WSEA(Web Site Expert Academia)

第20回 リニューアル直前!特別編

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前田:

ふだん飲みながら話していることも,対談という形に落として,アカデミックな視点からいろんなジャンルでつなげてみましょう,と粒を揃えてみると1つのテーマが見えてくる。これは僕1人だけだとコンテンツ化されなくて,編集作業という別の人間が整理をすることで形になってくるもの。

“Web 2.0⁠とくくられるサービスの中で,うまくいっているものと明らかに失敗しているものがありますよね。それはあまり強く意思を持たないコンテンツが大量に蔓延していて,それを汲み取る検索エンジンの仕組みと,どうしてもコンペティティヴな関係にある。このSEO特集(本誌#14)も,ある意味では商売をしている人もそこに便乗してしまっている。そうすると,本当に純粋な意志や意欲を持った人が,コンテンツを正確に届けるという経路が複雑化してしまって。

たとえば紙のメディアであれば,書店という限られた空間でありながら,最適化されたインターフェースがある。自分の生き方や職業に適合したコンテンツを見つけるのには,そんなに時間がかからないですよね。でも,これをWebで満たそうとするとすごく難しい。要は,強い思いと弱い思いが,粒の揃わない状態で大量に同じ空間に存在していますから。

そういう意味では,来年以降,特定の人が特定の状況で,ある時間にどの空間にいて,その空間に来るまでの過去の履歴など,全部ふまえたうえで次をサジェストする仕組み,その人の思いを汲み取る仕組み,もしくはその思いを伝える仕組み。そういうのは,まだまだたくさん出てくる可能性があるというか…出てきてもらいたいですね。

馮:

おそらく,現状の環境でそのための場を作るということは,それほど難しくなくスマートにできると思います。大事なのは,その場をどうやってユーザに届けるのかっていうことで。その動きが次のWeb業界のフェーズの1つになっていくのかと思います。昨年からのSNSやblogブームは,こうした意思の強い弱い情報が混在する現在の状況に寄与している部分がすごくありますね。今まではあえて制限しなかったことで,混在しているのだと思います。

来年以降はこの部分がどう作り込まれて洗練していくのか,あるいはもっと混沌としていくのか,気になるところです。

前田:

改めてこの対談連載を振り返ると,最初にWikipediaの集合知の話題があって,第2回目はインターフェースの話,3回目で水島さんと情報空間の狭さや広さというのを検索エンジンをメインに扱い,4回目で宇宙という自分の未知の広さをどうエクスプローラするのかいう話題を。5回目で自分たちの足場といいますか,生物的な起点の話になり,そして6回目で肉体の話に。

今度は未来ですね。自分が踏み出した先に何が寄与するのか。寄与するということが,今は推奨エンジンなどといった言葉にしかなりませんが,もっとデリケートな言葉になるのではと思いますね。もしかしたら,推奨するのがあたりまえになって,推奨エンジンと呼ばなくなるのかもしれない。

馮:

それに加えて,より細分化されていくことも考えられます。現時点では,汎用的というか広い視点で検索がレコメンデーションされていますが,今後は検索軸とは異なるレコメンデーションも出てくると思います。

今まで以上にネット上のユーザ間の動き,言動,関係,つながりといったものの影響力が大きくなり,WebサービスやWebサイトを作っていくうえで,どこまで汲み取っていけるかが重要になりますね。

2007年のWebトレンド総まとめ

SecondLifeは化けるのか?

馮:

メディアから見て,2007年はSL(SecondLife)がプチバブルでした。とくに紙媒体がこぞって取り上げ,たくさんの書籍や雑誌記事,さらにはTV番組で紹介されたりもしました。Webの視点で見たSLというのは,アーカイブ性のない空間ではありますが,何かブレイクする,秘めた可能性があるんじゃないかと思っているのですが,どのように思われます?

前田:

僕は世界観や思想のあるサービスが好きなので,SLに関しては,世界を作るというイメージはすごく好きだったんですけど,参加する人がその気持ちを持っていないんじゃないかと,とくに日本のユーザは。

Webのときは違ったんですよ。そこで英語でコミュニケーションをしなくても,自分の手元に海外へのつながりがあるということや,自分のサイトが見られているのでは,ということをすごく意識していた。でもSLだと,日本人のユーザは外国人に話しかけられると逃げてしまう。

そこが,世界観と世界を意識したアプリケーションの中で,参加するユーザと作り手側の意識が少し乖離している感じはしますね。広告宣伝も,世界を意識したものを提案すれば良いのに,日本の企業は日本人に向けて発信しちゃうんですよね。

馮:

たしかに日本のSLは閉じた世界ですよね。以前海外のblogを見ていたら,SL内で無視する日本のユーザが多いと書いていました。

前田:

SL内で対談した様子をTVで放送するという番組も最近出てきましたよね。TVの前の人に対して活動するという…これは,SL内にいるすべての人たちに対してコミュニケーションするという動機とは違いますよね。

馮:

ええ。現時点で日本の企業がSL内で発表する動機は,先行投資の意味合い以外には,それを取り上げてくれるメディアをすごく意識しているんじゃないかと思うんです。ユーザに向けたプロモーションではなくて,ある種のPR(Public Relation)に近いものだと感じています。

前田:

サービスに対しての期待はしています。自分が接したことのないような人からも注目されるようなサービス・プロモーション設計や,コミュニティを作ろうという意識があると,もっと魅力的になるはず。

馮:

もう1,2年様子を見ないとわからないとは思いますが,そこがポイントですよね。その結果,ユーザの意識が変わらないと現状の枠を越えるのが難しいと思います。

著者プロフィール

前田邦宏(まえだくにひろ)

株式会社関心空間 代表取締役。1967年兵庫県宝塚生まれ。1990年より公共機関や企業向けデジタルコンテンツの企画制作ディレクションに従事。1998年ユニークアイディ設立(現:株式会社関心空間)。2001年クチコミ情報コミュニティサイト「関心空間」を発表。同年に関心空間エンジンを利用したASP事業を,また2005年よりメディア事業を開始。

受賞歴:
2002年10月「関心空間」にてグッドデザイン賞新領域デザイン部門入賞。
2005年9月日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞受賞。