クラウドの普及やDX
手軽にウェブサイトが制作できるツールの特徴や利用の拡大原因を探りながら、内製化によって変化を迎えている、ウェブサイトの制作環境と今後の方向性を探ります。
ノーコードデザインツールとは
ノーコードデザインツールでは、直感的なインターフェースと視覚的な操作が重視されています。ユーザーは、基本的なPC操作だけで、テンプレート上のレイアウト調整やフォント変更、文章や画像の差し替えなどを行いながら、制作を進めていきます。
ツール名 | 特徴 | カスタマイズ性 | リアルタイム編集 | デザインインポート | 価格 |
---|---|---|---|---|---|
Studio | 日本語に完全対応。デザインだけでなく、CMSやフォーム、分析ツールなど、運用・ |
非常に 高い |
可能 | 可能 |
無料あり |
Webflow | テンプレート数が多い。EC向けのプランもあり。有料プランで完成デザインを書き出せるなど、製作者からの支持が高い。GSAPも買収。 | 非常に 高い |
不可 | 可能 |
無料あり |
Wix. |
他社に先駆けてAIを活用した |
高い | 不可 | 可能 |
無料あり |
Jimdo | AIを使い、最速わずか3分でウェブサイトを構築する |
低い | 不可 | 可能 |
無料あり |
Framer | プロトタイプツールからノーコードデザインツールに進化。独自のUIコンポーネントを提供。ウェブサイトのパフォーマンス関連機能が多い。 | 高い | 可能 | 可能 |
無料あり |
※価格は2024年12月現在
テンプレートをそのまま使用するだけでなく、用意された各種コンポーネントを組み合わせたり、追加でコードを記述したりすることで、より複雑なデザインやレイアウト、アニメーションの追加も可能です。
特定の条件下での動作や外部APIとの連携といった、さらに詳細な設定ができる機能も提供されています。使いこなせば、高度なカスタマイズによる独自機能の実装も可能です。
ノーコードツールが普及した要因
これまで多くのウェブサイト作成ツールやアプリケーションが登場しましたが、幅広い支持は得られませんでした。なぜ、ノーコードデザインツールは急速に普及しているのでしょうか。
使いやすさと、技術の学習コストの低さ
ノーコードデザインツールの制作作業は、
簡単なインタラクションやアニメーションも、コードを書かずに追加が可能です。またツール自体はクラウド上で作業するため、ソフトウェアのインストールも必要なく、開発環境を選ばない点も特長の一つです。
重視される「スピード」と「コスト」
近年、企業におけるウェブサイトの内製化が進んでいます。内製化で重要視される点が、ウェブサイトの運営に関連する
外部に制作を依頼している場合、コンテンツの変更には時間がかかります。内部で即時更新したい場合には、社内に技術者を常駐させ、ウェブサイト自体にもCMSの導入が必要です。どちらも時間が必要で、追加コストが発生します。
この
ユーザー環境や技術への対応
ウェブサイトは、制作後もユーザーの閲覧環境や技術の変化に合わせた対応が必要不可欠です。
このため大企業では、専門的な知識と技術経験のある外部の制作会社と協力して、ウェブサイトを制作します。一方で中小企業は、外部への依頼は難しく、変化に合わせたウェブサイトの制作が厳しい状況です。
ノーコードデザインツールが提供するテンプレートは、最新のユーザー環境や技術に対応済みです。テンプレートからウェブサイトを制作すれば、外部の環境や変化にすぐ対応できる仕組みになっています。
ウェブサイトの制作側への影響
内製化が進み、コンテンツの制作や迅速な更新が可能になると、ウェブサイトを依頼されていた制作側には、どんな変化が起きるのでしょうか。ノーコードデザインツールの普及が、ウェブサイトの制作に与える影響を考察します。
ビジュアルデザインの向上と依頼内容の高度化
近年、優れたウェブサイトを紹介するギャラリーサイトで、ノーコードツールで制作されたウェブサイトの紹介回数が増えています。3D表現やアニメーションを駆使した事例もあり、世界的にビジュアルの品質が底上げされているのを感じます。
ビジュアルデザインについては、ノーコードデザインツールのテンプレート以上の品質が求められ、クライアント側が要求するデザイン品質の最低基準が上がります。
クライアント側の要望以上に答えられる、デザイン実績ある制作会社の数は限られてきます。高いデザイン基準を満たすウェブサイトの制作では、制作会社の同士の受注競争の激化も考えられます。
新技術による、経験則や知見の獲得
数多くのウェブサイトを制作してきた制作会社には、目的達成や効果的なデザインに関する、経験則や知見の深さがあります。この部分が、制作会社の持つ強みと言えます。
ノーコードデザインツールでは、新たな表現方法が定番化すれば、同様の表現を実現させるライブラリやコンポーネントが提供されます。またAI
ツールの進化によって、これまでのウェブサイトの制作・
未来はどうなるのか
ここまで、ノーコードデザインツールと内製化の進む企業側、制作側の変化を説明してきました。AIなどの新技術や意識が変化したクライアント側、競争が激化している制作側。それぞれの今後を、いくつかの観点から予測してみましょう。
生存競争の激しさが増す、デザインツール
2024年1月、
その後、
デザインツールは、顧客の要望に素早く対応できるものだけが、シェアを獲得して拡大していきます。最近は効率化の要望から、AI機能の追加が目立ちます。今後は他のツールよりも早く、AI機能を実装できるかが勝負になるでしょう。
内製化で進む、ルール化や人材の育成
内製化によって、組織におけるデザインルールを整理した
「デザインガイドライン」
「デザインガイドライン」
クライアントとの協調体制と独自性の確立
ビジュアルデザインや技術力を中心としたウェブサイトの制作を売り込む。こうした提案は、内製化の進んだ企業に受け入れられるのは厳しい時代です。
企業側の要望を満たすには、課題に対してのデザインをベースとしたビジネスの提案が必要です。ウェブサイト制作だけのつながりではなく、クライアント側とビジネスを共同運営して、結果を出すという信頼関係も求められます。
コンサルティング能力を含めた総合力や専門分野に特化した高い技術力、綿密な分析による集客と成果力など、制作側が顧客との信頼関係を獲得するための変化が、業界での独自性を生み出していくはずです。
デバイスの変化による、デザインの定型化
ユーザーがコンテンツを消費するデバイスは、スマートフォン中心の時代です。スマートフォン上での情報伝達には、余計なものは必要ありません。わかりやすくシンプルで、素早いことがすべての基本です。
基本のレイアウトやページ構成は定型化され、ウェブサイトの目的に合わせたデザインの定型化が進みます。ウェブサイトがより洗練され、ビジネスとしての結果を出せる、最適パターンを持ち始めています。
目的に合わせた定型化がすすめば、さらに効率化も進みます。デザインツールへのAI機能導入や、ウェブサイトやアプリのプロトタイプのAI自動生成などが急速に進化していくのは、自然な流れなのでしょう。
まとめ
ノーコードデザインツールの登場で、ウェブサイト制作は身近なものになりました。内製化が進む企業の依頼を受ける制作側には、課題の解決とウェブサイトの枠にとらわれない、新たな提案が求められます。
普及が広がれば、ウェブサイトの目的に合わせた
その一方で、目的やコンセプトをしっかりと練り上げ、贅沢に時間と手間、予算をかけたウェブサイトの制作は、特別な意味を持ったものになるはずです。
決まった目的に合わせて手軽に作る