アジャイル開発者の習慣-acts_as_agile

第1回 フィードバックを重視する

この記事を読むのに必要な時間:およそ 5 分

習慣 #0 フィードバックを重視する

アジャイル開発者と目される人たちは,4つのスキルを磨くための習慣を身につけるための習慣,つまりメタ習慣やブートストラップ習慣とでも呼ぶべき習慣を身につけています。それが「フィードバックを重視する」という習慣です。今回はこのメタ習慣を紹介します。⁠習慣を身につけるための習慣」なので,0番目の習慣としています。

マインドセット「実践から学習する」

実践すると,そのフィードバックとして経験が得られます。経験から学ぶことで,よりうまくなるための作戦を効果的に立てられます。ただし,いくらフィードバックを重視するからといって,ただ実践すればよいというわけではありません。実践と,そのフィードバックからの学習を「いつ・どうやるのか」を常に意識しなければなりません。

リズムをつくる

実践から学習するマインドセットを育てるためのプラクティスを2つ紹介します。⁠タイムボックス化」「ふりかえり」です。この2つを組み合わせて,実践と学習を繰り返すリズムをつくります。習慣は文字どおり「身につける」わけですから,リズムという身体感覚は重要です。リズムは,習慣として継続させるうえでも重要です。

プラクティス「タイムボックス化」

タイムボックス化は,時間と作業のマネジメント手法です。タイムボックス化では,プロジェクトや作業の期間を,一定間隔に固定された複数の「時間の箱」から構成されたものとみなし,期間中の作業を「時間の箱」に入るようにマネジメントします図1⁠。

たとえば,作業期間が3ヵ月のプロジェクトに1週間単位のタイムボックスを適用すると,プロジェクト期間は,週レベルのタイムボックスが12個並んだものになります。

図1 タイムボックス化

図1 タイムボックス化

時間に対する意識

各タイムボックスに設定した期限は絶対です。延長はありません。⁠週単位のスケジューリング」という言い方ではなく,あえて「タイムボックス」という新しい用語を導入しているのは,⁠期限は絶対。延長なし」という考えを常に意識するためです。

もっと詳しく

タイムボックス化については「計画づくり」との関連で,今後の連載でさらに詳しく紹介します。まずはタイムボックス化では「箱」の大きさが固定されていることを理解してください。⁠期限は絶対。延長なし」です。

プラクティス「ふりかえり」

ふりかえりは,レトロスペクティブ(Retrospective)やリフレクション(Re゚ection)とも呼ばれるプラクティスです。完了したタイムボックス期間中に行った作業をふりかえり,次のタイムボックスでの作業をより効率的にするための改善策を考えます。

実施するタイミング

ふりかえりは,タイムボックスが終了するごとに,定期的に繰り返し実施します。作業期間完了後に1回だけ実施される反省会とはこの点が異なります。1回のふりかえりのセッションに費す時間は30分から1時間の範囲内に収めます。ふりかえりに時間をかけ過ぎてしまって,実作業がおろそかになっては本末転倒です。

KPT法によるふりかえり

ここでは,私がよく行っているホワイトボードを使ったKPT法を簡単に紹介します。KPT法では,ホワイトボードの領域を三分割し,⁠Keep」⁠Problem」⁠Try」と見出しを書き入れます図2⁠。それぞれの意味は「よかったこと,次回も続けたいこと」⁠よくなかったこと」⁠次回以降に試したいこと」です。このホワイトボードを囲むようにして,ふりかえりを進めていきます。

図2 KPTの例

図2 KPTの例

KPT法の進行ステップ

KPT法によるふりかえりの進行ステップは,チェンジビションの製品であるTRICHORDの開発チームの手法が参考になります。ここでは進行のステップだけを紹介します。詳細は日経ITProのサイトに掲載されている記事を参照してください。

KPTの進行ステップ
  • (1)前回のTry項目のチェック
  • (2)タイムボックス期間中に何があったかを思い出す
  • (3)Keep,Problem,Tryの形式でまとめる
  • (4)クロージング(閉会の宣言とホワイトボードの撮影)

ふりかえりを効果的にするためには,特に(1)(2)のステップが重要です。ふりかえりに慣れていない段階では,このステップに少し多めに時間を割くと効果的です。肝となるステップである(3)をスムースに進められます。

もっと詳しく

ふりかえりは,実践自体はとても簡単です。ただし,効果的に実践するにはコツが必要です。コラムに「ふりかえりの参考リソース」を紹介しておきます。実践の参考にしてください。

またTRICHORDの開発チームは,ふりかえり結果を開発者ブログでほぼ毎週,公開しています。ふりかえりをより効果的にするためのさまざまな試みも併せて紹介されており,参考になります。

著者プロフィール

角谷信太郎(かくたにしんたろう)

(株)永和システムマネジメント,サービスプロバイディング事業部所属プログラマ。「『楽しさ』がシステム開発の生産性を左右する」と信じてRubyによるアジャイル開発を現場で実践するテスト駆動開発者。目標は達人プログラマ。好きな言語はRuby。好きなメソッドはextend。著書に『アジャイルな見積りと計画づくり』(共同翻訳),『JavaからRubyへ』(翻訳),『アジャイルプラクティス』(共同監訳),『インターフェイス指向設計』(監訳)。

URLhttp://kakutani.com/

著書