ソフトウェアテストと「人間力」

第1回テストの現場を支えるテストエンジニアの「人間力」

はじめに

筆者は、ふだんからいろんな人に「テストの仕事をどう思う?」と聞いています。多い回答は、⁠大切だと思う」「難しそう」です。テストの重要性や高度な技術が必要であるという認識はもたれているようです。別の質問で「テストの仕事をしたい?」と聞くと、⁠ぜひやってみたい」の他に、⁠別に」とか「プログラムを開発をしたい」とった声も聞かれます。

ここからわかるように、テストのことが大切だと思っていても、テストの仕事には興味のない方も多いようです。本連載では、テストエンジニアに興味をもっていただくために、テストエンジニアにおけるヒューマンスキルについて解説していきたいと思います。さて、今日も元気にテストを頑張りましょう。

テストエンジニアと「人間力」の関係

みなさんのテストの現場では、どのくらいの人数でテストを実施していますが。5人、10人、いや100人。テストの現場によって規模は、バラバラでしょう。最近のテストでは、効率化のための高機能なテスト自動実行のテストツールの導入も進められていますが、まだまだ人海戦術によるテストが主流と思います。この人海戦術のテスト、ただのマンパワーで終わらせるのはもったいない。そこで「人間力」を最大に活かしたテストをして見ませんか。

テストにおける「人間力」は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)+直感を駆使して知識と知恵を活かす力です。テスト実行(テスト手順を操作して、テスト行うこと)では、⁠行間を見ろ」と教わってきました。これは、テスト仕様書やテストケースに書かれている内容で発見できる不具合では、テストとしては不十分だからです。なぜ不十分なのかは、第2回以降で順次説明していきます。

テストエンジニアって「意地悪」な性格?

いえいえ違います。テストエンジニアのイメージを悪くしているものの1つに「重箱の隅を突くような問題を指摘された」という誤解があると思います。テストエンジニアの仕事は、実は家庭教師に似ています。教え子をテストをして、点の悪かった部分を指摘するだけでは、家庭教師としては失格です。目標に向かって合格ラインを決め、得意な教科や苦手な教科をテストで判断し、弱点の克服するための対策を指導して合格点が取れるようにすることだと思います。

一般に考えられているテストエンジニアの間違ったイメージ(左)とあるべきイメージ(右:妄想入ってます)
一般に考えられているテストエンジニアの間違ったイメージ(左)とあるべきイメージ(右:妄想入ってます)
イラスト:ひのみえ

テストエンジニアもテスト実行して脆弱部分を把握し、重要度やリスクを考慮して優先順位を決めて、開発の担当者に修正を依頼します。決して「意地悪」ではありません。しかしテストが開発と異なる性格の仕事であることは確かです。開発は建設的に仕事を進めますが、テストでは問題を徹底的に洗い出します。場合によっては、テスト対象を壊してしまうような負荷をかけたり、アタックをしたりすることもあります。あえて言うとすると、テストの仕事は「破壊的」であるといえます。このあたりは、少し「意地悪」なのかもしれませんね。

優秀なテストエンジニアの素養に、コミュニケーション能力があります。テスト実行する期間は、開発者が納期のプレッシャを感じる時期と重なる場合が多くあります。開発スケジュールと不具合の指摘のダブルパンチですね。この状況でも、不具合の対応を上手に誘導できるテストエンジニアは優秀です。不具合を適切に対応させるための「動機付け」を与えるコミニケーションは、テストエンジニアにとって大切なものです。不具合を見つけて喜んでいると、本当に「意地悪」と思われてしまいます。

優れた「人間力」を持つテストエンジニアがいるテストの現場は、明るくポジティブにテストを進めています。次回以降は、明るいテストの現場を増やすため、テストエンジニアの「人間力」を高める方法を考えていきましょう。

次回は、欠陥を見つける「人間力」をテーマについてお話させていただきます。

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