クラウド/スマートフォン連携でクルマはどう変わる!? デンソーがSmartTech Award 2013を開催

デンソー 情報通信事業部
情報通信サービス開発室
担当次長 安保正敏氏
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自動車部品メーカーのデンソーでは、クルマや家とスマートフォン/クラウドを連携するアプリケーションやサービスを表彰する「SmartTechAward 2013」を開催しています。その内容やデンソーの意図について、同社の情報通信事業部情報通信サービス開発室 担当次長である安保正敏氏に聞きました。

クラウドとクルマがつながる時代のサービス開発のあり方とは?

現在の自動車は、高機能化・多機能化が進んだことにより、エンジンやメーター、トランスミッション、ブレーキ、パワーステアリングの制御などのために、数多くのECU(Electronics Control Unit)が搭載されるようになり、そのECU 間をつなぐネットワークとしてCAN(Controller Area Network)が広く普及しました。さらに、クルマと搭乗者をつなぐインターフェースとして、カーナビゲーションシステム(カーナビ)の存在感が増し続けています。

そして最近では、モバイルブロードバンド回線を利用したインターネット/クラウドとの連携や、モバイルデバイスとして広く普及しているスマートフォンとの連携といった取り組みも各社で進められています。こうしたテクノロジを活用し、クルマ社会の新しい社会基盤の構築に向けた取り組みを進めているデンソーにおいて現在開催されているのが「DENSO SmartTech Award 2013」です。このアワードは、自動車や住宅と連携する優れたアプリケーションやサービスを表彰するというものです。

デンソーの安保正敏氏は、このアワードのねらいを次のように説明します。

「これまで自動車は個々に走っているだけでしたが、クラウドやスマートフォンとつながることでソーシャル化が進んでいくと考えています。こうした流れを考えると、これまでのように自分たちだけでモノづくりを完結させるのではなく、異業種の企業やユーザの方々と一緒にモノづくりをする時代に変わってきているのではないかという思いがありました。また、今後電気自動車が普及し、スマートグリッドが実現すれば、自動車だけでなく住宅まで含めてスマートにコントロールできることを求められるようになるでしょう。こうした中で、クルマや住宅とITがつながることに興味があり、私たちと一緒にビジネスをやっていきたいという方を探したいということで今回のアワードを企画しました」⁠安保氏)

NaviConと連携しスマートフォンでカーナビをコントロール

DENSO SmartTech Award 2013 で募集しているのは「NaviCon と連携するもの⁠⁠、⁠CAN の情報を利用するもの⁠⁠、そして「HEMS(Home Energy Management System)など、住まいの情報を利用するもの」の3つになります。

まずNaviCon と連携するものですが、これはデンソーがiOS/Android 向けに提供している「NaviCon」と組み合わせて使うアプリやサービスが対象となります。NaviCon は対応するカーナビとスマートフォンをBluetoothでつなげることにより、たとえばNaviCon 上に表示された地図から目的地を設定すると、Bluetooth を通じてその情報をカーナビに送信するといったことが可能です。

SmartTech Award 2013のWebサイト。募集要項などが掲載されているほか、CAN連携アプリ開発のための開発キットも提供されている
SmartTech Award 2013のWebサイト。募集要項などが掲載されているほか、CAN連携アプリ開発のための開発キットも提供されている

さらにNaviCon には、ほかのアプリとカーナビのハブとしての役割もあります。URL スキーマを介してほかのアプリと連携するためのしくみがあり、これを利用することによってほかのアプリから地点情報をカーナビに送るといったことが可能です。

NaviCon との連携に対応したアプリはすでに200タイトル以上もリリースされており、たとえばジャストシステムがリリースしている「スマート名刺管理」では、カメラで撮影した名刺をOCR処理し、その名刺に書かれた住所を目的地としてNaviConに送るといった機能を実装しています。シンプルなしくみで連携することが可能なため、アイデア次第でさまざまな応用ができるのではないでしょうか。

デンソーが提供している「NaviCon⁠⁠。Bluetoothでカーナビと接続することで、スマートフォンからカーナビの地図を操作したり、目的地を設定できる
デンソーが提供している「NaviCon」。Bluetoothでカーナビと接続することで、スマートフォンからカーナビの地図を操作したり、目的地を設定できる

クルマのさまざまな情報とクラウドの連携で価値を創造

CANの情報を利用するアプリは、自動車の走行速度や燃費情報といった自動車のリアルタイムな状態を表すデータ、あるいはドアの開け閉めやヘッドライトのON/OFFといったユーザの操作をトリガとしたデータを利用します。今回のアワードでは、こうした情報を擬似的に生成して無線LAN経由でスマートフォンに送信するシミュレータが提供されるとのことで、応募者はこのシミュレータを使って開発したアプリを応募する形になります。

「走行しているクルマの中で生成される大量の情報を使うことで、さまざまなことが実現できるのではないかと期待しています。取り出した情報を単にスマートフォンで見せるだけでなく、たとえばクラウドと連携し、たくさんのクルマのデータを集めて集計したり、あるいは前後のクルマの情報と自車の情報を重ね合わせたりするなど、いろいろなことが考えられると思います。スマートフォンを使うことによってクラウド連携が実現するわけですから、その部分を有効に活用したアプリやサービスに期待したいですね」⁠安保氏)

電気自動車時代に求められる住宅の電力制御とは

3つめとして挙げられているのは、HEMS(Home Energy Management System)など、住まいの情報を利用するものです。具体的には、消費や発電、蓄電といった電力データ、家庭内のセンサーから取得したデータ、EV/PHV車の充電データを利用したアプリやサービスとなります。

「自動車の電動化が進めば、家の中で最も電気を使う家電になる可能性があります。その一番消費電力の大きい家電となるクルマと、住宅の電力システムをどう組み合わせるのか。たとえば、お父さんが帰宅してクルマの充電を始めると電子レンジが止まってしまった、というのでは困りますよね。そこで、住宅の電力システムとクルマを組み合わせたトータルの電力管理をどうデザインしていくのかが問われることになると考えています。HEMSという住宅の電力管理システムによってさまざまな情報を取り出せるようになったので、それを使った新しいアプリやサービスを考えていただきたいと思います」⁠安保氏)

この画面は、開発者に提供されるシミュレータの一例。自動車や住まいから取得したさまざまな情報をスマートフォン上で利用し、クラウドと連携することなどによって、どのような新しい価値を生み出せるのかが鍵
この画面は、開発者に提供されるシミュレータの一例。自動車や住まいから取得したさまざまな情報をスマートフォン上で利用し、クラウドと連携することなどによって、どのような新しい価値を生み出せるのかが鍵 この画面は、開発者に提供されるシミュレータの一例。自動車や住まいから取得したさまざまな情報をスマートフォン上で利用し、クラウドと連携することなどによって、どのような新しい価値を生み出せるのかが鍵

最後に安保氏は、今回のアワードへの期待を話します。

「ITの発展によって情報の世界は統合されつつありますが、今後はその中に自動車も入るようになっていくでしょう。つまり、インターネット上のオンラインの世界に、これまでオフラインだった自動車の情報が流れ込むようになるわけです。それによってどんな新しいサービスが生まれるのか。インターネットの世界で活躍しているみなさんと一緒に、ぜひ新しいビジネスを創出できればと考えているので、積極的に応募していただきたいですね」⁠安保氏)

なお、SmartTech Award 2013の詳しい内容は以下のURLのWebサイトで公開しています。興味があればぜひアクセスしてみてください。

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