クラウドサービスの新潮流を読む

第3回データホテルが採用する仮想化技術

データホテルが新たにリリースした、低コストで仮想サーバを利用できるクラウドサービス「EX-CLOUDクラウドシリーズ」では、パラレルスの仮想化ソフトウェア「Virtuozzo(バーチュオッゾ⁠⁠」を利用してサーバ仮想化やそのコントロールを行っています。そこで今回は、パラレルスの代表取締役である土居昌博氏に、Virtuozzoの特徴やほかの仮想化ソリューションとの違いなどについて伺いました。

クラウドサービスの展開を支援するパラレルス

――まず、EX-CLOUDクラウドシリーズで採用されている仮想化ソフトウェアである「Virtuozzo」の概要から伺わせてください。

土居氏「Virtuozzoは正式名称を『Parallels Virtuozzo Containers』と言います。発売から10年以上が経つソリューションで、国内外の多くのサービスプロバイダで利用されています。よく比較されるのはハードウェアを仮想化するハイパーバイザ型の製品ですが、それらよりも1つの上のレイヤーであるOS部分で仮想化を行う、コンテナ型の仮想化技術を採用していることが特徴になります。

そもそもパラレルスは、今で言うSaaS(Software as a Service)の自動販売機を作りたいということで1999年に設立された会社なのです。当時はまだクラウド・コンピューティングやSaaSなどという言葉はありませんでしたが、サービスプロバイダがサービスを展開する際に必要となるソフトウェアを提供するというのがそもそものコンセプトでした。その中のインフラ部分である、サーバ上に複数の仮想環境を作成することを可能とするいわゆる仮想化ソリューション部分をソフトウェアパッケージとして提供しているものがParallels Virtuozzo Containersという製品です。

写真1 土居氏
写真1 土居氏

このようにサービスプロバイダ向けに提供されてきた経緯があるため、コンテナと呼ばれる仮想サーバの迅速なプロビジョニングや、スペックを柔軟に変更するなどといった点に重点を置いて開発を進めており、仮想化はそれを実現するための手段に過ぎません。ただコンテナ型の仮想化技術には、Googleをはじめ多くの企業が注目しているほか、Linuxコミュニティにおいてもコンテナ技術の強化が進められています。」

高いパフォーマンスと柔軟なリソース変更を実現

――コンテナ型の仮想化技術は、ハイパーバイザ型などに比べてどういったメリットがあるのでしょうか。

土居氏「まず、仮想化のオーバーヘッドが非常に小さいことが挙げられます。コンテナ型の仮想化は、OSのカーネルを複数の仮想サーバで共有する形であり、構造がシンプルかつパフォーマンスに対する影響も最小限に抑えられています。一方ハイパーバイザ型の仮想化技術は、ハードウェア自体を仮想化するため、自由度は高いのですがバーチャルサーバごとにカーネルを動かすことになるためオーバーヘッドが大きい。またOSのメンテナンスにおいても、コンテナ型であれば1つのOSを管理するだけで済みますが、ハイパーバイザ型ではバーチャルマシンごとにメンテナンスしなければなりません。

リソースの変更がダイナミックにできることもコンテナ型仮想化技術の大きな特徴です。たとえば急にメモリやCPUリソースの割り当てを増やしたいといった場面でも、コマンドやAPIを使って簡単に設定することができる。こういった伸縮性を備えていることもコンテナ型のアドバンテージです。

コンテナの起動や終了が迅速であることもメリットになっています。ハードウェアまで仮想化してしまうと、仮想サーバを立ち上げるのにまずBIOSの起動から始まるわけです。しかしコンテナ型であればカーネルを共有しているため、OSは迅速に立ち上がりすぐに利用できます。とくに数百台や数千台といった規模の仮想サーバをコントロールしたいといった場合、リソースを柔軟に変更可能なことに加え、コンテナを迅速に起動できるメリットは非常に大きいと思います。」

田畑氏「実際にサービスを利用するユーザの視点で言えば、アプリケーションを簡単に展開できることもメリットですね。Parallels Virtuozzo Containersでは、サービスプロバイダ側であらかじめアプリケーションテンプレートを用意しておくことにより、コントロールパネルでボタンをクリックするだけですばやくアプリケーションをプロビジョニングできます。しかしハイパーバイザ型の場合、リポジトリからRPMをダウンロードしてインストールするといった作業が必要なわけです。こうしたユーザフレンドリーな環境を構築しやすいこともコンテナ型の強みです。」

写真2 田畑氏
写真2 田畑氏

コンテナ型仮想化技術の強みを活かしたEX-CLOUDクラウドシリーズ

――オーバーヘッドが小さいというお話がありましたが、そのほかの仮想化ソリューションと比較してパフォーマンス面ではどの程度の差があるのでしょうか。

土居氏「実際にXenやKVM、我々がオープンソースとして公開しているOpenVZ、Parallels Virtuozzo Containersの後継製品となる「Parallels Cloud Server」で実際にベンチマークを行った結果があります。

