ビジネスがわからないシステム屋はいらない!?

第3回 ビジネスがわかるシステム屋になるために

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

モデリングの第一歩は超アナログでシンプルに開始!

我々は最初,模造紙と付箋紙だけを使います。記述するプロセスも4項目(名称,入力,出力,プロセス)だけです。超アナログ的です。これに,徐々にタイミング・前提条件・やり取りするデータ・必要なシステム・所要時間・ルールなどの情報を加え,イレギュラーなプロセスや情報システムなどを加えていきます。

図2 超アナログなモデリング

図2 超アナログなモデリング

必要項目:業務プロセス単体
  1. 業務プロセスの名称
  2. 業務の入力と出力
  3. 業務の制約条件
  4. 業務の開始条件(開始するきっかけ)
  5. 業務の開始タイミング
  6. 業務処理そのもの(プロセス)
  7. 関連する帳票・情報システム(ドキュメント,データ)
  8. 処理時間

業務プロセス単体ではこの8つが必要項目となります。この業務プロセスをつなぎ合わせて業務フローが完成します。さらに下記の項目や情報を加えていきます。

必要項目:業務フロー
  1. 伝達手段
  2. 業務区分
  3. 並列処理の記述
  4. 例外処理の記述
  5. 粒度の統一
  6. ルールの記述
  7. ⁠タテ⁠情報の記述(決裁・承認などが含まれる場合)

最初から細かく,詳しく業務をモデリングすることはできないので,まずは必要最低限の記述から開始し敷居を下げます。次に少しずつ情報を加えて詳細なモデルに作り上げていくことが大事です。

このようなステップと同時に,場を共有することで問題意識の共有・当事者意識の醸成も高まり,精度の高いモデリングを実現できます。

問題発見と問題整理のコツ

業務モデリングができたら,問題と突き合わせを行います。問題発見のポイントは次のとおりです。

問題発見の5つのポイント
  1. 目的:何のために
  2. 視点:部門や立場で問題の見え方が変わる
  3. 視野:どこからどこまでを対象とするのか
  4. 時間:いつの時点(現在,過去,未来)の問題なのか
  5. 場所:どこで起きているのか

特に「視点」⁠視野」⁠場所」は,業務フローを見ながら検討を行うほうが考えやすいものです。

出てきた問題は「戦略・収益・プロセス・人と組織・仕組み・CS・ブランド・品質」の8つのカテゴリで分類します。こうすることで,問題を整理しやすくなります。

問題整理の8つのカテゴリ
  1. 戦略:経営理念,経営戦略,経営計画など
  2. 収益:売上,コスト,利益
  3. プロセス:業務プロセス
  4. 人と組織:モチベーション,コミュニケーション,組織構造,風土・体質など
  5. 仕組み:社内制度,規程,情報システムなど
  6. CS:顧客満足
  7. ブランド:企業・商品ブランド,知的財産,無形資産など
  8. 品質:経営品質,業務品質

問題のカテゴリ分けでKJ法や特性要因図(フィッシュボーン図)などを用いた経験のある方も多いでしょうが,元々のカテゴリが明確に定まっていないと,分類に困って「その他」カテゴリが増えがちです。やってみるとわかりますが,この8つのカテゴリを使うと,ほとんどの問題がどこかに入ります。

システム解決との切り分け

問題整理の8つのカテゴリは,ビジネス上の課題をシステム屋の皆さんが見極める際に,非常に有効です。システムに必要な機能要件を切り分けることも重要ですが,その前に,このカテゴリに当てはめると,システムで解決できる課題か否かを判断しやすくなります。たとえば,⁠システムが戦略から影響を受ける項目⁠⁠システムが人と組織に与える影響,モチベーション⁠⁠システムがCSや品質を高める要素」などを検討しやすくなります。

こうすることで,システムで解決できる課題と解決できない課題の切り分けを行うことができます。

おわりに

ビジネスの背景がわかり,エンドユーザの環境構築もでき,システム構築や導入が目的ではなく,システムをあくまでもツールとして考え,経営と現場の両方の目線で見ることができる,そんなビジネスがわかるシステム屋が今まさに求められています。BA(ビジネスアナリスト)やBABOKにもその流れを垣間見ることができます。

しかし,⁠餅は餅屋」のように,システム屋が経営課題やビジネス要求分析を格好良く行う必要はありません。システム屋が専門性を高める分野は「IT領域」でいいのです。ただ,そこに少しだけ「経営と現場の視点」を加え,現状調査や業務分析のやり方を,現場のビジネス主導でかつ参画型に変えていくと,システムで解決できる課題,できない課題がより明確になります。

システムで解決できない課題を知った上で,システム開発や導入を行うほうが,精度の高いシステムができあがりますし,エンドユーザが当事者として関わっていることで,システムカットオーバー後の協力体制も得られます。扱うものはシステムという⁠ハード⁠でも,システムを使うのは人です。使う人を動かすものは⁠ハート⁠であることを忘れてはなりません。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/