ソフトウェアテストと「人間力」

第3回そのテスト、大丈夫ですか?─テストの性善説

筆者が新入社員の頃は、毎日テストケースを繰り返し実施していました。夕方には、上司にテストの実施結果を報告して、1日の仕事が終了です。当時のテストログ(その日、行ったテスト実施結果のレポート)には、実施したテストケース(種類・名前等⁠⁠、実施結果(OK/NG⁠⁠、実施時間や発生したトラブルなどを記入していました。実施結果がNGのものは、問題管理に事象の登録を行っていました。ふと思うと、テスト結果がNGのものしか振り返りをしていないことに気付きました。

結果良ければすべて良し!! って本当?

さて、ここで少しテスト現場の会話を聞いてみましょう。

中堅社員氏:
「先週のテストの概要を報告してくれ。」
新入社員君:
「はい。先週は、延べ350件のテストケースを実施しました。」
中堅社員氏:
「それで、テスト結果はどうなった?」
新入社員君:
「全てのテスト結果はOKでした。品質には問題なかったです。」
中堅社員氏:
「本当に、不具合は1件もなかったの?」
新入社員君:
「はい。確かに0件ですが、なにか問題ですか。」
中堅社員氏:
「大丈夫かなぁ…」

テストで不具合が発見されていないということは、本当に品質に問題がないのでしょうか、不安が残るところです。不具合がない状態よりも、不具合が多少なり検出された方が安心なのは、テスト特有なのかもしれません。テスト結果を疑いだしたらキリがありませんが、不安ならばペアテストや上級技術者による探索的テストを行なうと良いでしょう。

一般的には、テスト結果は正しいもの(筆者は、これを性善説としています)として取り扱います。しかし、この性善説が崩れると大変です。たとえば、テスト結果の判定ミスが1件でもあれば、テスト全体の信頼性がダウンします。こうなると、テスト全体の見直しやテスト結果のエビデンス(証跡)を必要以上に残し、テストに問題がないかを重複して確認するなど、想像以上に手間がかかります。

テストでは不具合を発見することに注目が集まりやすいですが、地味ですがOKの判定を出すことの責任の重さを忘れてはいけません。不具合については再確認のプロセスがありますが、OK判定は一発勝負なのです。

テストへの信頼は、テスト担当者への信頼

いつもは平均点しか取れない子供がいきなり100点満点をとったら、嬉しい反面で不正行為を疑ってしまいます。しかし、常日頃から努力をしている姿を見れば、素直に喜べると思います。

テストの信頼も同じです。日々のテストに取り組む担当者の努力があって、信頼が高まっていきます。テストチームを組織した場合も同様で、早く信頼を得る努力が必要です。筆者が考える「信頼を得るためのお勧めポイント」を挙げてみます。

①資格を取得する
資格を取得することは、第三者から技術的に評価されるため非常に有効です。しかし、取得する資格の有効性などは十分に考慮しなくてはいけません。
②コミュニケーションをとる
テストチーム内や開発者とのコミュニケーションを密にし、情報や意志の伝達を図ることで信頼が高くなります。
③モラルを守る
筆者が最も基本にしているポイントがモラルです。常に遅刻をするような人が、⁠今度は時間通りに行くから大丈夫」といっても信用できません。テストへの信頼を守るためには、絶対にモラルハザードは避けなければいけません。

今回登場した新入社員君には厳しい評価かもしれませんが、信頼性という「人間力」を向上させることは、上級テスト担当者になるための第一歩です。

画像:「100点」と聞くと無条件に100点満点と思うのも落とし穴の1つの例です
「100点」と聞くと無条件に100点満点と思うのも落とし穴の1つの例です。⁠イラスト:ひのみえ)

第4回は…

次回は、⁠複数ボタンがあったら、同時に押してしまう」⁠買った製品のエラーケースを考えてしまう」など、職業病のようなテスト担当者の変な行為、特性や生態をお話しします。

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