが,営業利益率は2.1%と,薄利多売の事業です。一方,⁠Amazon Web Services事業」の売上高は78億8000万ドルで,前年度の69.7%増,さらに営業利益率は2015年第4四半期には28.6%という,非常に高い数値を達成しています。

図8 高い営業利益率を誇る,Amazonの「Amazon Web Services」

図8 高い営業利益率を誇る,Amazonの「Amazon Web Services」

もちろん,⁠Amazon Web Services事業」の営業利益率が高いとはいえ,世界的な規模で運営されている「EC事業」の収益額と比べれば,まだまだ非常に小さい事業(約7%程度)です。しかし,売上額の伸びや営業利益率の高さを考えると,今後,Amazonの屋台骨を支える中心事業へと育つ可能性は否定できません。

音声認識やドローンを使った配送など,現在も新たな技術・分野に積極的に投資を進めているAmazonですが,⁠EC事業の会社」と言われなくなる日も,そう遠くはないかもしれません。

というわけで,今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。