スマートフォン広告×テクノロジー最前線

第4回効果的な広告手法の要、第三者配信を実装するために

前回は、スマートフォンの広告効果計測に不可欠なSDK開発について紹介しました。今回は、スマートフォン広告手法において今後ますます重要になるとされる、⁠第三者配信」の仕組みについてご紹介します。

第三者配信とは?

スマートフォンアプリデベロッパなどの広告主が、自社でマネタイズを成功させるための手段のひとつとして、⁠アドネットワーク」があります。アドネットワークとは、スマートフォンメディアにおける広告の配信面を集めて広告配信ネットワークを構築し、そのネットワーク上で広告配信する手法です。

アドネットワークにおける広告配信の仕組みは、広告配信を行う媒体社が有する広告配信用サーバ(以下、アドサーバ)に、配信に必要な広告バナー画像やクリック数など成果を計測するためのURLを入稿することで配信が行われます。そして、ユーザが媒体(Webサイト)にアクセスした際、入稿されているバナー画像が媒体社のアドサーバから配信されます。

一方、第三者配信は、前述したアドネットワークに代表される通常の広告配信とは異なります。媒体社のアドサーバに広告を入稿するのではなく、自社・あるいは広告代理店などの媒体社ではない第三者(以下、第三者配信事業者)が管理するアドサーバに対して配信を行います。このため、第三者配信と呼びます。第三者配信を行うことで、バナー画像などのリソースも第三者配信事業者のアドサーバで管理され、広告を表示させるサイトに対し広告枠に設置する配信タグを発行し、設定した条件に応じて最適な広告が配信されます図1⁠。

図1 第三者配信の入稿と配信のフロー
図1 第三者配信の入稿と配信のフロー

F.O.Xの第三者配信

CyberZが提供する広告効果測定ツール「F.O.X」の第三者配信機能は、メインとなる広告効果測定機能と同様にJavaで開発を行っています。Web開発では他に多くのプログラミング言語が存在しますが、パフォーマンスを重視することやスレッドを多用することからJavaを採用しています。

F.O.Xによる第三者配信の稼働

第三者配信の基本機能として、インプレッション(広告が表示された時⁠⁠→ クリック→ 成果までの一連の動きを可視化し、追うことができなければなりません。

  • インプレッション時にはバナー画像とクリック時のURLを返却
  • 広告のクリック時は、どの広告をクリックしたかを判断ししかるべき広告主のサイトへリダイレクト
  • 広告主のアプリのインストールなど、成果につながった際にはログに残す

上記の中で、一番発生回数として多いのがインプレッションですが、配信量にも依りますが急激に増大するとサーバへの負荷も増してレスポンス速度の低下につながります。

広告は表示されて初めて意味を持ちますから、表示に数秒もかかっているようでは話になりません。さらに1インプレッションのたびにDBにクエリを掛けていては広告の表示が追いつきません。

F.O.Xでは急激に増大するアクセスに対するレスポンスの速度対策として、あらかじめJavaのヒープメモリ上に広告配信に必要なデータを展開しています。そうすることにより、DBやKVSのデータをデシリアライズさせる際の時間的コストの抑制を可能としています。ヒープメモリ上へのデータの更新は1分のインターバルで行っています。

また、開発の際は、必要最低限のインスタンスを起動時に生成し、Dependency Injection(DI:依存性注入)でインスタンスを注入して極力1つのインスタンスを再利用するようにしていることや、常に複数のスレッドが動いているためスレッドセーフを保つことにも細心の注意を払っています。

F.O.Xの媒体社と連携した第三者配信

F.O.Xが媒体社と連携を行い第三者配信を実施した際の仕組みを紹介します。

弊社が強みとするスマートフォン向け広告を例に取り、配信は広告主のアプリを利用したことのあるユーザへのリターゲティングを目的としたものとします図2⁠。全体の流れとしては、F.O.Xから発行した広告タグを媒体社にあらかじめ渡しておきます。

図2 F.O.Xと媒体社の連携による第三者配信
図2 F.O.Xと媒体社の連携による第三者配信

ユーザが媒体にアクセスすると、F.O.Xの広告タグが読み込まれ、過去にそのユーザが広告主のアプリを利用したことがあるかを確認します(図2の④⁠⁠。そこで、アプリを利用したことのあるユーザであればターゲットと見なし、目的の広告を表示しリターゲティングが成功します(図2の⑤⁠⁠。

一方、アプリを利用したことがない場合は配信対象とならないため、表示させる広告がないことになります。しかし、F.O.Xの広告タグが読み込まれているということは、媒体にとっては既に広告を表示している状態となり、広告枠を購入しているため広告表示を停めることが許されません。

通常であれば、この場合何らかの広告を代わりに表示することになりますが、この連携ではさらに媒体社から広告タグを発行してもらい、予め受け取っておき、その広告タグを読み込むという仕組みを導入しています(図2の⑤'⁠⁠。ユーザは最終的に媒体社の広告タグを読み込むことにより、広告が表示されるようになります。⁠図2⑥⑦)F.O.Xから広告を配信せず媒体社から配信された際は広告枠を買っていないこととなり、F.O.Xから配信した時のみ広告枠料金がカウントされるようになっているため、広告主にとっては広告効果の見込めるリクエストに対してのみ配信を行うことができます。

今後、さらに第三者配信の利用量が増えていくことに備えると共に、サーバのメンテナンスコストを下げるべく、SDNの仕組みを導入し容易にスケールアウトが可能な環境を作っていくことを考えています。

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