[公式]Evernote API徹底活用レシピ

第2回Evernote APIを使ったアプリケーションについて考える

Evernote APIに興味はあるが、どういうものを作ると良いのかわからないという開発者の方も多いと思います。そこで今回は、Evernote本社で多くのパートナー企業や開発者と関わっていらっしゃる佐藤氏にお話を伺いました。このインタビューが、Evernoteとの連携のアイデアを考える際のヒントになれば幸いです。

加藤:まずはじめに、開発者の方々にEvernote APIを使ってどんなことをしてほしいのかをお聞きしたいと思います。

佐藤:Evernoteとの連携でまず考えてほしいのが、ユーザの具体的なニーズを満たすということです。汎用的な機能をもったアプリケーションは公式に提供していますので、Evernote APIで使える機能をなんでも盛り込むのではなく、問題解決型で、ある目的に特化したものを作ってほしいと考えています。

たとえば、iPhoneのアプリケーションであるFastEverは、メモを書いて保存するだけのとてもシンプルなアプリケーションです。しかし、単純な分、すぐに起動してサッとメモを取ることができます。こういった目的を特化したアプリケーションは需要があると思います。

FastEver
FastEver

加藤:Evernote Trunkを見ると、既存のアプリはEvernoteにデータを入力するものがたくさんありますね。モバイルのアプリケーションでは、撮った写真を取り込むとか手書きメモを保存するとか。デスクトップやWeb上でも、データをクリップするものが多いです。

Evernote Trunk
Evernote Trunk

佐藤:まずデータの蓄積をしないと始まらないので、入力用のものが多いのでしょう。これから必要となってくるのは、その蓄積されたデータをうまく活用するアプリです。たとえば、ノートの新しい探索の仕方を作るのはどうでしょうか。Evernoteのノートには、位置情報や時間情報など、まだアウトプット時に十分活用されていない情報も多く含まれます。これらの情報をどう可視化するかとか。

加藤:時系列でグラフ化するとか、今いる場所の周辺で昔とったノートを検索といった機能を自分のアプリケーションに付け加えるのは、できそうですね。

蓄積したデータの有効活用という点では、Snapcalが面白いと思っています。Snapcalは、Google CalendarやFacebookなどと連携してカレンダー情報を管理するアプリケーションなのですが、Evernoteとの連携も含まれています。Evernoteに保存されているノートをタグ名で検索して、検索結果のノートから日付や時間場所、詳細情報を抽出することで、カレンダーに取り込むことができます。 ちょっとマニアックですが、私は昔Emacs上で情報管理をしていて、そのときに使っていたmhchowmといったアプリケーションにを思い出しました。

Snapcal
Snapcal

佐藤:Evernote側で入力されている人に関するデータをうまく連携するというのはどうでしょうか。名刺を撮って入力するアプリなどはあるのですが、そのようにして入力されたデータがコンタクトリストとしてまとまって使えるようになって、アドレス帳と同期できるとか。

加藤:NozbeはGTDというタスク管理のWeb サービスですが、Nozbe側のプロジェクト名とEvernoteを連携させることで、プロジェクトと同名のタグのノートを統合して表示することができます。コンタクトリストも似たような仕組みで連携すると楽しそうですね。

Nozbe
Nozbe

佐藤:ノートの編集機能に特化したツールも意外と少ないです。たとえば、OmniOutlinerのようなアウトラインプロセッサが欲しいですね。ノートに少しメタデータを埋め込んでおいて、アウトラインプロセッサ側から見るとアウトラインとして使えると。

加藤:アウトラインプロセッサは私も欲しいと思っていました。個人的に今はノートにEmacsのoutline-modeの文法で書いていますが、Evernoteと連携するアウトラインプロセッサを通してそのノートを見ると、アウトライン構造が認識されるとかだと素敵です。

佐藤:他にはEvernoteと連携できる作図ツールや、プレゼンテーションツールとかも面白そうです。

加藤:特定のノートやノートブックに画像や資料などを保存しておくと、それがそのままプレゼンテーションになるとかですかね。Evernoteには共有機能があるので、プレゼンテーション用に公開共有するのも簡単です。全体の傾向として、ノートを特定用途で編集したり、見せ方を工夫する仕組みに可能性がありそうですね。

佐藤:今のEvernoteユーザの典型的な行動は、とりあえずデータを取り込んでおいて、後で検索して見直すという感じだと思います。しかし、将来的にはユーザの行動がEvernoteのプラットフォーム上で循環するようになったら良いなと考えています。たとえば蓄積しておいたデータを可視化して編集した後、それをまたEvernoteの中に貯めておいて、のちにプレゼンテーションで活かしたりPDFとして出力したりといったようにです。

加藤:編集機能の拡張などは、Evernote公式のデスクトップアプリケーションにプラグインとして拡張機能を作成するというのも考えられると思うのですが、プラグインを作れるようにする計画はあるのでしょうか?

佐藤:そうですね、そういう発展の可能性もあります。しかし、現時点ではEvernote社が提供する各アプリケーションは、まだそれほど仕様が安定しているわけではありません。この間もWebのユーザインタフェースやiPhoneのアプリケーションを大きく変更しました。そのため、アプリケーション自体に安定したプラグイン用のAPIを提供するのは難しい状態です。Evernote社もユーザも、まだまだEvernoteの使い方について試行錯誤している段階なのです。

開発者の方には、独立したアプリケーションの開発を通して、新しい使い方を提案してくれることを期待しています。ユーザや開発者達と一緒に議論をしながら、Evernoteを発展させていきたいと考えています。


インタビューを通して、私自身もEvernoteとの連携の可能性について改めて考えさせられました.これが刺激となって何かアプリケーションを作ろうと思って頂ければ嬉しいです。次回はEvernote APIの概要について解説します。

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