PyCon JP 2020の歩き方

開催まで1ヵ月を切ったPyCon JP 2020。どんなセッションがあるのか ―「PyCon JP 2020の歩き方」と題して、その一部をスタッフの稲森と花井がお届けします。

PyCon JPとは

PyCon JPは、日本国内外のPythonユーザーが一堂に会し、互いに交流を深め、知識を分け合い、新たな可能性を見つけられる場所として毎年9月中旬に開催される国際カンファレンスです。

PyCon JP 2020は8月28日(金⁠⁠、および29日(土)の2日間で開催されます。当初の予定では大田区産業プラザPiOでの開催で準備を進めていましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を考え、オンラインで開催することになりました。

PyCon JP 2020の座長であるnishiさんによると、早い段階で「参加者の安全が担保できない状態では現地開催を行わない」と決めていた一方で、簡単には現地開催を諦めずに準備を進めてきたが、4月後半に差し掛かっても(COVID-19は)依然収束の気配がないため、開催日までの時間を考慮して、オンライン開催とすることに決めた。と述べています。

相手の顔が直接見えない中でプレゼンテーションを行う発表者やブースを設置し、直接参加者との交流が図れないスポンサーの方々の募集に苦労することが予想されましたが、100本を超えるCfPへの応募、プラチナに限らず多くのスポンサー応募があり、PyCon JP に対する関心の高さが伺えます。

そんなPyCon JP 2020をどのようにして参加すれば楽しめるのか? 初のオンライン開催と言うことで色々とあわただしく準備が進められてますがそんな中で発表されたセッション情報などから私たちが注目している内容をいくつかテーマ別にご紹介してみたいと思います。

注目セッション

キーノートセッション1日目

キーノートセッションの1日目は、芝世弐氏によるもの。Pythonにおける機械学習に興味をお持ちの方ならば外すことのできないセッションと言えます。こちらでも経歴が紹介されていますが、独学で機械学習を始め、将棋電王トーナメントに初参加ながら準優勝。また世界コンピュータ将棋選手権優勝するほどの凄腕の研究者(エンジニア)です。

機械学習をこれから学ぼうとしている方、学んだ結果をどのように活用していくのか。あらゆる局面において非常に参考になる期待のセッションです。発表当日をお楽しみに!

キーノートセッション2日目

2日目は、初日の機械学習とは打って変わってWebプログラミングの分野からです。

Gun.ioの共同設立者でアリサーバレスフレームワークZappaの作者でもあるRich Jones氏による発表はWeb開発者だけでなく、多くの方が注目することでしょう。Pycon Singapore 2019のレポートでも発表の素晴らしさが伝えられていますが、PyCon JP 2020ではどんな事を発表していただけるのか、非常に楽しみでなりません。

招待講演

PyCon JP では、毎年、各界(学術や産業など)の第一人者をお招きし、普段ではなかなか聞くことのできないPythonに関するお話を講演いただく目的で、招待講演の枠が設けられております。今年は5名をお招きして、講演いただきます。

露木 誠さん
『パーフェクトPython』の著者の一人としても知られる露木さん。MetaclassやDescripterについてお話しいただく予定です。
片寄 里菜さん
PyCon JPではドローンに関する発表とデモンストレーションでおなじみの片寄さん。ドローンに関するこれまでのあゆみと、今後の展望についてお話しいただく予定です。
打田 智子さん
Janomeの開発者として有名な打田さん。Janomeのこれからと、今後、そして個人開発の続け方についてお話しいただく予定です。
岩崎 祐貴さん
業務ではMultimedia関連の研究に従事されている岩崎さん。DevOpsの派生であるMLOpsについてお話しいただく予定です。
Nina Zakharenkoさん
本年度PSFディレクターに就任したNinaさん。PSFとコミュニティの関わりと、PSFとしての取り組みについてお話しいただく予定です。

テーマ別歩き方

これからPythonを始めようと思っている人

Pythonは他の言語と比較してもコミュニティ・ドキュメントが充実しており、⁠これからPythonを始めよう」という方に優しい言語だと思います。PyCon JP 2019のキーノートでは、Coryさんが初学者の方に優しい理由として以下の3つを挙げ講演されています。

  • Pythonは初学者にとってわかりやすく、色々なエンジニアリングのパスが用意されている
  • Pythonが国内外問わず他言語に比べて急成長しており、企業側の需要が高まっている
  • Pythonに関わるエバンジェリストやさまざまな素晴らしいコミュニティがある

その一方で、さまざまなドキュメントがあるためにかえって迷ってしまう、という方もおられるでしょう。そのような方々は以下のセッション・トラックをご覧になってはいかがでしょうか。

  • 関数型Pythonアンチパターン
  • Python 3.9 時代の型安全な Python の極め方
  • unittest.mockを使って単体テストを書こう ~より効率的で安定したテストに~
  • PySnooper - Never use print for debugging again

「Pythonでプログラムを書く!」と言うだけであればさまざまなチュートリアルがありますが、冒頭にも記載したとおり、Pythonは初学者にとってわかりやすい言語であるがゆえに「Pythonらしくない」プログラムを書いて実行することができてしまいます。

せっかくPythonistaを目指そうというのであればこの機会にアンチパターンや新機能、テストやデバッグについて学んでみてはいかがでしょうか?

