組込みソフトウェア力だけが組み込みではない
前回、「不景気になると、多くの企業(経営者)は自社の技術者レベルがどの程度のものなのか、またどこに強み・弱みがあるのか、他社との違いはどこなのか、などを気にする」と書きました。企業は戦略とともに会社の舵を切っていきますが、自社のポジションを明確に把握し、狙うべき市場、ドメインに目を向けます。そのためには技術者は自らの技術力を高め、また必要なら新たな武器を手にして、会社と共に戦い、乗り切れる気持ちを持ってもらいたいものです。
技術力強化の考え方について聞くと、次のように思っている方がいます(図1)。
- 組込みソフトウェアと言ってもソフト屋だからハード知識はいらない
- 分業体制があるので組込みアプリ屋には組込み知識は必要なし
「将来の組込みプロジェクトリーダーやマネージャはハードを知らなくてもよいのでしょうか?」もちろんハードウェア全般やシステム全体をすべて知っていてほしい技術であると言っているのではありません。組込みソフトウェア開発において知らなければいけない知識・技術・スキルはある程度明確です。組込みソフトウェア技術者はソフトウェア側から見て、ハードウェアを意識した開発や思考を持つべきなのです。そのためにはハードウェア知識を学び得ている必要があります。
JASA組込みソフトウェア技術者試験クラス2(以下、クラス2試験と呼びます)は開始から2年半が経ち、300社以上、3,000名以上の受験者がいます。その受験者プロファイルから技術者や企業の人材育成に活用をしてもらえるように、試験の使い方や制度の活用方法を提供していますが、今回は開発経験別年代別の分野情報について解説します。
図2を見ると技術要素、開発技術、管理技術のうち、一番正答率が低いのが技術要素となっています。
管理技術はもともと管理される側の試験内容であり、開発技術もある程度の開発経験を経れば習得できる技術知識なのかも知れません。技術要素は経験年数に比例して正答率が上がってきます。1年未満の技術者では50%の正答率が4~5年では60%に、11~20年では65%にポイントアップしていますが、それでも65%です。経験年数が長くなるほど組込み知識の習熟度が高くなるという結果です。技術要素は現場経験や開発経験から得られる技術智識もありますので、知識習得の勉強のみで十分対応できるとはいえない分野ですし、組込みソフトウェア技術者として最低限知っていてほしい知識を出題しています。技術要素の表1のスキル項目で弱点があれば学習し直し、より高得点を目指してください。
表1 クラス2試験 技術要素
第1階層 | 第2階層 | 第3階層 | スキル項目 |
プラットフォーム | プロセッサ | プロセッサコア | MPU、バス、レジスタセット、RISC、CISC、DSP、GPU、省電力制御、パイプライン、スーパスカラ など |
プロセッサ周辺 | 割込み、タイマ/カウンタ、DMA、WDT、キャッシュ など |
メモリ | ROM、RAM、Flashメモリ、メモリインタリーブ、デュアルポートメモリ など |
基本ソフトウェア | プート | ROM化、プートローディング、スタートアップルーチン など |
カーネル | タスク、共有ルーチン、システムコールサービス、同期、排他制御、デッドロック など |
支援機能 | デバッグ機能 | ICE、JTAG、ソフトデバッガ、オシロスコープ、ロジアナ、ログ収集/解析 など |
みなさんにとって組込み開発力を強化することは自分の技術力を把握し、次のポジションを得ることに繋がるはずです。ETECが一助になれば幸いです。
まとめ
最新の受験者プロファイルは次のURLから見ることができます。
JASAでは企業の社内評価制度、社内研修の成果、ベンチマーク的利用などに、また個人の自己分析・評価に利用できるように3ヶ月更新でデータを提供しています。
また、業界初の組込み知識習得を目的としたイーラーニング教材が発売しています。詳しくは次のURLを参照してください。
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