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第171回 2022年特別編 2021年の特徴,2022年のこれから

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2022年のこれからについて

まず注目されるのは,いわゆるバズワードともなっている「メタバース(コンピューターネットワーク上に構築された仮想空間やサービス⁠⁠」関連の動きです。

さまざまな企業がこのメタバース事業の拡大に力を入れており,すでに優秀な人材の取り合いが始まっています。最近では,MicrosoftとMetaのメタバース人材の引き抜き合戦が話題になりました。

強力なブランドを有する企業は,⁠仮想空間上でもブランドの育成が可能」と考えているようで,メタバース関連の事業に先行投資をする事例も出ています。スポーツメーカーのNikeはバーチャルスニーカーを制作するRTFKTスタジオを買収し,バーチャルスニーカーや衣料品を製造・販売するための商標登録の出願も行っています。

図6 2021年11月,Nikeはオンラインゲーミングプラットフォーム「Roblox」上に「NIKELAND」を開設したことを発表。デジタルショールームでは,ユーザーが自分のアバターにNike製品を装備できる

図6

2022年には,MetaやSony,Appleから新たなヘッドセットが登場すると言われており,メタバースがより一般的な存在に近づくでしょう。メタバース内で存在を示すスタートアップ企業も登場していますし,周辺環境を含め,大きな資金が投入される流れは2022年も続きそうです。メタバースを起点として,今後大きく成長する企業が出てくるかもしれません。

前述したプライバシー保護の大きな流れの中では,収益拡大領域を拡大するGoogleの金融事業への参入に注目しています。

昨年7月には日本のスタートアップ資金移動業pring(プリン)を買収しています。pringはQRコード決済や個人間送金が可能なアプリ,社員の経費精算などの法人送金サービスを展開しています。Googleはスマートフォン決済領域で「Google Pay」を提供していますが,キャッシュレス決済の普及がようやく普及しつつある日本で,これからどのようなサービスを展開するのか興味深いところです。

図7 Googleが買収したpringの提供するスマートフォン決済アプリ「pring⁠⁠。QRコード決済やワリカン時などの個人間送金が可能

図7

アメリカでは,試験的に運用されていた自動運転事業が,いよいよ一般に向けてサービスを開始します。以前から自動運転サービスを進めていたWaymoやCruiseなどの企業は,特定地域でのサービス申請が認可され,すでにセーフティードライバーなしのサービスを開始しています。

動画3 サンフランシスコで一般向けに公開されたCruiseの無人運転ロボタクシーサービスの様子。乗車料金は無料で,乗車の申し込みはウェブサイトから受け付けている

法整備が遅れている日本ですが,今年3月に道路交通法の改正案が閣議決定され,レベル4の自動運転車の公道走行を許可する制度が含まれました。早ければ今年度中にレベル4の公道走行が可能となるため,日本でも自動運転を利用したモビリティサービスを実際の生活の中で見かける機会があるかもしれません。

モビリティ業界に関しては,他業種からのEV事業参入にも注目です。近年,既存の自動車メーカーだけでなく,台湾の鴻海精密工業のような異業種からの参入が話題になりました。

動画4 昨年10月に発表された,鴻海精密工業による初のEV試作車のひとつ,SUVタイプの「Model C⁠⁠。今後,年20%以上の成長が見込める分野としてモビリティ業界に参入してきた

今年3月には日本企業のSonyとHondaが,高付加価値のEVを共同開発・販売,およびモビリティ向けサービス提供を事業化することで合意しました。

EVでは車両の製造といったハード面だけでなく,バッテリー管理や車載センサーの動作といったソフトウェア面でも高い技術が必要になってきます。お互いの企業が持つ強みを組み合わせたこのプロジェクトの結果次第では,現在すべてを自社で賄おうとしている自動車メーカーの動きを大きく変えていくかもしれません。

日本では,新型コロナによる影響もあり,DX(デジタル・トランスフォーメーション)による業務の効率化,競争力ある組織変革を進める企業が増えてきました。この場合,どの企業も優秀な人材を採用しようとします。しかし,新型コロナ感染拡大以降,デジタル関連の人材の奪い合いは激しさを増し,人材獲得は難しくなっています。また実際の業務では事業に関する知識も必要です。複数の分野で高い知識と経験を持つ人材は,世界中で獲得競争が行われており,すべての企業が必要な人材を揃えることは困難を極めます。

こうした中で注目されるのが,現場で働いている社員を再教育して,必要なデジタル技術を身に着けてもらう制度です。すでに既存の社員に技術を身に着けさせ,自社に必要なデジタル人材として育成する日本企業も出てきています。日本のデジタル人材獲得不足の解消となるのか注目しています。

それ以外にも,BNPL(Bay Now Pay Later)事業の拡大,高額なフリップ型のスマートフォンの普及,コンテンツの獲得合戦が激しさを増すゲーム業界の買収合戦,広告ありプランを導入する月額制動画サービスの成熟化などにも注目したいところです。そして,2022年に最大の影響を与えるのは,2月のロシアによるウクライナ侵攻でしょう。世界の景気動向に関連するビジネスやサービス,人の動きや物価高,エネルギーや金融政策など,中長期に渡って大きな影響を与える可能性があり,注視する必要があるでしょう。

今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。