図1 ベンチマークの結果
図1 ベンチマークの結果

このベンチマークでは、1台の物理サーバ上に我々が提供しているサーバ管理ツールである「Parallels Plesk Panel」を導入した仮想サーバを次々と立ち上げて、サーバからの反応が4秒以上かかるようになるまでに立ち上げられた仮想サーバの数を計測しています。

結果はXenは29個、KVMが37個、そしてOpenVZでも57個の仮想サーバを立ち上げると、サーバからの応答が4秒以上になりました。一方でParallels Cloud Serverは、121個目の仮想サーバを立ち上げることができています。つまり、それだけハードウェアのリソースを効率的に使えているというわけです。」

――データホテルから見て、Parallels Virtuozzo Containersの魅力というのはどういった点にあるのでしょうか。

小柳津氏「まずサービスの安定稼働が可能であるという点です。長い間運用を行っていますが、Virtuozzo Containersが原因となる障害は起こっていません。止められないサービスを提供するためのインフラとしてもEX-CLOUDクラウドシリーズは使われているので、こうした安定性の高さは一番メリットを感じる部分ですね。

またEX-CLOUDクラウドサービスでは、13段階の無停止スケールアップを可能にしていますが、これもリソースの柔軟な調整が可能というコンテナ型の特徴を活かした機能です。たとえばアクセスが殺到してすばやくサーバリソースを拡張したいといった場面で、サーバを止めることなくスケールアップできるメリットは非常に大きいのではないでしょうか。またデータホテルでは長年パラレルスのソリューションを使ってサービスを展開してきたこともあり、多くのノウハウが蓄積されています。それを活かしてサービスが提供できることもパラレルスを採用する理由の1つです。

写真3 小柳津氏
写真3 小柳津氏

田畑氏「サービスプロバイダ向けの管理ツールが充実していることも、パラレルスのソリューションの強みであると感じています。実は他社のハイパーバイザ型のソリューションを検証することもありますが、クラウドサービスプロバイダにとって必要な機能が提供されていないということが多いんですね。それを自社で開発するということになれば、当然スピーディなサービス展開が難しくなるだけでなく、サービス料金にも影響しかねません。こうした点もパラレルスの魅力です。」

パラレルスの新製品を使ったサービス提供も検討中

――サービスプロバイダ向けのソフトウェアを提供するパラレルスから見て、サービス品質の善し悪しはどのような点に現れるのでしょうか。

土居氏「なかなか難しいのですが、たとえば物理サーバのリソースと、そこに割り当てる仮想サーバの数のバランスが挙げられます。オープンソースで提供している仮想化技術を利用し、物理サーバに多くの仮想サーバを割り当てれば安価にサービスを提供することが可能になるでしょう。ただ物理サーバのリソースを大幅に超える仮想サーバを割り当て、それぞれのユーザが仮想サーバのリソースをフルに使おうとするとパンクするのは当たり前ですよね。

これは、仮想化技術なんかよりも、事業者のサービスの運用方針や設計に大きく依存するところだと思います。

ですので、サービスを利用する際はWebサイトの内容をしっかりチェックしていただいたり、あるいはサービスプロバイダの担当者に直に会ってお話を聞いたりして、しっかりサービスの内容を確認することが大切だと感じています。」

――最後に、パラレルスのサービスプロバイダ向けソリューションの今後の展開を教えてください。

土居氏「パラレルスはこれまで、Parallels Vituozzo Containersのほかに、ハイパーバイザ型のソリューションである「Parallels Server」を提供していました。そして今年に入り、この両者を統合した「Parallels Cloud Server」という製品をリリースしています。コンテナ型とハイパーバイザ型の両方の仮想サーバに対応し、同一環境で両者を混在することも可能になっています。これにより、ユーザの方々はコンテナかハイパーバイザかというのを気にせず、必要な仮想サーバを構築することが可能です。

さらに、最新バージョンではローカルディスクをSANやNASと同等以上の冗長性と可用性をもつクラウドストレージに変える「Parallels Cloud Storage」も提供しています。Parallels Cloud Storageはローカルディスクをクラスタ化されたストレージに変換して、コンテナや仮想マシンのデータを分散化しており、データのレプリケーション、高可用性、自己修復機能などの高度に保護された単一障害点のない伸縮性と拡張性のあるストレージを提供しています。

小柳津氏「Parallels Cloud Serverには、我々もHA(High Availability)機能の仕様追加など、いくつかの要望を伝えていて製品に反映していただいています。このソフトウェアを使ったサービスの展開も検討しているので、ぜひ期待していただきたいですね。」

――本日はありがとうございました。
エクスクラウド(クラウド&ローコストクラウド)
URL:http://ex-cloud.jp/cloud/
エクスクラウド(ローコストクラウド特設ページ)
URL:http://ex-cloud.jp/lp/
⁠株⁠データホテル
URL:http://www.datahotel.ne.jp/
パラレルス⁠株⁠
URL:http://www.parallels.com/jp

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