機械学習をはじめたい人

筆者(稲森)はPythonをインフラの管理、運用ツールの開発に活用していますが、Pythonを書いている、といえば機械学習(に関わっているのかい?⁠⁠ と聞かれるぐらい有名な分野なだけに、PyConJP参加者の多くの方が興味をお持ちなのではないでしょうか。そんな中で機械学習の基本を抑えるならば、と以下のトークをご紹介致します。

  • 機械学習の実装から考えるオブジェクト指向
  • Pythonによる機械翻訳モデルの構築
  • Machine Learning Outside the Kaggle Lines(en)

ここでは「基本のを抑えるならば」ということで15分のトラックをご紹介していますが、機械学習については視聴者の方々にある程度の前提知識を求めるトークも多数あります。特に30分、45分トークはその傾向が強いため、機械学習入門の方は15分のトラックを中心に。慣れてきた、もしくは入門は一通りOK、もっとじっくり学びたいという方々は30分、45分のトークをご覧になってはいかがでしょう?

Coreな人向け

せっかくカンファレンスに参加するのだからもっと深いところを学びたいという方も多数おられることでしょう。実際の所、Pythonは多くのモジュールやDjangoのような強力なフレームワークが存在しているため、例えばand&の違いがどのような物か? というのを意識して使う機会はそうそう多くないと思います。

上記の例で言えば答えはandはブール演算で&はビット演算。つまり&は二進数に変換して論理積をとるため、文字列の演算はできません。

このような事を突き詰めたり、開発者自らが動作仕様を発表してもらえるのもカンファレンスならではと言えるでしょう。こういった内部のことを学べそうなセッションをいくつかピックアップしてみました。

  • Pythonパッケージの影響を歴史から理解してみよう!
  • Sphinx はどのように Python コードからドキュメントを生成するのか
  • Pythonソースコードの構造可視化とそれがもたらすもの
  • Understanding Python's Debugging Internals

これらのセッションの発表者に共通することはPythonそのものに対する深い知見を持つ、もしくはツールの開発者が発表者の方によるセッションであるということ。こういった方々の直接の説明を聞ける機会は決して多くないので見逃せないセッションと言えるでしょう。

コミュニティ活動

PyCon JPのスタッフも全員がボランティアであるように、Python Boot Campなどのイベントや各地のコミュニテが活発なのもPythonの特徴の一つではないでしょうか。そんなコミュ二ティに関わる人とのつながりを持てるのも、PyCon JPの醍醐味だとおもいます。今年はオンライン開催ということもあり、これまでのPyCon JP とはまた違ったつながりが生まれるかもしれません。コミュニティに関わるとどんなことができるのか?どんな楽しさや難しさがあるのか、気になる方はこちらのセッションをのぞいてみてはいかがでしょうか?

  • スタッフとしてコードを書こう!~Code for PyCon JP and yourself~
  • 広島における地域 Python コミュニティの立ち上げ方と続け方

スポンサーブース

オンライン開催となった事でトークセッションの合間に歩いて回る、ということが無くなってしまったスポンサーブース。しかし、PyCon JP 2020ではスポンサーブースもオンラインに即した形で用意されています。

現地開催のように「回れるよう」に景品つきのスタンプラリーを企画していますのでお楽しみに!

スポンサー企画

毎年恒例のスポンサーによるトークセッションもあります。今年は「ニューノーマル時代のエンジニアの働き方~コロナで働き方が変わった各社の変わったところ、変わらないところ~」と題してプラチナスポンサー3社による鼎談を予定しております。各社どんな取り組みがあるのか、ランチの合間にのぞいてみてはいかがでしょうか?

まとめ

いかがだったでしょうか? 2020年のPyCon JP 2020は初のオンライン開催、しかも現地開催の予定を変更しての開催のため、スタッフも参加者も試行錯誤、戸惑いもあるかと思いますが、物理移動なく他のセッションを閲覧できるという利点を活かして楽しんでいただければと思います。

ここに紹介した以外にもWeb開発、組み込み開発、ケーススタディに開発Tipsなど、まだまだたくさんのセッションがありますので、当日までにどのセッションに参加するか、考えておいてください! タイムテーブルはまもなく公開されますので、PyCon JP 2020のHPをチェックしてくださいね!

では、当日Zoomでお会いしましょう!

(2020/08/12 追記)
タイムテーブルが公開されました!
Timetable -PyCon JP 2020

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