WEB+DB PRESSでは久しぶりとなる連載インタビュー企画。ホストは竹馬光太郎さんが務めます。記念すべき第1回目のゲストとしてお迎えしたのは,
- 中川 博貴 さん
Webブラウザ開発者
ソフトウェアエンジニア。Webブラウザ開発者。世の中のよくできたシステムのしくみに興味がある。理想のソフトウェアアーキテクチャを追い求めて日々奮闘。GitHub:nhiroki
Twitter:@nhiroki_
URL:https://nhiroki. jp/
研究や興味の先にWebブラウザがあった
竹馬:中川さんはChromeの機能を作っていらっしゃる立場で,
中川:中川博貴と言います。今はChromium
竹馬:中川さんがやってるのは僕が追っている技術が多くて,
中川:たまたま最初に関わることができたプロジェクトがそれだったのですが,
そのあたりの話をするうえで,
大学では2冊の本にとても影響を受けました。1冊目が梅田望夫さんの
大学院ではRubyの高速化やプロセス間通信機構の研究をしていました。最近Ruby 3でGuild
竹馬:最近中川さんがやっているService WorkerやWorkletってそういう感じですよね。
中川:ほんとそう
- 注1)
- オープンソースのWebブラウザ。Chromeの元でもある。
- 注2)
- JavaScriptにおけるマルチスレッド機能群。
- 注3)
- Ruby 3に搭載されるかもしれない並列処理のしくみ。
Chromiumの開発により参加しやすく
竹馬:Chromiumってすごい巨大なプロジェクトじゃないですか。どういうところが大変ですか。
中川:最新動向を把握するのが大変ですね。調べたところ,
竹馬:外野として見ていると,
中川:プロジェクトにはさまざまな会社や個人が集まっているのですが,
竹馬:読むときの勘所ってありますか。
中川:レンダリングエンジンに興味があるのであればBlinkを読めばよいと思いますし,
Chromiumコミュニティはすごいインパクトのあるおもしろいコミュニティなので,
- 注4)
- マルチプロセスのブラウザを構成しているコアモジュール。
新しい一歩を踏み出すことの難しさ
竹馬:ServiceWorkerとかWorkletってブラウザに新しい概念を足す,
中川:そのとおりで,
竹馬:自分が作った機能が使われているのってどういう気持ちで見ていますか?
中川:反応はいろいろありますよね。称賛してくれる人もいれば,
竹馬:Chromiumへのバグ報告,
中川:バグレポートってレポーターの人ももっと讃えられるべきだと思っていて,
竹馬:そうですね。僕もたぶん書けるバグがいくつかあるはずなんですけど,
中川:何も書かれないよりは何か怪しい挙動を見つけたらどこかに書いてもらうのがうれしいです。たとえちょっとしたことでも,
- 注5)
- バグの発見者に報奨金を支払う制度。