組込み教育委員会

5-2 組込み技術者試験制度(ETEC) 第5回

受験者データから見る組込み新人社員への適用

今回は試験が開始されてから1年と半年。受験者数が1,400名(2008年4月時点)を突破したこともあり、受験者データをもとに受験のポイントをお話しします。受験者データは受験者の増大により、量的に一定の評価ができると判断し、公開できるところは公式ではないにしても提供し、業界のためになる、技術者や企業に役立つ使い方をしてほしいと思っています。

新人技術者への利用

受験の利用例として、最近の新人研修では4月入社前にe-learningや研修課題などを使って事前研修をするところが増えました。その関係もあると思いますが、入社前研修のあと、4月に入ってから受験、その後、数ヶ月間の組込み技術研修を経てまた受験し、事前学習後と基礎研修あとの学習効果を測る企業が増えてきました。実績として点数で50点くらいアップし、グレードもCからBへの効果を得ています。

ETECは合否の優劣で判断するのではなく800点満点のスコア方式で提供しています。受験者データでは、全体の平均点は490点、グレード評価はA20%、B60%、C20%となっています。受験者プロファイルから開発経験別の受験比率も1~3年が約60%、5年までで73%を超えていることから、新人研修後の効果測定から開発経験5年目くらいまでの技術者が受験の中心になってきています図1⁠。

それぞれ企業内での採用の形はさまざまですが、組込みソフトウェア技術者の評価に客観的資料として活用されています。

図1 受験者プロファイル―平均スコア(参考)
図1 受験者プロファイル―平均スコア(参考)
※2008年2月時点

受験企業の特徴と興味

大手メーカーや組込みソリューションベンダの積極的な受験が極めて多いことに驚かされます。当初は業界を支える組込みソフトウェアベンダの利用が進むと思われましたが、実際には大手メーカーの、企業内技術者のベンチマークや人事考課制度に上手に利用されています。

2007年度は、ETEC活用セミナーと題し、第8回まで実施しました。参加者は新人研修を視野に入れている役職のある方と見ています表1、2⁠。

表1 ETEC活用セミナー参加者の役職(第8回)
役職名人数割合
役員1310.5%
部長級3225.8%
課長級2016.1%
主任・係長2318.5%
担当・一般2721.8%
専任(エキスパートなど)32.4%
教授・教官43.2%
その他21.6%
総計124100.0%
表2 ETEC活用セミナー参加者の新人研修予定
予定有無人数割合
研修の予定あり8366.9%
研修の予定なし4133.1%
総計124100.0%

企業での活用状況

ETECは多くの企業での評価・採用がありますが、使い方・活用方法はまちまちです。

ある企業は新入社員から組込み経験3年生までのベンチマークとして、またある企業は人事考課への適用としてクラス2試験グレードAを昇格ポイント対象に利用しています。さらに、ある企業は自社と外注企業とのコミュニケーションギャップ解消などにも活用しているそうです。また受験は個人に任せ、受験のみ推奨している企業があり、受験料は会社負担で受けることが可能になっています。資格奨励制度を持っている会社は受験料と報奨金を支給している会社があります。報奨金の幅も1万円くらいから、多いところでは10万円くらいです。

携帯アプリケーション開発やカーナビゲーション開発、リアルタイム開発など、組込みソフトウェア技術者は忙しい立場であり、勉強などしている暇などない! と考えている人も多いのではないでしょうか。JASAとしては技術者に自己研鑽と向上心を持って学習するしくみとして企業内での受験制度を整備してほしいと思っています。

参考書籍案内

業界の底上げと組込みエンジニアの裾野を拡大したいという目的からETECは始まりました。そして組込みソフトウェア技術者育成のための参考書籍や試験対策書籍も発売されましたが、新たに技術評論社からも以下の2冊刊行されます。

  • 『組込みソフトウェア技術者教科書 ハードウェア編(クラス2試験模擬問題付⁠⁠』
  • 『組込みソフトウェア技術者教科書 プログラミング編(クラス2試験模擬問題付⁠⁠』

試験では正確な知識を問われますので、多くの参考書、技術書から得られる知識の蓄積も必要でしょう。ETEC対策セミナーもいくつかの教育研修会社で実施されています。また専門学校でもETEC試験対策を取り込んで、受験を推奨しています。

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