情シスという部門
前回は、社内において情シスがやっていることが伝わってないことが往々にしてあること、そしてそれを解消するうえで社内メディアとなっていくことについて触れました。社内メディアとして情報発信をしていくとなると、当然そのもとになる情報を収集することが不可欠です。これが、いわゆる「取材」というものです。今回はこの情シスの持っている取材力について考えてみます。
いくぶん古い分類ではありますが、企業における組織体には大きく2つの分類があります。ライン部門とスタッフ部門です。ライン部門は主として収益に直接関わる部門であり、スタッフ部門はライン部門に対して横断的に支援を提供する部門であるとされます。
ライン部門の代表例は、営業や製造や調達などです。一方のスタッフ部門の代表例は何と言っても情報システム部門です。それ以外にも経理・総務・人事・庶務、そして基本的には経営企画部門もスタッフ部門です。
会社全体を理解しているのは誰か?
さて、企業が大きくなるほど部門は分業のために細分化されていき、縦割りが増えていきます。各部門内においては効率化・最適化が進む一方で、ほかの部門については何をやっているのか全然知らないということも十分に起こり得ます。ではどのように部門横断すればよいのでしょうか。そこで大きな役割を求められるのがスタッフ部門です。
経理部門はお金という観点から各部門の様子を把握します。人事部門は人や組織という観点から各部門を把握します。ですが、各部門が具体的にどのような仕事をしているのかということについては、残念ながら適切な情報を提供するまでには至りません。では、仕事のプロセスをいったい誰が把握できる立場に一番近いのかというと、実は情シスなのです。
システム化以外にも転用できる
社内の仕事を図示するものの例として、業務フローが挙げられます。では全社としての業務フローをまとめ上げられる立場にあるのはどの部門か? そう、情シスです。
情シスの仕事は、社内のさまざまな業務の情報システム化の推進です。そのため、いつ・どの部門で・何を・どのように行っているのか――情シスはこれらを社内の全部門について知ることができます。そしてこの情報こそが部門横断を推進するための宝とも言えるのです。
いきなりまとめて社内で共有しようとするとたいへんでしょう。しかし前回にも触れたように社内メディアとして小出しに継続的に、いわば連載のような形で把握できている範囲から全社に向けて発信していく。そしてそれをもとに、たとえば各部門に仕事自慢インタビューのようなことをしてみる。それはまるで社内報を作るようなものであり、総務の仕事のように感じられるかもしれません。ですが部門間のプロセスを意識したアプローチは情シスならではでしょう。情シスが持つ、業務分析をして要件に落とし込んでプログラムで実現するという編集能力は、けっしてシステム化だけにしか使えないものではないと感じるのです。
社内の生き字引として
分業が進むと部門の断絶が発生します。それが結果としてコミュニケーション不全を起こしてシステム化を阻害することになっていきます。それを解消するための社内コミュニケーション推進のツールとして、各部門がどのような仕事をしているのかという情報を全社に向けて発信していく――これも十分情シスの仕事だと感じます。社内のことを何でも知っている、いわば生き字引のような存在としての情シス。各部門の要望を待っている受け身の状態から、全社的視点で積極的に各部門に関わっていく。小さなことからでかまわないのです。そのような取り組みの先に、報われる情シスのあり方が見えてくるように感じます。
次回は、社内プロセスというものについて掘り下げてみます。