小飼弾のアルファギークに逢いたい♥

#17 Mahalo.com Jason Calacanis

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人力検索Mahalo

弾:で,最新の起業であるMahaloを紹介してください。

Jason:待ってました!

弾:日本では残念ながらまだ知名度が高くないので。

Jason:このままずっと上がらないかも(笑⁠⁠。

弾:それはないっしょ。

Jason:でもまずは米国から。MahaloというのはWikiと検索の組み合わせなんだけど,一部,日本のYahoo! も真似してるっぽい。それはさておき,まず,Web検索の精度ががた落ちになっているという現状がある。スパムも増える一方だし,広告しかないサイトもしかり。GoogleもYahoo! もMicrosoftもあんだけ金があって,それを湯水のごとく投資しているのに,なんで検索の質は劣化する一方なのか。

で,自問自答してみた。⁠なして?」って。問題は,情報が多過ぎることにある。どうでもいい情報でWebはあふれ返っている。"Coee"についてググったら2500万ページがヒットした。こんなのチェックしきれないよね。0.1%でも25,000ページ。多過ぎ。0.01%で2,500ページ,これでもまだ多過ぎ。0.0001%の25ページ。これくらいならなんとか。でも,本当に必要なのは数ページのはず。2500万分の2とか3。現状は「東京で一番の寿司屋を3つ教えて」っていう質問したら電話帳をぶん投げられるのと同じようなもの。機械は電話帳を放ってよこすことしかできない。だったらいっそ最初から手作りしたほうがまし。

で,それをWikipediaっぽくやったところ,バカウケした。あるトピックはなるべく1ページに収まるように。今では10万ページのトピックに,400万人のユーザがアクセスする。満1才のサイトとしては上々の出来。

ぼくの韓国人の妻に言わせると,Mahaloは「隣人」とのこと。韓国ではご近所さんこそ最高のサーチエンジン。Mahaloは「隣人の知恵」をアメリカで展開しているということになる。

単純なアイデアこそベスト

弾:どうでもいいものを捨てるために,Mahaloを作ったのだと。

Jason:そういうこと。実に単純なアイデア。複雑なところはない。それを言ったらDiggもそうだしFlickrもそう。Weblogs,Inc.もそうだった。単純なアイデアこそベスト。そこには複雑なアルゴリズムもAjaxもない。あるのは選りすぐりの情報だけ。

弾:でも,人間がやってるからといって選りすぐりにならない可能性も。人間はときどきノイズ増幅器としても機能してしまう…。

Jason:そう。偏向問題。Wikipediaもこの問題を抱えている。記事は不正確で,誤字だらけで,文法がなっていない。でも世の中にそれしかなければ,人々はそれで我慢しちゃう。ぼくの項目を書いている連中は,ぼくのことを嫌っている連中ばっかりだろうね。

弾:(笑)

毎週採点で偏向と戦う

Jason:Wikipediaに自分の名前の項目を持っている人は,⁠Wikipediaはクソだ」と思っているに違いない。匿名のおかげ。匿名はひどい。偏向を直すというインセンティブがまったく働かないという意味で。Mahaloの書き手は違う。Mahaloで書くには,身元をきちんと証明する必要がある。

そのうえで,Mahaloの書き手は,全員1週間ごとに採点される。全員,例外なく。スコアは10点満点で,瑕かし疵ごとに減点される。事実と相違があればマイナス1点,偏向があればマイナス1点。マイナスが3点以上あったら,アウト。

弾:それは厳しい。

Jason:それが偏向をなくす一番のやり方。Mahaloでは,⁠ウェザーリポート」を毎日発行している。こんな感じ。

弾:(覗き込んで)あわわ…。

Jason:Mahaloには,フルタイムの検査員もいる。彼はディテールに実にうるさい。で,⁠ウェザーリポート⁠⁠。ひどいのも結構あるけど,たいていの記事は7点か8点。たいていの減点はスペルミスとかの単純なもの。でも我々の採点は厳しい。

弾:私には無理だ(笑⁠⁠。

Jason:まあでも9点とか10点というのは不可能に近いからある程度安心してもいい。とにもかくにも,このウェザーリポートで我々は偏向と戦っている。

弾:英語以外で展開するつもりは?たとえば日本語は?

Jason:オファーはすでにある。でもやるとしたら2年後か3年後。まずは英語を固める。次の市場に行くのはそれから。アメリカで700万から1,000万ユーザを獲得したら,海外展開も考える。現在460万人だから,1年後に,良いパートナーが見つかったら始めるかも。

良いニュースとして,英語がどこでも通じるようになってきたということがある。Wikipediaもそうだけど,英語を押さえれば英語を母国語としない人もとりこめる。実はMahaloのトラフィックも3割は海外から。

弾:でも,それって英語でアイデアを表現できない人を結構とりこぼしているっていうことでもあるかも。

Jason:確かに。実際にイノベーションを見ると,英語圏から遠いほうがホットだったりする。今海外ツアーの真っ最中だけど,ドイツは英語サイトの真似ばっかり。オリジナリティが高いのは,イスラエル,韓国,そして日本。

弾:ほらね。

Jason:イノベーションには英語から離れるほうが良いけど,でも市場は英語が一番。ちょっと悩ましい。

Jason Calacanis氏

著者プロフィール

小飼弾(こがいだん)

ブロガー/オープンソースプログラマー/投資家などなど。ディーエイエヌ(有)代表取締役。1999~2001年(株)オン・ザ・エッヂ(現(株)ライブドア)取締役最高技術責任者(CTO)。プログラミング言語Perlでは,標準添付最大のモジュールEncodeのメンテナンス担当。著書に『アルファギークに逢ってきた』(2008年5月,技術評論社)。ブログは『404 Blog Not Found』

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